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日本の財政赤字(6)財政赤字は消費性向で決まる---増税や歳出削減で財政再建はできない

税率を上げても(=増税しても)財政赤字は解消できません。家計の可処分所得が減るため、消費が落ち込んで国全体の経済規模が縮小し、税収がほとんど増えないからです。

税率を下げても(=減税しても)財政赤字は解消できません。経済規模は拡大して課税ベースは増えますが、税率の低下の効果が上まわって、税収が減ってしまうからです(*1)。

歳出削減を行っても財政赤字は解消できません。政府にモノやサービスを提供していた企業の売り上げが減るため、経済規模が縮小し、税収が減ってしまうからです。

政府支出を増やしても財政赤字は解消できません。経済規模が拡大して税収は増えますが、政府支出の増加を上まわるほどは増えないからです(*1)。

つまり、増減税や歳出の増減そのものは、有効な財政再建策ではありません。では、財政再建のためにはどうすればよいのか。

答は簡単です。景気を良くすればよい。そうすれば自動的に税収が増えて財政が黒字になります。財政出動をする必要もなければ、税率を上げる必要もありません。
Beta_gamma
図(クリックで拡大)

景気を良くするには2つの方法があります。1つは、もっと家計にお金をまわし、家計が安心してお金を使えるようにすること。もう1つは、企業が安心して設備投資できる環境を作ることです。

上に示した図は、このブログで紹介してきたモデルによる計算結果で(*2)、財政赤字額が消費性向と投資性向で決まることを示しています。消費性向とは、可処分所得のうち消費にまわる割合のこと。投資性向とは、個人消費と民間投資の比率のことです。

消費性向を0.70、投資性向を0.34とすると、財政赤字は25兆円くらい(黄色の棒グラフ,
左から3つめ)。だいたいこれが現在の日本経済の状態です(好調すぎる経常収支の黒字を控えめに見積もったとして)。

消費性向がこのままなら、投資性向が0.40くらいまで上がっても、財政赤字はなくならないことがわかります。

しかし、消費性向が4ポイント上がって0.74になるなら、投資性向が少し増えて0.36になるだけで財政は黒字化します。

もし、消費性向が6ポイント上がって0.76になるなら、投資性向が0.34のままでも、財政収支は約10兆円の黒字に転じます。

   ***

まずは再分配政策で、消費性向を上げることです。そうすれば投資性向も上がる。内需が盛り上がって日本経済が力強い成長軌道に乗り、財政赤字は自動的に解消します。

長期金利が上がることは気にしなくて大丈夫。利払いの増加より、税収増が上まわります。
完全雇用が達成されるまでは、インフレも気にしなくて大丈夫。もし、金利上昇やインフレを気にする必要があるくらい、景気が過熱するならば、それはうれしい悲鳴というべきでしょう。
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(*1) いまの日本経済(国内)は圧倒的に需要が不足した状態にあるので、一定期間(数年間、完全雇用が達成されるまで)の財政出動や減税は財政再建にかなり有効であると思います。上で、財政赤字が解消できない、と述べたのは、もっと長期的な視点での話です。

(*2) 詳しくは小生のホームページの拙論をご覧ください(第2部、とくに第9節)。

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