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雑感 タイタンには生命が存在するのではないか

NASAの土星探査機カッシーニから分離され、1月14日に土星最大の衛星タイタンに着陸したESA(欧州宇宙機関)の観測機ホイヘンスが送ってきた写真には本当にびっくりさせられました。

「湖」があり、「浜辺の小石」があり、「峡谷」や「島々」まで地球そっくりです。「雲」や「霧」もあります。

ただ、違っているのは、零下170度、1.5気圧のタイタンの地表に雨として降り、流れているのは水(H2O)ではなくてメタン(CH4)の液体であり、逆に「浜辺の小石」の岩石が水(H2O)の凍ったもの(氷)なのだそうです。「雲」や「霧」もメタンの液体からできています。

NASAのホームページ
http://saturn.jpl.nasa.gov/news/events/huygensDescent/index.cfm
ESAのホームページ
http://www.esa.int/SPECIALS/Cassini-Huygens/index.html


   ***

この話を聞いて、英国のラブロック博士の説を思い出したのは私だけでしょうか。

太陽の輝きが徐々に増しているにも関わらず(といっても何億年に数%というゆっくりとした割合ですが…)地球がここ何億年もの期間、暑くなったりせずに(地球上の)生命にとって快適なほぼ一定の温度や大気圧の環境に保たれているのは、他ならぬ生命活動が原因だ、と博士は主張します。

非常に単純化した例で説明しますと、例えば、植物や植物プランクトンが行う光合成の活発さは大気中の二酸化炭素濃度を変動させます。すると、太陽活動が変化しても

●太陽が明るくなる→光合成が活発になる→二酸化炭素濃度が減る→温室効果が弱くなる→気温がそれほど上がらない

●太陽が暗くなる→光合成が不活発になる→二酸化炭素濃度が増える→温室効果が強くなる→気温がそれほど下がらない

というように、生命活動があれば、ない場合に較べて、太陽活動が変化しても気温がそれほど変化しないというわけです。

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あるいは、次のように考えるとわかりやすいかも知れません(以下は私なりの解釈です)。

今かりに、地球の気温が何らかの原因で一時的に5度だけ上がってしまったとします。そして、生命の活動がないと仮定します。何が起きるでしょうか。

かなり想像を交えて推測しますと、極地の氷は溶け出し、ツンドラの地下にあった二酸化炭素やメタンガスが大気中に放出されるでしょう。これらは強力な温室効果をもたらします。さらに、極地の氷がなくなって黒い地面が顔をだすので、太陽光線の吸収率があがり、これも気温の上昇につながります。極地の氷が解けて海水を薄めるので、深海と海の表面との間の海水の大循環が止まり、海面付近の海水温が上昇します。これは浅海の温度を上昇させ、浅海底のメタンハイドレートからのメタンガスの放出を促し、さらに温暖化を加速させます。
気温上昇を妨げるプロセスもないわけではありません。例えば、気温が上昇すると海からの水の蒸発が増えるので、雲が増えて太陽光線の反射率があがり、気温が低下する方向の効果につながる、ということもあるでしょう。しかし全体としては、気温はとめどなく上昇して、地球は金星のように厚い雲で覆われた灼熱の惑星になってしまうのではないでしょうか。

そうしたことが起こらずに気温がほぼ一定に保たれているのは、生命活動のおかげだ、というわけです。ラブロック博士の説が正しければ、他ならぬ生命自身が、地球上の気候システムを、自らの生存に快適なように制御している、と言えるでしょう。

    ***

この説には反論もあります。
別に生命など考えなくても、化学的なプロセスだけで地球の気温は説明できるとする考えです。

例えば、コップに水と氷を入れて全体が0℃になっているとします。これを少々温めようが、冷やそうが、氷と水が共存している限り、(氷は大きくなったり小さくなったりしますが)全体は0℃に保たれています。氷が解けるには大きな融解熱が要りますし、逆に水が凍るときには、大きな凝固熱を放出するからです。

地球の場合にはもっともっと複雑な複数のプロセスが関係しているだろうが、似たようなことが起こっているだろう。気温や気圧を維持している主要なプロセスは、生命活動には無関係だろう、というわけです。

   ***

私は、どちらが正しいのか知りません。でも、心の琴線に触れるのは、断然、ラブロック博士の説の方です。なので、惑星の環境が微妙な一定の値に保たれているなら、生命活動が関係している可能性があるのではないか、と考えたくなります。

タイタンは、実に微妙な温度と圧力に保たれています。メタンの液体と気体が共存し、雲や霧となることができる状態に保たれているのです。これを行っている生命がいるのではないでしょうか。水の代わりにメタンを体液に持つような想像を絶する生物がいるのでしょうか。バクテリアのようなものなのでしょうか。それとも、もっと進化しているのでしょうか。想像するだけで、わくわくする話です。

最後に、この写真をみてください。赤外線や紫外線を可視化したものではありますが、タイタンは実に美しいと思いませんか。なにかがここで生きている、そんな気がしてなりません。

http://saturn.jpl.nasa.gov/multimedia/images/image-details.cfm?imageID=1193
http://saturn.jpl.nasa.gov/multimedia/images/image-details.cfm?imageID=1162
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参考リンク
(2007.12.1追記) : タイタンの生命は水なしで繁栄するかも知れません/今日のNature
(2007.12.23追記) : アセチレンの三重結合を切る際に解放されるエネルギーによって代謝する生物なら可能ではないか

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