静電気現象と地震の短期予知についての一考察
■はじめに
数年前、関東地方で大規模地震があるとのFM電波観測に基づく串田氏の予測が世間を騒がせたことを覚えておられる方も多いのではないでしょうか。
それ以来、私も、電磁的手法による地震予知の試みに関心を持って、ときどきウェブ上の情報を眺めていました。
様々な現象を利用した予知が試みられています。電波の遠方への伝わり方の変化、静磁場の変化(地磁気の変化)、地電流の変化、などなど。
さきほどふと、地震の前におそらく起きているであろう、これらの電磁気的現象はすべて、地下深部での静電気(まさつ電気)がもとになっていると考えれば、すべてのピースが1つに収まって説明できるのではないか、と閃きました。今日はそのアイデアのスケッチを定性的に書きとめておこうと思います。地震が天気予報のように予測される日がくるために、この考察が役に立つならば、とてもうれしく思います。
この場で発表する、以下で説明するアイデアが新しいものなのかどうか、専門外のため、私にはわかりません。もし、すでに提案されていることをご存知でしたら、教えて頂ければ幸いです。
グーグルなどで調べてみますと、地下での静電気の発生による、地表面の電荷密度分布から地震を予知しようと試みている方はすでにおられるようです。しかし、それと、他の現象(電波の伝搬異常、地磁気の変化、地電流、電離層の変化など)との関係を、統一的に解き明かすアイデアは見つかりませんでした。
■地震の発生メカニズム
地震は外から力が加わる結果、地下の岩盤が割れ目(断層)に沿って滑ることで生じます。力が限界値を超えたときに滑るわけですが、最近ではどうも、力が限界値を超えるというより、限界値の方が下がって、滑りだす、と考える説が有力のようです。
例えば、地下から高温高圧の流体(液体あるいは気体)が入り込んできて、接触面の状態が変化する結果、摩擦係数が下がって滑り出す、という説です。
そのような地下の流体の存在は多くの地域で確認されているそうですから、地震のすべてではないにしても、上のようなメカニズムで起きる地震が相当数あることはおそらく事実でしょう。そこで、以下ではそのような地震に限定して考えてみます。
■静電気(まさつ電気)の発生
岩盤の中(割れ目)に高圧の流体が入り込んでくるのですから、両者の間には摩擦が生じます。それは当然、摩擦電気を生じます。ちょうど、下敷きで服を擦ったときのように。ただし、相手は巨大な数キロメートルの岩盤ですから、大きさのスケールがまるで違います。生じる静電気の量も莫大です。以下では、数キロあるいは数十キロという長さのスケールでものごとを考えている点に注意して下さい。
下敷きで服をこすると、材質にもよりますが、例えば下敷きはマイナスに、服はプラスに帯電します。同様に、流体が岩盤をこすると、瞬間的には岩盤と流体はそれぞれ逆の符号に帯電します。例えば、岩盤がプラスに、流体がマイナスに帯電するとしましょう。
しかし、生じた電気はそのままその場所にたまるわけではありません。地面は抵抗を持った導体とみなせるので、岩盤も流体も電気を通します。プラスとマイナスは引き合い、接触面に集まってきて、中和します。しかし、抵抗があるので、移動には一定の時間がかかります。
流体が岩盤の割れ目に流れ込み続けているとすれば、静電気が発生して電気がたまり続けようとします。このスピードと中和のスピードのバランスで、流体と岩盤の帯電量が決まります。
地面の電気抵抗の大きさにもよりますが、電気の大部分はおそらく地表に現れるでしょう。なぜなら、導体の電荷は(自由電子が静止した状態では)表面にしか存在できないからです。(地面は導体と見なせることに注意して下さい)
つまり、地下深くの岩盤に流体が進入してきた場合、その真上の地表に電荷分布が現れるでしょう。例えば、流体の真上にはマイナスが、その周囲(岩盤の真上)にはプラスが現れるでしょう。
■地電流
この地表面に現れる電荷分布が生み出す効果を考えてみましょう。
まず、上で見たように、電荷は止まっているのではなく、流れています(中和がおきている)。つまり、プラスに帯電した領域からマイナスに帯電した領域へと電流が流れています。地表面で仮に、マイナスに帯電した領域の周りをプラスに帯電した領域が取り巻いているなら、周囲から集まってくるような、放射状の電流(地電流)が観測されるはずです。
■生体電位
また、電流があるということは、地中の電位が、電流の流れる方向へと下がっているということです。プラスに帯電した領域の電位は高く、マイナスに帯電した領域の電位は低い、といっても構いません。この電位勾配が、植物の根などを通して、生体電位の変化として観測できる可能性があります。
■地磁気の変化
電流は磁場を作ります。地表のある領域(貫入の中心の真上)へと放射状に地電流が集まるならば、中心を(上から見て)反時計回りに回るような、渦巻く磁場ができます。地電流の向きが逆ならば、磁場が回る向きも逆です。
仮に、磁場は反時計まわりにできるとしましょう。日本付近では地球磁場は北を向いています。したがって、中心の東側では磁場は足し合わされて強めあい、中心の西側では弱め合います。これはそれぞれ、地磁気の増加、あるいは減少として観測できる可能性があります。地磁気の増減のこのような場所依存性は、放射状の地電流に加えて、ここで述べているアイデアの正しさを実証する有力な方法となるでしょう。
江戸時代、大地震の前に永久磁石(磁鉄鉱)から釘が落下したこと(あるいは、鉄から磁石が落下したこと)が報告されています。これも、巨大な地電流が生む磁場のために、永久磁石の作る磁場が片側で弱められたためである可能性があります。
■電離層の変化と電波の伝搬異常
地面に電荷分布が生じれば、それと向き合う電離層の下面に、反対符号の電荷分布が生じます。例えば、地面ではマイナスの周りにプラスがあるなら、電離層の下面では、プラスのまわりにマイナスがあるような電荷分布になります。この対応は(光速度で)瞬間的に起こります。こうした電荷分布は、電離層下面での電波の反射あるいは透過の特性に大きく影響します。一般的に言って、下面の電荷分布はその符号によらず、地表からの電波の透過を妨げ、反射率をあげることになるでしょう。
震源からのイオンの放出が電離層の状態を変化させ、電波の反射状態が変わるという説がありますが、イオンの移動は空気分子との衝突で妨げられる可能性が高いと思われます。電離層の状態の変化はむしろ、地表面の電荷分布に対応して、電離層の下面に裏返した電荷分布が生じるため、と考えるのが自然ではないでしょうか。
もちろん、地面の電荷分布と電位勾配が、震源近傍の地表(貫入の真上の地表)でのイオン濃度の異常を引き起こす可能性は十分にあるでしょうが。
■伝搬異常が地震の数ヶ月前に起きるのはなぜか
串田氏のホームページを拝見した記憶では、FM電波の異常は、大規模な地震では、地震発生の数ヶ月前あるいは半年も前に起きることがあります。このような発生までの長い準備時間はどのように説明できるでしょうか。
おそらく、大規模な地震では、流体の貫入の規模も大きく、流体は地下深くからゆっくりと時間をかけて上がってくるのでしょう。どんなに地下深くで貫入が始まっても、まさつがおきている限り、静電気は発生し、それにともなって地表面の電荷分布、さらには電離層下面の電荷分布は生じるはずですから、早い時期から電波に異常が見られるのでしょう。
■電磁波の放出
震源からの事前の電磁波の放出がしばしば観測されているようです。仮に、ある地震を引き起こす貫入が長い目でみたときに一定のスピードでおきていても、細かく見れば断続的に起きているはずです。まず、岩盤のある部分を破壊し、次にこの隙間に入り込んで…と言った具合に。
そのため、電荷分布や電流は小刻みにふるえ、電場が変化し、電磁波が生まれるでしょう。貫入が地下深くで起きている間は、透過性の高い波長の長い電磁波だけが地表まで届くでしょう。貫入が浅い領域まで進行してくると、波長の短い電磁波も地表に出てくることになります。このような電磁波のスペクトルの変化は、地震の発生時期の予測に有用でしょう。
■地震の予知に向けて
以上、地震の前兆現象として言われている電磁的現象の相互関係を私なりに推察してみました。ご意見や提案、コメントを歓迎します。
このアイデアに真実が含まれていれば、地表の電荷分布を知り、地域ごとの変化の規模と特徴を時系列で追いかけることで、貫入の規模や場所、地震の切迫度が予測できる可能性があります。
地表面の電荷分布を知るには、それの裏返しである、電離層下面の電荷分布を地上からの電磁波的手法(レーダーなど)で観測するか、あるいは、さらにその裏返しである電離層上面の電荷分布を人工衛星からの電磁波的手法で決めるのがもっとも容易であろうと思われます。
このアイデアを定量的に検証し、予測方法を確立出来る日が来ることを願っています。明日、小惑星イトカワからのハヤブサのサンプル回収が成功することを祈りつつ。
2005.11.25 Wave of Sound
数年前、関東地方で大規模地震があるとのFM電波観測に基づく串田氏の予測が世間を騒がせたことを覚えておられる方も多いのではないでしょうか。
それ以来、私も、電磁的手法による地震予知の試みに関心を持って、ときどきウェブ上の情報を眺めていました。
様々な現象を利用した予知が試みられています。電波の遠方への伝わり方の変化、静磁場の変化(地磁気の変化)、地電流の変化、などなど。
さきほどふと、地震の前におそらく起きているであろう、これらの電磁気的現象はすべて、地下深部での静電気(まさつ電気)がもとになっていると考えれば、すべてのピースが1つに収まって説明できるのではないか、と閃きました。今日はそのアイデアのスケッチを定性的に書きとめておこうと思います。地震が天気予報のように予測される日がくるために、この考察が役に立つならば、とてもうれしく思います。
この場で発表する、以下で説明するアイデアが新しいものなのかどうか、専門外のため、私にはわかりません。もし、すでに提案されていることをご存知でしたら、教えて頂ければ幸いです。
グーグルなどで調べてみますと、地下での静電気の発生による、地表面の電荷密度分布から地震を予知しようと試みている方はすでにおられるようです。しかし、それと、他の現象(電波の伝搬異常、地磁気の変化、地電流、電離層の変化など)との関係を、統一的に解き明かすアイデアは見つかりませんでした。
■地震の発生メカニズム
地震は外から力が加わる結果、地下の岩盤が割れ目(断層)に沿って滑ることで生じます。力が限界値を超えたときに滑るわけですが、最近ではどうも、力が限界値を超えるというより、限界値の方が下がって、滑りだす、と考える説が有力のようです。
例えば、地下から高温高圧の流体(液体あるいは気体)が入り込んできて、接触面の状態が変化する結果、摩擦係数が下がって滑り出す、という説です。
そのような地下の流体の存在は多くの地域で確認されているそうですから、地震のすべてではないにしても、上のようなメカニズムで起きる地震が相当数あることはおそらく事実でしょう。そこで、以下ではそのような地震に限定して考えてみます。
■静電気(まさつ電気)の発生
岩盤の中(割れ目)に高圧の流体が入り込んでくるのですから、両者の間には摩擦が生じます。それは当然、摩擦電気を生じます。ちょうど、下敷きで服を擦ったときのように。ただし、相手は巨大な数キロメートルの岩盤ですから、大きさのスケールがまるで違います。生じる静電気の量も莫大です。以下では、数キロあるいは数十キロという長さのスケールでものごとを考えている点に注意して下さい。
下敷きで服をこすると、材質にもよりますが、例えば下敷きはマイナスに、服はプラスに帯電します。同様に、流体が岩盤をこすると、瞬間的には岩盤と流体はそれぞれ逆の符号に帯電します。例えば、岩盤がプラスに、流体がマイナスに帯電するとしましょう。
しかし、生じた電気はそのままその場所にたまるわけではありません。地面は抵抗を持った導体とみなせるので、岩盤も流体も電気を通します。プラスとマイナスは引き合い、接触面に集まってきて、中和します。しかし、抵抗があるので、移動には一定の時間がかかります。
流体が岩盤の割れ目に流れ込み続けているとすれば、静電気が発生して電気がたまり続けようとします。このスピードと中和のスピードのバランスで、流体と岩盤の帯電量が決まります。
地面の電気抵抗の大きさにもよりますが、電気の大部分はおそらく地表に現れるでしょう。なぜなら、導体の電荷は(自由電子が静止した状態では)表面にしか存在できないからです。(地面は導体と見なせることに注意して下さい)
つまり、地下深くの岩盤に流体が進入してきた場合、その真上の地表に電荷分布が現れるでしょう。例えば、流体の真上にはマイナスが、その周囲(岩盤の真上)にはプラスが現れるでしょう。
■地電流
この地表面に現れる電荷分布が生み出す効果を考えてみましょう。
まず、上で見たように、電荷は止まっているのではなく、流れています(中和がおきている)。つまり、プラスに帯電した領域からマイナスに帯電した領域へと電流が流れています。地表面で仮に、マイナスに帯電した領域の周りをプラスに帯電した領域が取り巻いているなら、周囲から集まってくるような、放射状の電流(地電流)が観測されるはずです。
■生体電位
また、電流があるということは、地中の電位が、電流の流れる方向へと下がっているということです。プラスに帯電した領域の電位は高く、マイナスに帯電した領域の電位は低い、といっても構いません。この電位勾配が、植物の根などを通して、生体電位の変化として観測できる可能性があります。
■地磁気の変化
電流は磁場を作ります。地表のある領域(貫入の中心の真上)へと放射状に地電流が集まるならば、中心を(上から見て)反時計回りに回るような、渦巻く磁場ができます。地電流の向きが逆ならば、磁場が回る向きも逆です。
仮に、磁場は反時計まわりにできるとしましょう。日本付近では地球磁場は北を向いています。したがって、中心の東側では磁場は足し合わされて強めあい、中心の西側では弱め合います。これはそれぞれ、地磁気の増加、あるいは減少として観測できる可能性があります。地磁気の増減のこのような場所依存性は、放射状の地電流に加えて、ここで述べているアイデアの正しさを実証する有力な方法となるでしょう。
江戸時代、大地震の前に永久磁石(磁鉄鉱)から釘が落下したこと(あるいは、鉄から磁石が落下したこと)が報告されています。これも、巨大な地電流が生む磁場のために、永久磁石の作る磁場が片側で弱められたためである可能性があります。
■電離層の変化と電波の伝搬異常
地面に電荷分布が生じれば、それと向き合う電離層の下面に、反対符号の電荷分布が生じます。例えば、地面ではマイナスの周りにプラスがあるなら、電離層の下面では、プラスのまわりにマイナスがあるような電荷分布になります。この対応は(光速度で)瞬間的に起こります。こうした電荷分布は、電離層下面での電波の反射あるいは透過の特性に大きく影響します。一般的に言って、下面の電荷分布はその符号によらず、地表からの電波の透過を妨げ、反射率をあげることになるでしょう。
震源からのイオンの放出が電離層の状態を変化させ、電波の反射状態が変わるという説がありますが、イオンの移動は空気分子との衝突で妨げられる可能性が高いと思われます。電離層の状態の変化はむしろ、地表面の電荷分布に対応して、電離層の下面に裏返した電荷分布が生じるため、と考えるのが自然ではないでしょうか。
もちろん、地面の電荷分布と電位勾配が、震源近傍の地表(貫入の真上の地表)でのイオン濃度の異常を引き起こす可能性は十分にあるでしょうが。
■伝搬異常が地震の数ヶ月前に起きるのはなぜか
串田氏のホームページを拝見した記憶では、FM電波の異常は、大規模な地震では、地震発生の数ヶ月前あるいは半年も前に起きることがあります。このような発生までの長い準備時間はどのように説明できるでしょうか。
おそらく、大規模な地震では、流体の貫入の規模も大きく、流体は地下深くからゆっくりと時間をかけて上がってくるのでしょう。どんなに地下深くで貫入が始まっても、まさつがおきている限り、静電気は発生し、それにともなって地表面の電荷分布、さらには電離層下面の電荷分布は生じるはずですから、早い時期から電波に異常が見られるのでしょう。
■電磁波の放出
震源からの事前の電磁波の放出がしばしば観測されているようです。仮に、ある地震を引き起こす貫入が長い目でみたときに一定のスピードでおきていても、細かく見れば断続的に起きているはずです。まず、岩盤のある部分を破壊し、次にこの隙間に入り込んで…と言った具合に。
そのため、電荷分布や電流は小刻みにふるえ、電場が変化し、電磁波が生まれるでしょう。貫入が地下深くで起きている間は、透過性の高い波長の長い電磁波だけが地表まで届くでしょう。貫入が浅い領域まで進行してくると、波長の短い電磁波も地表に出てくることになります。このような電磁波のスペクトルの変化は、地震の発生時期の予測に有用でしょう。
■地震の予知に向けて
以上、地震の前兆現象として言われている電磁的現象の相互関係を私なりに推察してみました。ご意見や提案、コメントを歓迎します。
このアイデアに真実が含まれていれば、地表の電荷分布を知り、地域ごとの変化の規模と特徴を時系列で追いかけることで、貫入の規模や場所、地震の切迫度が予測できる可能性があります。
地表面の電荷分布を知るには、それの裏返しである、電離層下面の電荷分布を地上からの電磁波的手法(レーダーなど)で観測するか、あるいは、さらにその裏返しである電離層上面の電荷分布を人工衛星からの電磁波的手法で決めるのがもっとも容易であろうと思われます。
このアイデアを定量的に検証し、予測方法を確立出来る日が来ることを願っています。明日、小惑星イトカワからのハヤブサのサンプル回収が成功することを祈りつつ。
2005.11.25 Wave of Sound
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コメント
私もほぼ同じような推測をしております。
自然界の雑音との分離がむずかしいですね、、
http://www.mni.ne.jp/~aoimori/zishin/index.html
投稿: ja7dph | 2006.04.08 09:50
ja7dphさま、コメントありがとうございます。
宮城県沖の電磁現象を観測されて、地震の前駆電磁現象と静電気との関係を推測しておられるとのこと、ホームページで拝見しました。
帯電空気塊のお話や、半島部の観測点データの特異性などとても興味深いです。後者に関しては、確かギリシャのVAN法(地電流)でも、特定地域の地震にだけ鋭敏に反応する、地球電気学的なつぼのような地点がある、と読んだ記憶があります。半島部では地中の電気抵抗などがふつうと違って、地電流を集めやすい(or にくい)などということがあるのでしょうか。
私は、地震電磁気に興味をもった昨年の秋頃、大気電界について勉強を始めたり、大気電界の起源(注)や垂直分布について考えたりしていたのですが、その後いろいろ事情があって、進んでいませんでした。この機会に、もう一度とりくんで見ようかと思っています。
注:全世界の雷が、グローバルサーキット(地面ー電離層系)の起電力になっている、という説が定説のようです。たぶん、これは正しいけれど、もう少し詳しく見れば、大気が上空ほど薄くなっていることが、正と負の大気イオンの移動度に差を与えて、微小な垂直電位差が生じ、それが帯電した空気塊の対流不安定性のために増幅されるプロセスが雷でなないか、と推測しています。それを裏付ける、説得力のある定量的なモデルを作れるといいのですが。
投稿: Wave of sound | 2006.04.09 14:26
きのう、図書館で借りてきた故池谷先生のご本(*)によると、高周波でも地殻中をそれほど減衰せずに伝わるそうです。
金属などの表皮厚(δ)が周波数のルートに反比例して小さくなるというのは、低周波近似の話で、高周波が地殻中の伝搬する場合には該当しないとのこと。
1メガヘルツ〜1ギガヘルツの電磁波が地殻を伝わる場合の表皮厚(δ)は、ほとんど周波数によらず、花崗岩で15キロメートル、堆積層で数メートル、海水で数センチメートルです。
地殻下部(深さ30キロメートル)くらいは導電性が良い。そこで、地殻下部と海水が2枚の平行な完全導体となり、その間に挟まれた花崗岩(誘電体)が導波管(導波空洞)を作る、というイメージで捉えるとよいようです。ちょうど、地表面と上空の電離層で挟まれた領域が反射により電磁波を伝えますが、その地下バージョンです。
沖合の海底下の地下(震源)で生じた電磁波が、上記の地殻空洞内を減衰しながらも伝わってきて、海水がとぎれる海岸部で地上に出てくる。それで、半島部の観測点が鋭敏に反応するのではないでしょうか。
また、半島部の観測点と、内陸の2つの観測点の間に、断層があれば、水気に富む断層破砕帯のために、急激に電磁波が減衰して、断層の向こう側まで届かないのではないでしょうか。
地下の誘電率を妥当な値に仮定して、有限要素法とかでマクスウェル方程式を解いて調べると、確認できるかも知れません。
(*)池谷元伺「地震の前、なぜ動物は騒ぐのか」NHK Books, 1998. p191とp240
PS 池谷先生は、流体の摩擦ではなくて、石英の圧電効果により生じた電荷が、応力変化によって(中和過程より早く)変動することが、電磁波の発生原因であると推測しておられ、定性的、定量的に詳しく実験&議論しておられます。先生のご推測が正しいなら、このブログで述べたアイデアも、それほど悪くなかったようです。
投稿: Wave of sound | 2006.04.10 17:10
2011年3月10日の22:00JST頃に就寝しようとしてテレビをoffして気がつきました。
定在波と突発性の低周波が共振して発生した倍音と思われる音が聞こえました。
気になって音源をたどってみましたが、個体ではありません。
稼動中の換気扇と待機中の電子レンジ、稼動中の冷蔵庫の中間の空間が唸っているようでした。
この経験を元に、極めて原始的ですが共振素子を搭載した共鳴箱を制作し、
趣味的に考察を進めてみようと思っています。
私は物理学は専門外ですので基本設計で苦労していますが、
当座は「素数*(2^x)」の周波数からとりくんで行こうと思います。
これで拾えるものがHAARPの影響かもしれませんが、
科学に興味のない中学生でも理解できる方法なので
気軽に、予算もかけずに長期プロジェクトを進めてみます。
投稿: インゲン | 2011.06.19 23:04
インゲンさん
コメントありがとうございます。 興味深い共振現象を体験されたのですね。
3月10日ごろですと、前日の三陸沖の地震
2011/3/9 11:45 三陸沖 M7.2
http://tenki.jp/earthquake/detail-3568.html
の余震活動が活発だったので、その振動を拾った可能性もあるかとは思いますが、古今東西、地震前兆としての地鳴りや鳴動は数多く報告されているようです。経験された共振が、3月11日の地震の前兆であった可能性も否定はできないと思います。
参考 http://www.mri-jma.go.jp/Publish/Technical/DATA/VOL_26/26_039.pdf
WSの関心はいま電磁気的な現象に向いていて、地震前兆現象としての空気(や大地)の振動は完全に盲点でした。地震前にどのようにして空気に振動がおきるのか。いまはそのメカニズムは想像もつきませんが、常識にはとらわれず、かつ、自然法則からは外れずに、いろいろな可能性を探求してみたいと思います。
プロジェクトの進展をお祈りします。
投稿: Wave of sound | 2011.06.28 23:45
岩盤が潜り滑るときの静電気を電力の発生源とお考えとのこと。それだけではありません。擦れあわなくともほとんど動かず強く押し合うだけで実は強力な電力が発生します。圧電現象という電力です。火花を強く飛ばす程の電力です。たとえば価格300円くらいのお台所用首長ライターはその現象を利用しています。火をつけるとき指でトリガを引くだけの弱い力だけで、目に見えるほどの火花を飛ばすことができます。だから地中の地盤が擦れて滑らなくても、その前段階で強く押されて岩がわずかに変形するとき岩に破壊が起きなくとも地震が起きなくともぱりぱりと火花を飛ばすのです。きっと地盤の中でも火花がぱりぱりと飛んでいることでしょう。それゆえ電気現象で地震を予知することは可能だと思います。
投稿: 伴 | 2013.10.22 16:33
伴さま
コメントありがとうございます。この記事は7年前に文献をろくに調べもせず書いたもので、今となっては恥ずかしいかぎりです。
ご指摘のように、地震前兆現象の原因を考える上で、圧電効果について考察してみることは重要だと思います。
しかし、困難もあるようです。圧電効果による起電力は石英などの個々の結晶にミクロに生じるものですが、岩石中の石英の結晶はランダムな方向を向いているため、マクロにはそれらの起電力が打ち消し合ってしまうそうです。(たとえばF.Freund博士の論文 Pre-earthquake signals: Underlying physical processes, Journal of Asian Earth Science 41 (2011) 383の1.2節の第4パラグラフを参照)
WSはいま、格子欠陥を含む、岩石中の結晶が圧力を受けたときp型半導体のように振る舞い、遊離した正孔(電子が欠けたところ、正電荷のように振る舞う)がマクロな領域を動き回る、という同博士の説に関心をもっています。 上記の論文や下記の文献を参考にあげておきます。
圧縮火成岩の P 型電気伝導とその地殻電気伝導度構造への影響の可能性 竹内昭洋 , B. W. S. Lau, F. T. Freund
http://www.eqh.dpri.kyoto-u.ac.jp/CA/2008/Takeuchi_et_al_CA2008.pdf
投稿: Wave of sound | 2013.10.25 10:43