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米国住宅価格の推移と今後

バブル崩壊後の日本では、貸出の担保である不動産の価格下落が続いている間は、不良債権問題は深刻になる一方でした。

サブプライムローンの焦げ付きをきっかけとする米国の信用バブルの崩壊も、震源地である住宅価格が下げ止まらないと、解決の目途が立たないと思われます。


■米国住宅価格の推移

次の図1は、過去10年の米国の住宅価格の推移です(*1)。住宅価格は約2年前、2006年6月頃にピークをつけ、そのあとは一貫して下がっています。2008年4月現在でピークから約18%下がりました。いったい、いつまで下落が続くのでしょうか。

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図1(クリックで拡大)

12か月移動平均からの乖離率(赤色の線)を見て下さい。移動平均乖離率が2005年後半に下がり始めてから半年ほどのちに、住宅価格そのものが低下を始めています。今後はまず、移動平均乖離率が底を打って上昇に転じる。それからさらに半年ほどして、やっと住宅価格が底を打って上がり始める、という経過になるでしょう。

いまところ、移動平均乖離率は下がり続けています。下落開始が早かった5都市(サンディエゴ、デンバー、ワシントンDC、ボストン、クリーブランド)の平均乖離率(緑色の線)をみても、下げ止まったようには見えません(*2)。

金融緩和と財政出動(戻し減税)による下支え効果がどれくらいになるのか。WSにはわかりません。ただ、グラフで見る限り、住宅価格の下落スピードが底をうつまで少なくともあと半年、住宅価格そのものが下げ止まるのは、最短でも1年はかかるのではないか、という気がします。


■米国は破産する?

金融機関を救うために金利の急低下が誘導されました。ドルが大量に刷られて、ドル安、資源価格の急騰をもたらしました。この先、どうなるでしょうか。資金が国外へと逃げ出して、純債務国である米国は、資金繰りに行き詰まってしまうのでしょうか。

少なくとも対外的には、米国の破産はありえません。
図2は米国が外国に負っている債務と、外国に持っている資産、および、その差である純債務を示します(*3)。

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図2(クリックで拡大)

確かに、ここ数年で急増した米国の対外純債務は2兆ドルを超える莫大なものです。しかし、米国の対外資産は17兆ドルともっと大きく、純債務は資産の2割にも満たない。

しかも、対外資産の大半は直接投資で外国通貨建てなのに対し、対外債務はドル建てです。かりにドルが他の通貨に対して2割減価すれば、ドルで見た対外資産は約2割増加し、純債務は解消してしまいます。

金融システムに不安が生じて資金が国外へと逃げ出せば、ドル安が進みます。すると米国の対外資産が増価して、都合良く、純債務はなくなる。信用バブルがはじけても、金融機関がつぶれたりドル安が進むだけで、国全体としての支払い能力に問題は生じません。


■国内のアンバランス

問題は国全体としての収支ではなく、このドル安と純債務解消のプロセスによって、国内にもたらされる格差です。

ドル安は物価上昇をもたらし、庶民を苦しめます。政府の財政を赤字にします。

一方、対外資産の増価の果実を味わうのは政府ではなく、多国籍企業です。かれらは自己のアイデンティティーを米国という国には置かないかも知れない。

国内の調和、もっと直接的な言い方をすれば、多国籍企業から、政府や庶民や国内企業への所得移転がどの程度なされるか、という点に、これから問題の焦点が移ってくるのだと思います。

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注 *1) S&Pケース・シラー住宅価格指数(2008年4月)
*2) 2008年4月の値は上昇しているので、下げ止まった可能性もゼロではありません。しかし、ひと月だけでは判断できません。これから数ヶ月間の値を確認する必要があります。
*3) 米国商務省 経済分析部門, International Economic Accounts

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(2008年10月30日追記)
・参考リンク : 900 アメリカ:住宅の地域別動向 (内閣府「今週の指標」、平成20年10月6日)
 2008年7月のS&Pケース・シラー住宅価格指数(20都市)は前年同期比で16.35%の下落と過去最大の落ち込みを記録。しかし、価格の動きは地域によって大きく異なり、30%近い下落が続く都市がある一方で、足元前月比で価格が上昇している都市もみられる。

・参考リンク : ビジネス知識源:晩秋の落日のドルとユーロ (吉田繁治氏、平成20年10月27日)
 米国FRBの貸借対照表(B/S)の検討。FRBの資産内容は金融危機への対策で急速に劣化。

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