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日本の潜在成長率の推移と雇用の安定性---オーカンの法則

今回は日本経済の潜在成長率と雇用の安定性、および、それらの推移について、オーカン(Okun)の法則をもとに推定し、その推移の原因を考えてみます。 オーカンの法則とは、景気がよければ失業は減る、という(あたりまえの)法則です。


■経済の現状と大規模な財政出動

米国ではGDP比6%の緊急経済対策が実施されることが決まりました。 昨年10-12月期のGDPが2ケタのマイナスとなった日本でも大型の経済対策が実施されるでしょう。 歓迎したいと思います。

企業がリストラを行い、それが家計の消費意欲を減退させる。 さらに企業は弱気になって新規投資を控える、というのが現在の経済の姿です。 民間部門に任せておくだけではデフレスパイラルに突入してしまいます。 恐慌突入の不安が社会を覆っているときに、需要を補って景気を下支えできるのは公的部門による支出しかありません。

問題は、財政出動の規模と対象です。

財政出動の対象、つまり、何に支出すべきか、ということに関しては、今回は触れません。 未来を完全に見通すのは無理なので、何が有益で何が無駄なのかは現地点でははっきりしません。 国民の多くが納得できるような支出対象であればよいと思います。 医療や介護、セーフティーネットなど応急手当の必要が明らかな分野や、環境やエネルギー関連の長期的なビジョンに基づく支出などが候補でしょう。

財政出動の規模については、潜在成長率と実際のGDP成長率の差が一つの目安となります。 たとえば、潜在成長率が年3%であるのに、今年の実質成長率がマイナス3%ならば、6%の差(ギャップ)があることになります。 GDPはおよそ500兆円ですから、その6%で約30兆円のギャップです。

仮に10兆円の政府支出が1年間に2倍、つまり20兆円のGDPの増加をもたらすとしましょう。 この場合、約15兆円の政府支出を行えば、30兆円のギャップが埋まることになり、恐慌突入を食い止めることができます。

必要な財政出動の規模は、現在の潜在成長率をどれくらいであると考えるか、によって違ってきます。 潜在成長率が高いと考える人ほど、大きな規模の財政出動が必要であると主張するでしょう。


■潜在成長率とは

潜在成長率にはさまざまな定義の仕方があり、当然、定義が違えば推定される潜在成長率も違ってきます。(例えば、日銀のレポートを参照。 こちらも)。

今回の記事では、以下のように、失業率を用いて潜在成長率を定義します。

潜在成長率 = 失業率を悪化させない実質GDP成長率

経済が成長していれば、企業は業務拡張のために新規採用を増やすので失業率は減少します。 逆に、経済が縮小していたり、経済成長のスピードが遅ければ、失業率は悪化します。その境目の成長率を潜在成長率と定義しようというわけです。


■日本の実質GDP成長率と失業率の推移

次の図は、およそ50年間にわたる、日本の実質GDP成長率と失業率の推移です(*1)。

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図1(クリックで拡大)

成長率が高いときには失業率が改善し、成長率が低いときには失業率が悪化することが読みとれます。また、長期的な流れをみると、成長率が徐々に低下してきたこと。 それに伴って失業率が悪化してきたこともわかります。

次の図は、横軸に毎年の実質GDP成長率、縦軸に失業率の前年差をとって、両者の関係をプロットしたものです。

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図2(クリックで拡大)

やはり、成長率が高いほど失業率が改善することが読みとれます。 まずは大雑把に、1980年以前(青色)と1981年以降(ピンク色)の2つの時期に分けて見てみましょう。 もっと細かく年ごとの変化を追いかける分析はあとで行います。

回帰直線の傾きは、前者(青色)はほぼ水平でゆるやかですが、後者(ピンク色)は右下がりになっています。前者では、成長率が変わっても失業率はあまり変わりませんでした(傾き=オーカン係数=0.03)。 後者では、成長率の変化に対して失業率が大きく変わるようになりました(オーカン係数=0.11)。

わかりやすくいうと、1980年以前は、景気が悪化しても経営者は労働者をあまり解雇しなかったが、1981年以降はたやすく解雇するようになった、ということです。 このように、回帰直線の傾き(オーカン係数)は、雇用の不安定さを表しています。

たとえば、すぐあとで述べるように現在のオーカン係数は約0.16と推定されます。 これは実質成長率が潜在成長率より1%低いならば(いいかえると、GDP成長率のギャップが1%ならば)、失業率が毎年0.16%ずつ悪化し続けることを意味します。 現在、ギャップがいくらであるのか、正確なところはよくわかりませんが、仮にギャップが6%ならば、失業率は1年に約1%(失業者数の増加にすると約60万人)のペースで悪化します。

図2からは、オーカン係数に加えて、もう一つ重要な量が読みとれます。潜在成長率です。

さきほど、失業率を悪化させない成長率として潜在成長率を定義しました。失業率の前年差がゼロとなる水平線と、回帰直線との交点から潜在成長率が読みとれます。 1980年以前は約7%、1981年以降は約3%くらいです。 潜在成長率が低下したことがわかります。

以上は非常に大雑把な観察です。 次に、もっと細かく、オーカン係数(雇用の不安定さ)と潜在成長率の年ごとの推移を調べてみます。


■日本のオーカン係数と潜在成長率の推移

時系列解析の手法を用いると、上記の実質GDP成長率と失業率の年次データから、毎年のオーカン係数および潜在成長率の値を推定できます(*2)。 推定結果を次の2つの図に示します。

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図3 日本のオーカン係数の推移(クリックで拡大)

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図4 日本の潜在成長率の推移(クリックで拡大)

まず、オーカン係数から見てみます。 1950年代に0.15を越える高い値を示していたオーカン係数は、1960年を境に急低下を始め、1960年代後半にはほぼゼロまで低下しました。1960年は岸首相が退陣して池田首相が就任し、所得倍増計画が始まった年であり、ケネディーが大統領選挙に勝利した年でもあります。

その後、オイルショックの影響で一時0.05まで上がることもありましたが、1980年代始めまでオーカン係数はゼロ近くの非常に低い値を保っていました。 従業員を新規に雇用したり解雇する際の企業の判断は、目先の景気の影響をほとんど受けませんでした。 経営は長期的な視野に立って行われていました。

ところが、1980年以降、オーカン係数は増加に転じます。 景気変動による凹凸を除いて考えるならば、一貫した増加傾向が見てとれます。 2003年には、1950年代への逆戻りとも言える0.15を越える高い値に戻ってしまいました。 経営判断は目先の景気変動の影響を強く受けるようになり、雇用は不安定になりました。ちなみに、1980年は大平首相急死、1981年はレーガン政権発足、1982年は中曽根内閣発足の年です。

次に、潜在成長率の推移を見てみます。 潜在成長率はオーカン係数とはほぼ逆方向の動きを示しています。 つまり、オーカン係数が小さくなる(雇用が安定する)ときには潜在成長率の上昇がみられます。

1957年に5%程度であった潜在成長率は、1958〜1959年に急上昇して9%に達し、その後、1980年ごろまで約10%を維持していました。 しかし、1980年以降は一貫して減少トレンドにあります。 2002年には約3%、2003年には2%弱まで落ち込みました(*3)。

少し細かく見ると、バブル崩壊後の1993年ごろから2002年ごろにかけて、(長期低下トレンドにくらべての)潜在成長率の高まりが見られます。 これは財政出動の効果であると考えられます。 途中、1997年付近に落ち込みが見られるのは、消費税増税とアジア金融危機によるものでしょう。 2003年からの潜在成長率の急激な落ち込みも目を引きますが、これは構造改革の負の影響と思われます。 バブルの時期(1987年〜1990年)には潜在成長率が増加することはなく、むしろ減少が続いており、潜在成長率の値じたいもトレンドより低かったこともわかります。


■潜在成長率と実質GDP成長率の推移

次の図は、上で推定した潜在成長率(推定中央値)と実際の成長率を比較したものです。

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図5(クリックで拡大)

定義により、実際の成長率が潜在成長率を上回るときには失業率が改善し、下回るときには悪化します。 1970年以前には、実際の成長率が潜在成長率を上回ることもしばしばでした。 1970年以降は、下回ることがむしろ普通になりました。 上回ったのは、1987年〜1990年のバブルの時期と、2003年以降の世界バブルの時期だけです。不況(失業率の悪化)がふつうになった、ということですね。

図では、1970年代から1980年代半ばに実際の成長率が潜在成長率を大幅に下回っています。 しかし、当時のオーカン係数は小さかったので、このギャップによる失業率の悪化はわずかでした。 一方、バブル崩壊以降の1990年代半ばから2003年ごろまでのギャップは、規模では2〜3%程度でしたが、オーカン係数が大きいので、より大きな失業率の悪化をもたらしました。

ここまでの観察からわかったことをまとめると次のようになります。

・1970年ごろ以降、実際の成長率が潜在成長率を下回るようになった。
・1980年ごろ以降、潜在成長率が低下を続けている。それに並行して、雇用の不安定化が進行している。
・1960年ごろに、潜在成長率が急激に上昇した時期があった。それに並行して、雇用の安定化が見られた。

以下では、観察で判明したこれらの変化の原因を探ってみることにしましょう。人口構成、公共投資の量、為替レートの順に検討します。


■人口要因では変化の一部しか説明できない

まず、人口構成を検討してみます。 次の図は生産年齢人口(15歳〜64歳)と労働力人口の推移です(*4)。

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図6(クリックで拡大)

労働力人口は景気変動の影響を受けますが、長期のトレンドを見れば、生産年齢人口とほぼ似た動きを示しています。おおむね、1980年代後半までは年1%のペースで増加してきましたが、その後、増加率が減少に転じました。1990年代後半に両人口は減少に転じ、2005年ごろに年に約0.5%の減少率となり、2010年代半ば以降は年に約1%のペースで減少する見込みです。

人口要因によって、とくに最近の潜在成長率や実際の成長率の低下の一部(1〜2%分くらい)を説明できるかも知れません。しかし、低下が始まった時期を見ると、実際の成長率は1970年ごろ、潜在成長率は1980年ごろであるのに対し、生産年齢人口の伸び率の減少は1980年代後半で、ずれがあります。成長率低下の主な原因は、別にあると考えるべきでしょう。


■公共投資の量と潜在成長率の推移

次に、公共投資の量について検討してみます。次の図は、公的資本形成の総額の推移です(*5)。

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図7(クリックで拡大)

ごらんのように、公共投資は1960年代から1970年代にかけて、年10%を越える非常に高い伸びを示していました。 しかし、高度経済成長がそれに伴っていたので、GDPに占める公共投資の割合は7%から9%へとゆるやかに増えただけでした。 公共投資が年率30%という大幅な伸びを示した1960年代はじめの数年間は、さきほど見た通り、潜在成長率が急激に上昇し、雇用の安定化が進んだ時期と一致しています。

1970年代には2度のオイルショックがあり、その対策としての財政出動もあって、1970年代末には公共投資のGDPに占める割合が10%近くになっていたことがわかります。

1980年を境に、公共投資のGDP比は減少に転じました。1990年には6%台後半まで低下。そのあと、バブル崩壊後の経済対策で8%台を一時回復しましたが、この10年ほどはほぼ単調に減少し、現在4%台まで落ち込んでいます。

この1980年からの公共投資(GDP比)の減少は、潜在成長率の低下のトレンドと一致しています。

1980年代には、レーガン政権が超高金利政策で海外のマネーを集め、赤字覚悟の大規模な財政出動と軍拡を行いました。日本の金融機関は、国内に投資したり日本国債を買ったりするよりも、米国に投資したい、と考えたことでしょう。ちょうどこの時期に行政改革の必要が叫ばれ、公共投資は無駄というキャンペーンが張られたことは、そうした海外への投資に好都合だったはずです。

この時期は、日本の大企業が借金経営を卒業して、内部留保をたくわえ、運用し始めた時期とも重なります。 大企業という顧客を失った銀行が預金の新たな運用先を探したとき、国外に目が向いたのでしょう。

最近に目を移すと、この10年で公共投資は半減しました(GDP比8%→4%)。 毎年2兆円ずつ公共投資が減っています。 その代わり、社会保障費などが増えています。 WSは、この支出の転換が、不況をもたらしていると考えます。

社会保障費を増やすことに反対しているわけではありません。 しかし、社会保障費と公共投資とでは、民間経済への波及効果がかなり違うのです。 例えば、1万円の社会保障給付を受け取った家計は、そのうちの7割くらいを支出します。 その支出が波及して、2〜3年の間に計1万5千円くらいの需要を生み出します。 一方、1万円の公共投資を行えば、受注企業は1万円を受け取り、さらに給与を払ったり原材料を買ったり、といった形で、(最初の受注分と合わせて)2〜3年の間に計3万円くらいの需要を生み出します。生み出す需要では、2倍くらいの差があるわけです。

現在のように頭から経済成長の可能性を排除し、近視眼的に財政均衡だけを重んじるならば、公共投資がGDPに占める割合を4%以下に減らしていく、という未来しか思い浮かばないことでしょう。 しかし、逆に6〜8%くらいに増やし、それによって国の経済規模を拡大した方が、かえって税収が増えて社会保障の財源も生み出せる、という可能性を検討してみるべきではないでしょうか。

この点についてはいずれ、もっとちゃんと考察して、記事にまとめたいと思います。


■為替レートの推移の影響

次の図は、円/ドルの為替レートの推移を示します(*6)。 10年後方移動平均と、移動平均からの乖離率も示しました。

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図7(クリックで拡大)

変動相場制へと移行した1970年ごろから、長い目でみると、一貫して円高ドル安が進行しています。 それに伴って、実際の成長率が低下しました。 潜在成長率の低下が始まったのは10年ほど遅れて1980年ごろからですが、このずれは上でみたように、1970年代の公共投資の高い伸びによる経済下支え効果で説明できると思います。

円高ドル安が成長率を抑制するわけは、輸出競争力が低下するからです。 円高になると輸出が減少し、それが国内の下請けへと波及していきます。

細かく見ると、円高ドル安進行期と円安ドル高進行期が繰り返されています。円高進行期には輸出減少による不況を緩和するために公共投資による景気下支えがなされます。 円安進行期には、輸出増加で好況となり、公共投資が削減あるいは伸びが抑制されます。

そして、全体のトレンドとしては円高が進むスピードが速すぎて、国内だけでは対応できず、工場の海外移転などもあって、成長率の低下を招いているものと思われます。


■経常収支の推移

為替レートと密接な関係にある、経常収支(貿易サービス収支+所得収支)の推移(下図)も見ておきます。

Balance
図8(クリックで拡大)

1980年以前には経常収支が赤字になることもありましたが、1980年以降は大幅な黒字が続いていることがわかります。 経常収支が均衡していた70年代以前の方が、成長率が高かったという事実は重要です。 あたりまえのことですが、経常収支の黒字は、経済成長の必要条件ではありません。 日本は資源に乏しい貿易立国ですが、黒字でないと死んでしまうわけではないのです。

さて、ここで、ひとつ疑問が出てきます。なぜ、(長期的にみて)つねに円高が進行するのか。 ふつう、変動相場制で為替レートが自由であれば、自動安定化機能が働いて、経常収支はゼロに向かい、為替レートが一方向に進行することはないのではないか、という疑問です。

どういうことかというと、たとえば、日本の経常収支が大幅な黒字であるとしましょう。 すると、日本円が買われて、円高になる。 円高は輸出競争力の低下を招くから、日本の貿易収支の黒字は減る。したがって、経常収支の黒字も減る。 だから、円高の進行は止まるはずだ、というわけです。

この疑問の答はたぶん、経常収支の黒字は結果に過ぎない、ということでしょう。

日米間には1980年代いらい金利差があり、日本の金融機関には常に、外貨建ての債券などを購入する動機があります。 金利差が大きいほど外貨の購入量は多い。すると(金利差がない場合にくらべて)ドル高円安になります。 これが輸出を増やし、利息受け取りを増やして、経常収支の黒字につながっているのでしょう。

このようなシステムが30年も持続できたのは、米国が基軸通貨国だからだと思います。世界からマネーを集めて新興国に投資して利益を挙げることで、米国は高金利と経常収支の赤字を両立させ、ドルを刷って世界からモノとサービスを購入してきました。 ドル安により、対外債務を減価させてきました。

それに適応した結果、日本には、恒常的な円高と経常収支の黒字、資本の流出が定着しました。 資本を流出させる分、国内への投資は減り、不況となりました。 その不況は、輸出が不振となる円高進行時(まさに現在のようなとき)に強く実感されます。


■物価上昇率の日米比較

次の図は、日本と米国のCPI(消費者物価)上昇率の推移です(*7)。

Cpi
図9(クリック)

1977年ごろまでは、日本の方が物価上昇率が高かったのですが、その後は米国の方がつねに高いことが分かります。 物価上昇率の差は平均すると、年率で2.5%ほどです。

年2.5%の差が30年間積もると、約2倍の差になります。 実際、為替レートを見ると、1978年は1ドル=210円でしたが、2007年は1ドル=115円ですから、円に対するドルの値打ちが約半分になっており、消費者物価の変化とほぼ一致していることがわかります。

おそらく、米国は少しマネーを刷りすぎており、日本は逆に少し刷り足りないのです。 そのために、(長期トレンドでみて)円高ドル安が進行しているように思います。

日本の物価上昇率の低さはあまりにも異常です。
企業にとっては、もう少し物価上昇率が高ければ、業績が不振なときに賃金を据えおくことで実質的な賃下げができ、設備投資などの余力が出てきます。 しかし、現状では、実額での賃下げやリストラで社員のやる気をそぐことしかできません。 物価上昇率の異常な低さが、失敗が許されない緊張した経営環境、職場環境を生んでいます。

経済システムに柔軟性を持たせるために、米国なみに年4%とまではいかなくても、年2〜3%のインフレ率が望ましいのではないでしょうか。そうすれば、円高進行圧力は緩和し、工場も国内回帰し、資本流出は減り、国内投資にも魅力が出てきて、日本の金利や株価も多少は上昇し、資産効果で家計の消費も増えると思います。


■まとめ

今回は、日本の潜在成長率や雇用の不安定性(オーカン係数)の推移を観察し、その変化の原因について考えてみました。

1980年ごろを境に、米国の高金利政策に合わせる形で、また、大企業の(銀行からの)乳離れという日本独自の理由もあって、資本が国外へ流出するようになり、公共投資も減り、それに並行して潜在成長率の低下が起きました。 経常収支の黒字はその結果にすぎません。

財政均衡にこだわって、社会保障費の自然増加分だけ公共投資を抑制する政策は、成長率の低下、さらには潜在成長率の低下を招いている可能性があります。

むしろ、公共投資の額をGDP比6%(現在の1.5倍)程度まで戻し、同時に、米国と同程度(3〜4%)のインフレ率を許容することが、資本の国内回帰を呼び、1960年代はじめのように、成長率の上昇、さらには潜在成長率の上昇と雇用の安定をもたらすと考えます。

1990年代までの日本では、公共投資が所得の再分配に大きな役割を果たしていました。 加えて、今回は触れませんでしたが、税制による再分配が消費性向を上げる効果も忘れることはできません。 1960年ごろの所得税累進性の強化および1980年以降の累進性の緩和が(参考グラフ)、家計の消費性向の変化という経路を通じて、上述のような潜在成長率の変化をもたらした主たる原因の1つであろう、と考えます。

なお、公共投資の効果については、あらためて分析して報告したいと思っています。 では。

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*1) 実質GDP成長率の年次データ(暦年)は、1994年以降は国民経済計算の平成19年度確報、1980年〜1994年は平成15年度確報、1956年〜1980年は平成10年度確報の値。接続年は平均値を使用。 失業率は、総務省統計局ホームページ・労働力調査の長期時系列データの完全失業率月次データを年ごとに平均した値。

*2) ある年の失業率の前年差をΔU, 実質GDP成長率をR, オーカン係数をa, 潜在成長率をpとし、前年の値を順にa_, p_として、以下のような状態空間モデルを考えます。

観測モデル:ΔU = a (R - p) + u1
システムモデル:a = a_ + u2, p = p_ + u3

観測モデルはオーカンの法則を表しています。 システムモデルは単純なトレンドモデルです。 ただし、u1, u2, u3はゼロを中心とする正規分布に従うランダムなゆらぎで、互いに独立と仮定します。

aとpの初期分布(1955年の分布)を正規分布に仮定します。初期分布は平均と分散(計4個)のパラメータで決まります。u1, u2, u3の分散と合わせて計7個のパラメータを、モンテカルロ粒子フィルタの手法で、最ゆう法で推定しました。 粒子数は4000で、各予測ステップでは20000個の状態を生成し、続くフィルタステップで4000個を選び出しています。 図3と図4に示したオーカン係数と潜在成長率は、期間数を5期(5年)として固定区間平滑化を行ったものです。

*3) この推計によると2003年以降も潜在成長率の落ち込みが続き、2007年には約0%まで低下しています。 しかし、雇用の非正規化が進行中であれば、失業率の改善が始まる成長率の水準は、以前より見かけ上低くなるでしょう。その影響で、潜在成長率が過小評価されている可能性があります。 2003年〜2007年の実際の潜在成長率は、図に示した今回の推計の値より、1〜2%ほど高いかも知れません。

*4) 労働力人口のソースは、*1)の完全失業率と同じです。 生産年齢人口のソースは、政府統計の総合窓口 > 人口推計 > 長期時系列データ > 我が国の推計人口(大正9年~平成12年)、および、最近の年次データ、および、国立社会保障・人口問題研究所の平成18年12月の中位推計。

*5) 公的資本形成のソースは国民経済計算((*1)と同じ)。

*6) 為替レートはセントルイス連銀のホームページより。

*7) 消費者物価指数のソースは、日本は総務省統計局、米国はBureau of Labor Statistics。

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コメント

HMです。お返事遅れて申し訳ございませんでした。

前回の記事の米国の消費性向についてのデータ、非常に明瞭です。わざわざありがとうございました。


今回の記事にもレスさせていただきます。

>6%の差(ギャップ)

このデフレギャップの推定から「暗黒卿」こと高橋洋一氏・「モリタク」こと森永卓郎氏が政府紙幣25兆円発行を訴えていますね。実際には政府支出と金融緩和の組み合わせが最も効果があるのですが、・・・

・財務官僚は財政赤字は爆発寸前で何が何でも押さえ込まないと明日にでも財政破綻でハイパーインフレが来ると心配している。そのうえマクロ政策には全く効果がないと教わっている。

一方で、

・日銀官僚はマーシャルのkかなんかを見ながら明日にでもハイパーインフレが来ると心配している。そのうえ金融政策は全く効果がないと教わっている。

そして、

・両者とも、国民を決定的破綻に直面させないために例えどんなに恨まれて、貶されても、断固としてその使命を貫徹するべく決死の覚悟をしている。全ては国家と国民のため、というわけだ。だから、その任務達成を邪魔する奴は許すべからざる国賊に見える。

・・・という、まるで昭和前期の陸海軍の如き反目の泥沼にはまっているようです・・・

公共投資については、高度経済成長期と現在では条件が異なるかもしれません。昔は西欧や北米における成功例を後追いでなぞれましたが、今はそうはいかないからです。というのも、小野善康氏が「公共投資によって出来上がった物・サービスの価値が公共投資額を上回る価値を生んではじめて乗数効果といえる」と主張しているからです。
http://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=1328117
この主張の是非については私は何とも言えませんが、仮に正しいのなら費用対効果の予測精度を上げることが必要になりそうです。

為替レートについては、ついに世界経済不均衡の構図が崩れたということで、米国以外の需要を増やし米ドルのゆるやかな切り下げに向かう方向で動くようです。米国以外の需要を増やすさいの候補はやはり新興国なのでしょうが、日本も米ドルを買い支えて輸出先の過剰消費をキープする必要がなくなれば為替レートを特に気にしなくてもよくなりそうです。

ただ、日本のCPIの低さは別問題であり、かつ深刻ですね。いわゆるインタゲ・リフレ論者は年間2±1(1〜3)%のインフレ率が望ましいと繰り返し主張しています。それに伴う金融緩和の手段については
http://www.ichigobbs.net/economy/index.html
(http://blog.livedoor.jp/monasouken/)
で数年前からいろいろ議論されています。ここは昔からインタゲ・リフレ論者が集結している掲示板で、銅鑼衣紋/ドラエモンを名乗る中年男性が中心メンバーですが、山形浩生氏も出入りしています。

ただ金融政策マニアが多いため、経済全般には詳しいのですが、グレゴリー・マンキューの「課税時点が所得時と消費時では、消費時の方がお金を投資して増やす時間がある分有利になる。だから消費税の配分が多くなれば、人々はそれだけ貯蓄したがるようになり消費を抑制してしまう」という主張にはなかなか同意が集まらず見解が割れていたりします。

また乱文乱筆になってしまいましたが、以上です。前回の記事のデータについては重ね重ね感謝いたしますm(_ _)m

投稿: HM | 2009.02.19 06:57

HMさん

早速のレスをありがとうございます。

旧陸海軍の比喩には笑ってしまいましたが、10年ぐらい後に振り返ってみたとき、この比喩が間違いだったと笑いとばせることを祈ります。

ご紹介いただいた小野善康氏の論文を読みました。 余談ですが、読んでいて、むかしサミュエルソンの「所得決定の簡単な数学」というエッセイに感激したときのことを思い出しました。 数ページの中にマクロ経済の教科書の100ページ分くらいのエッセンスが凝縮されているように感じたものです。 この論文からも、似た懐かしい香りがしてきたのです。

さて、WSが最初に目を引かれたのは第1節の後半の議論です。 所得の再分配効果が重要で、政府の移転支出にしても、公共投資にしても、消費性向の高い層の所得が増える方が乗数が高まるという主張です。 大賛成で全く異論はありません。 消費税で財源をまかなって公共投資をやってもダメだということですね。

後半の主張、つまり、公共投資が同額の給付金より優れているのは「公共投資によって出来上がった物・サービスの価値がプラスである(*)」場合に限る、という主張については、この論文の前提から導かれる論理的結論としては同意します。しかし、現実の経済に関する主張と思った場合には半分だけ同意します。

*) 公共投資をした段階で、(たとえそれが穴掘り穴埋めであっても)政府は企業に支払いをしており、それが最終的には家計へ行くから、最低でも給付金と同等の効果は常にある、とこの論文では考えているようです。

完全に同意できない理由は2つあります。1つは、公共投資の場合、政府支出はまず企業部門に渡り、企業間の取引を生みます。このスピードは個人消費の3倍ありますから、給付金とは波及スピードが違います。小野氏のモデルのように、企業セクターのない均衡状態の経済を考えればこのような点は考察から漏れます。現在のように、デフレギャップを埋めるための政府支出を考える際には、均衡点からはずれた経済が均衡を回復していくスピードも重要な要素だと思います。

もう1つは、主観的なものです。 失業していたが公共投資を通じて所得を得る人は自ら稼ぐわけですが、給付金をもらう人はそうではない。 前者の所得の方が個人にも家族にも社会にもより良い影響を与える、と思います。

結局のところ、公共投資が大きな効果を生むためには(税による財源調達プロセスがあるなら、それも含めて)
a) 所得再分配の効果を持つこと
b) 公共投資によって出来上がった物・サービスの価値が高いこと
c) 多くの企業間取引を喚起すること
が重要であるとWSは思いますが、これまでのサプライサイドの議論ではa)が見落とされがちであった、ということでしょう。

金融政策については正直なところWSは勉強不足です。ご紹介いただいたBBSを少しのぞいてみましたが、難しくて議論についていけないところが多々ありました。

最近、物価や金利のデータを眺めていて感じることがあります。

金融政策の目的は、短期金利の調節により物価水準(と景気)を制御することである、とふつう思われています。物価目標を決めたら、金利を自由に選ぶことはできません。

しかし、覇権国(基軸通貨国)に限っては、物価水準と金利水準を独立に選ぶことができるのかも知れません。マネーを刷る量とコールレートをほとんど独立に選べるのではないでしょうか。

覇権国は、他の国より2%くらい物価上昇率が高く、かつ、金利も2%くらい高くすることができる。 覇権国は金利差で資本を他国から呼び込み、国内を好景気にする。他の国は資本流出のせいで国内投資が不足して不景気になる。そのために、2%の物価上昇率の差にも関わらず、覇権国の通貨は上昇します。しかし、5年後くらいには、通貨価値の差があまりにも拡大するので、他の国は輸出が増えて好景気になり、ついには金利差の維持が不可能になります。一気に物価上昇率の累積差に見合うところまで覇権国の通貨価値は下落します。このとき、覇権国の債務は減価し、他の国は対外資産を失います。これが繰り返されている気がします。

今回の信用バブルの崩壊で、ドルはユーロに対しては上昇しました。円に対しては下落しています。ユーロは「他の国」の地位を返上したが、円はまだ返上していない、のかな?

マンキュー氏の所得税と消費税の比較の話ですが、こういう考え方もあるのですね。参考になります。しかしながら、悲しいことに日本の現状では、HANDtoMOUTH家計の可処分所得への影響という直接的経路がより重要であると思われます...

今回も、いくつか考えるヒントをいただき、ありがとうございました。
まだ、累進課税の最適設計とか大きな宿題も残っております(^^;;;
ぼちぼちと取り組んで行くつもりです。
これからも、お時間のあるときに、コメントなどいただけましたら幸いです。

投稿: Wave of sound | 2009.02.22 01:13

WSさん

お返事ありがとうございます。

ところで消費税導入に至る流れもかなりお粗末なもののようです。

そもそも高度経済成長期の消費急増が(ディマンド・プル・)インフレの要因であったため、これを抑える特効薬として大蔵省は売上税を導入したかったのだそうです。昭和40年不況・建設国債発行からの話ですね。

ところが時は下り、さんざん迷走してバブルを引き締められず、そしてバブルが崩壊して消費が落ちてデフレになりかけたとこでようやく消費税導入・・・という流れになってしまいました。

日本の財政政策は目的と効果と導入時期がちぐはぐになっており、後ろを向いて車を運転する人に良く例えられているのだそうです・・・


小野氏のモデルについてはa)、b)、c)の3つ全てにわたり細かく検討しないと、ただでさえ減ってきた乗数効果を上げることは成功しないと言えると思います。中央リニア新幹線のルートのことでJR東海と長野県が対立していますが、私企業でさえ撥ね付けるのが難しいのに政府が撥ね付けるのはもっと難しいでしょうから。つまり実現可能性の問題ですね。

私や、恐らく小野氏はとりわけb)に関心があるのですが、WSさんの言葉を勝手にお借りして苺経済板(ichigobbs)で質問をしてみたら
http://www.ichigobbs.net/cgi/15bbs/economy/0395/927-931
という意見をくれました。なかなかややこしい話です。

ただ近年の交通需要予測などでは大量の関数をインプットした人工市場テストで精度が上がっているという話も聞きます。応用できそうな技術があればできるだけ導入すればよいと考えます。

なお小野氏は著書『不況のメカニズム』で自説を“不況動学”と銘打っていますが、小野氏の言説は(各論では賛成されていても)総論では賛否両論です。特に金融政策にあまり関心がないところなどが批判されがちです。アメリカの最先端モデルは新古典派とケインズ派の言い分を融合させた動学的確率的一般均衡モデル(DSGEモデル)となっています。私には難解すぎるのですが、WSさんがもし関心がおありなら参考にしてみて下さい。


基軸通貨発行国の物価水準と金利水準の乖離は、これは基軸通貨発行国に「国際収支の天井」が無いためでしょう。

普通の国は外貨準備が足りなくなりそうになると、わざわざ景気を引き締めるのです。高度経済成長期のわが国でもそうでした。もし外貨準備が底をついたら自国通貨買いの介入ができなくなり、通貨安が止まらなくなります。つまり通貨防衛を行うには一定の外貨準備が必要です。これを「国際収支の天井」と言い、固定相場制の頃は頻繁に起きていました。

アメリカには「国際収支の天井」がありません。外貨準備は持っているものの、底をついてもドルの地位が揺らがないからです。逆に対ドル高により対米輸出がしづらくなる国の自国通貨売り・ドル買いによってドルが買い支えられきました。アメリカは買われた米国債を財源に減税し、消費を青天井にしてきました。

1980年代後半から、基軸通貨としての絶対的な強さを保ちつつ外国から買い支えられる弱さも併せ持つ奇妙な位置にドルはあった。これがアメリカにおける物価水準と金利水準の乖離をもたらしたと言えるのではないでしょうか。


>今回の信用バブルの崩壊で、ドルはユーロに対しては上昇しました。円に対しては下落しています。ユーロは「他の国」の地位を返上したが、円はまだ返上していない、のかな?

これは単に金融緩和が足りないからでしょう。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/money/20081203/179030/graph1204-1.gif
日銀もECB並の1.3~1.4倍にBSを膨張させ通貨供給量を増やせばユーロより少し高いくらいには安くなるはずです。

通貨が高いことは良いことなのですが、景気が悪いのに金融を引き締めてまで通貨を高くしたらナンセンスです。日本はデフレに再突入しかけてますから、年間インフレ率1〜3%になるまで国債買い切りオペ、預金準備率・超過準備預金金利の引き上げ等による実質金利の引き下げを行う必要があると考えています(年間インフレ率1〜3%になれば、それ以上の緩和は必要ありません)。


金融政策は私にとっても難しいことこの上ないのですが、少なくとも、財政(税制も含みます)と金融政策を組み合わせないと成長軌道に乗せられないことは直感でわかります。WSさんが金融にも強くなったら苺経済板にぜひ遊びに来て下さい。ガキも多いですが指名すれば専門家とやりとりできますし、政策担当者のROMも多いですので、WSさんのような本格的正統派の才能を誘致したいのです。

毎度お疲れ様です。では。

投稿: HM | 2009.02.22 06:11

HMさん

コメントをありがとうございます。 お返事をしなければと思いつつ、日が経ってしまいました。


消費税については首相が将来の増税を明言するなど、WSにとって非常に残念な状況です。 いま将来の増税など口にしたら、消費するどころか貯蓄にはげみ、景気対策の効果が半減してしまうだけなのに。 かけこみ需要ねらいなのか(長い目で見ればマイナスの方が大きい)、それとも、財政出動に抵抗する勢力へのご機嫌取りなのか。 残念です。


公共投資の効果の評価法についてWSは全くの知識を持ち合わせていません。 しかし、産業連関分析や、交通量など分野に特化した分析を組み合わせて、雇用創出効果や地域経済への影響、所得再分配効果などを含めて、相当に精密な予測が可能であろうことは想像できます。

また、今回のように20〜30兆円規模の総需要不足を補う緊急経済対策では、どうしても効果が低く、国民も望まない公共投資が入り込んでしまうおそれがあります。

素人ながらに思うのですが、ふだんから公共投資の将来プランを紹介するYouTubeのようなサイトがあればいいですね。 ここには、省庁や企業やNPOはもちろん、個人も自由にプランをアップできます。 地域別や事業の種類、予算額などによって自由に一覧表示して比較できる。
一覧表には、事業の目的や予算額、雇用創出効果、再分配効果などが記載されていて、より詳細な説明のあるページへのリンクがある。

そして、ここが重要なポイントですが、プランへの賛否を投票できたり、誰もが自由に書き込めるコメント欄がついていて、さらにそのコメントへの賛否を表明できるボタンがあり、コメントへのコメントもつけることができる。 また、提案者を紹介するページも設けて、そこにもコメント欄をつけるなど、提案者を評価する仕組みもあったほうがいいですね。

最終的にどのプランを実行するのかを決めるのは、もちろん議会なり住民投票なりですが、このサイトであらかじめ紹介されておらず、評価を受けていないプランは、原則として実行されないというルールを作ってはどうでしょうか。 公共投資の決定プロセスがこのように透明化されれば、公共投資を悪とみなす困った風潮も改まるかと思います。 不況になれば地域でお気に入りの公共投資プランが実施される、とわかれば、不況の苦しさも多少は緩和します(笑)。

かりに年20兆円を公共投資に使うならば、そのうちの0.01%、20億円ほどをこのようなサイトの維持、管理にあてるだけで、そうとう立派なシステムができるのではないでしょうか。


「国際収支の天井」など金融政策についての大変にわかりやすいご説明をありがとうございました。 昨年秋以降、ECBのベースマネーもずいぶん増えていたのですね。

80年代のはじめに日銀の方が書かれたものを、読んでみました。 高度成長期の金融調節は今思えば楽であった、景気が過熱して国際収支の天井にぶつかりそうになったら金利を上げて金融を引き締める、すると半年ほどで国際収支が黒字に返り、景気も落ち着く、それを見極めて金利を下げ、金融引き締めを解除する、やがて銀行の貸し出し競争が始まり、設備投資が燃え上がって景気が良くなる、この繰り返しでよかった、と書いておられます。

それが、大企業の資金需要の低下、財政赤字(国債発行)の拡大、海外との間の資本取引の自由化によって、金融調節が難しくなってきた、とのことです。

「物価の安定がこそが絶対的な善である」という強い信念が伝わってきます。 おそらくこの信念は経験に裏打ちされたものなのでしょう。

・古くは高橋財政で財政出動をサポートするために金融緩和(国債の日銀引き受け)を行って一時的には大成功を収めたが、数年後に引き締めるべき場面で、軍部の強い反対によって金融の引き締めができず、インフレを招いたこと。
・ニクソンショック後の不況にあわてて、金融を緩めすぎ、2ケタのインフレを招いたこと。
・その反省から第2次オイルショックのときには予防的引き締めでうまく乗り切ったこと。
・80年代後半の金融引き締めの遅れが不動産バブルを招いたこと。

ある程度(年3%くらい)より高率のインフレは、どんどん加速していく性格をもっているから、よろしくない、という考えのようです。

ハイエクの「貨幣発行自由化論」のなかにも、マイルドインフレすら悪である、という考えが出てきます。 ハイエクは、価格や賃金の硬直性をマイルドインフレによって緩和することの益よりも、本来ならば成功しない投資がマイルドインフレ(金融緩和)によって成功してしまうことの害を強調しています。

しかし、ハイエクは、英国の1920年代の状況(ポンドの価値を高めようという無謀な試みにより、国内物価が国際価格と乖離していた)では、マイルドインフレ政策も許容されようが、という留保をつけています。

WSは、現在の日本の状況がまさに、ハイエクですら留保をつけた1920年代の英国の状況と同じなのだと思います。 国内だけで世界が閉じているならば、インフレ率0〜1%という物価の安定が絶対善なのかも知れない。しかし、他国の中央銀行が3〜4%のインフレ率を30年間にわたって許容している状況でそれをすると、国内の輸出産業は円高で大変に苦しむことになる(さまざまな政策により、その苦しみは国内弱者に移転されていますが)。

金融政策の辞書には物価の安定が絶対善であると書いてあるのかも知れませんし、孤立国ではそれが正しいのかも知れませんが、現実の社会にそれを適用する際の方便として、海の向こうにキリギリス中銀が存在するかぎり、日本も2〜3%程度のインフレ率を許容してほしい、と思います。


「DSGEモデル」という言葉は少し前から気になっていました。 この機会に少し本を斜め読みしてみたのですが、フォワードルッキングとか、期待に働きかける、などの言葉が、数学的表現を持っていたことを知り、自分の無知に驚きました。 未来の期待値の項があるのに、どうして漸化式が解けるのだろう、と疑問だったのですが、解が発散しないという条件を置くことで処理できるのだということもわかりました(線形化した理論に限っては)。でも、これって、将来は均衡状態に収束していくことを仮定するようなモノだから、公共投資の長期的効果なんか議論すると、かならず、長期的にはゼロである、となりそうな...。ふむ? たぶんWSの勘違いでしょう。 使えるようになるまで、もう少しちゃんと勉強して理解する必要がありそうです。

では。

投稿: Wave of sound | 2009.03.15 00:09

WSさん

いろんなエントリーをアップしていただきありがとうございます。何から書けばいいのか考えあぐねてしまい返信が遅れてしまいました。

思うに、一般論として消費課税が必要な時とは、国内において消費>投資となり国際収支が悪化している時に限られるのではないでしょうか。金融引き締めで景気全体を冷ますよりは消費に絞ってブレーキをかけ、税収は設備投資減税の穴埋めに使うという感じです。

となると消費課税が必要なのはアメリカのような国であって、日本やEU諸国はただちに税率ゼロ~非常時増税用の糊代として存置するにしろ0.5%程度に下げるべきではないかと思います。


>産業連関分析や、交通量など分野に特化した分析を組み合わせて、雇用創出効果や地域経済への影響、所得再分配効果などを含めて、相当に精密な予測が可能であろうことは想像できます。

私もそう思っていたのですが、山形浩生氏らから

> 過去には国連の世界経済モデル「プロジェクトリンク」があり、経済企画庁も世界経済モデルを運用していたし、凄いのになると数万本の式で構成されていたりした。だが、とにかくやればなんとか成果があがるだろうとやってみたけど、結局は駄目だった。しかも、それが偶然ではなく本質的に駄目だったというのが、いわゆるルーカス批判でもある。

> 世界の人間一人ずつを変数20個くらいであらわして世界経済を完全にミクロレベルから記述することもできるんじゃないかとは思うけれど、それがどこまで当たるか…

という意見が出てしまいました。交通需要の予測とは勝手が違うようです・・・


>ふだんから公共投資の将来プランを紹介すYouTubeのようなサイト

これはすばらしい!ぜひとも導入してみたいものです。


>日本も2〜3%程度のインフレ率を許容してほしい

「適正なインフレ率」とはどれくらいか?ということの論拠を、引用を交えながらまとめてみました。ぜひ参考にしてみて下さい。

> ①政府統計の物価指数は、普通は固定ウェイト算術平均だが、これだと代替効果を無視している(値上がりしたら他のものを買うことで効用水準は維持できる)ため理論的な物価より必ず過大評価になる。つまり、いわゆる上方バイアスがかかる。

> ②サンプリングの問題(バーゲンとか色々)

> で、アメリカではそのせいで年間インフレ率に+1%の誤差が生じると言われている。もっとも日本に関しては、日銀の白塚重典氏が以前は+1.5%くらいだと言っていた。だが最近は0だそうだ。で、とりあえず両方の中を取って+1%。

> ③不況に陥ったときにも名目金利はゼロ以下にはできない。だから、ゼロで景気刺激効果を持たせるには、実質金利がマイナスになるだけの糊代が必要。これが+1%。

> で、合計2%を年間インフレ率の下限ラインにしましょうということを、FOMCでグリーンスパン議長の質問を受けたときにジャネット=イエレン・サンフランシスコ連銀総裁が主張し、とりあえず受け入れられ、FRBでは 「年間インフレ率2%を物価安定と定義する」 ということになっている。

> 年間インフレ率の上限ラインについては、デフレ以前の経験として年間インフレ率5%になると文句が出るから、-1%の糊代をつけて上限は年間インフレ率4%にしましょうということになっている。

> ☆年間インフレ率2%未満・上方バイアスを取り除いて年間インフレ率1%未満のデフレのときは通貨発行益(seigniorage)の活用が許されるし、また、活用しなければならない。

> ☆年間インフレ率2~4%・上方バイアスを取り除いて年間インフレ率1~3%のレンジに達したら通貨発行益の活用を止め、この適正レンジ内でドーマー条件を満たした財政・金融政策を巡航させる。


ついでに、日銀 「銀行券ルール」 についての見解も引用しておきます。

> 日銀が貸借対照表上での負債を考える意味があるとすれば、インフレを抑制するため市中から貨幣を回収する時に、民間に売却する資産が十分なければ困るという話。

> 紙幣の発行を資産の購入によって行えば、回収する際にはその資産を売却すれば良いが、政府紙幣のように資産購入を行わない場合には、回収手段がないという話。

> これはさらに一般化され、たとえ国債買いオペで紙幣を発行しても、インフレになって金利が上がると国債の市場価格が低下し、十分な額の紙幣の回収ができなくなるという 「長期国債買い切りオペのリスク」 という話になる。

> これに対する回答は、バーナンキによる 「そんなに気になるなら政府に国債刷って貰って贈与(あるいは増資)してもらえばよろしい」 というものがある。また、インフレになって価値が低下する資産を買うのが嫌なら上がる資産を買えばよろしい。たとえば外貨はインフレになって円安になれば価値が上がるから売却すれば購入時に散布した以上の貨幣を回収することができる。また上場投資信託(ETF)など格式関係資産でも同じ。それも嫌なら物価連動国債を買えばよろしい。これはインフレに連動して価値が上昇することが保証されている。

> だが、そんなことしないでも、準備率を上げる(今は異常に低くなっている)とか、準備預金付利の金利を上げてしまうとか、他の方法はいくらでもある。


政府・日銀が互いに不信感を抱いているために足並みがそろわないと言われていますが、岩田規久男氏は 「だったら、相互の不信感を払拭するために政府・日銀は協定を結べ」 と主張しています。

①日銀は年間コアコアCPI上昇率1%(上方バイアス無し)以上になるまで通貨発行益を行使し、1~3%(同)のレンジ内で金融調節を行う
②政府は日銀の金融緩和の範囲内で財政出動を行う <金融緩和の範囲を超えた財出は文字通りの国債乱発になりかねない>

の2点を押さえた政策協定を結べ、との事です。


では、上方バイアスを取り除いて年間インフレ率1~3%の適正レンジ内でドーマー条件を満たした財政・金融政策を巡航させていったら年間何%くらい経済成長するのか?と聞いたら、「控えめに見積って名目4.5~5.5%、実質3.5%」、という答えをいただきました。その答えの書き込みを引用します。

> 完全雇用失業率を3%、多分今年中に6%(ないしそれ以上)まで失業率が上がると、ギャップは3%。オーカン係数を3とすると、GDP換算で10%位のギャップを埋めるまでは景気回復だけで実現可能。これを5年掛けて実現するなら、毎年2%成長できる。

> これに潜在成長率を1.5%と(俺的には「超」だが)控えめに見積もると、回復期間の成長率は3.5%になる。これにGDPデフレータで2%上昇を許容するなら名目で5.5%成長ということになる。以前より潜在成長率を低めに見た名目成長率ではそんなもんだろう。デフレータを1%低くすると4.5%。


私の巣からの引用は以上です。日本はポテンシャルがあるのに、もったいないなぁ。という気持ちになります。

WSさんは「経済成長できるなら成長するべき」+「再分配は重視しなければならない」という立場ですし、私もそうだし、バランス感覚のある人はみんなこの立場でしょう。ところが世に言う論壇においては“経済成長重視派”は公的機関による再分配政策に否定的で、“社会政策重視派”は経済成長がまるで諸悪の根源、納税者番号制度は『1984』の世界だ!みたいな言い方をしています。

両者の不毛な対立の構図をアウフヘーベンするにゃ、どうしたらいいんだろう?ということで悩みます。地道に世の人々を説得してゆくしかなさそうですね・・・


>将来は均衡状態に収束していくことを仮定するようなモノだから、公共投資の長期的効果なんか議論すると、かならず、長期的にはゼロである、となりそうな...。ふむ? たぶんWSの勘違いでしょう。

これは均衡点を上に見出せれば拡大均衡、下にしか見出せなければ縮小均衡という形で説明できないでしょうか。

投稿: HM | 2009.03.23 04:24

HMさん

コメントをありがとうございます。とても勉強になります。

> 思うに、一般論として消費課税が必要な時とは、国内において
> 消費>投資となり国際収支が悪化している時に限られるのではないでしょうか

その通りだと思います。 消費が過熱気味で輸入が輸出(+海外からの所得受取)を凌駕している状態ですね。いまの日本とはかけ離れた状態だと思います。

     *

公共投資の効果を評価する話ですが、(1)国全体として15兆円なり20兆円の公共投資をいま行うべきかどうか、と、(2)仮に行うべきであるとして、いくつかの個別の公共事業のうちのどれを実施すべきか、とは区別して論じる必要があると思います。

「産業連関分析や、交通量など分野に特化した分析を組み合わせて、雇用創出効果や地域経済への影響、所得再分配効果などを含めて、相当に精密な予測が可能であろう」と書きましたが、これは(2)、個別の公共事業の効果を比較する場合の話です。

個別の公共事業の効果も、もちろん、国全体の政府支出の規模や金融政策の影響を受けて変わります。 しかし、政府支出全体の規模や金融政策についての複数の前提(ケース)のもとで、事業Aと事業Bの効果を評価し、ほとんどのケースで(さまざまな評価指標について)事業Aのほうが優れているなら、BよりはAを実施すべきだ、とは言えるでしょう。

また、(1)の国全体としてある規模の公共投資をいま実施すべきかどうか、については、小規模なマクロ経済モデルである程度の結論は出るはずだと思っています。よほど恣意的なモデルでも作らないかぎり、少なくとも、巨大なGDPギャップが存在する場合には、政府支出の(一時的な)拡大は肯定されるはずです。

式の数を増やしても予測精度が上がるとは限らないと言う話ですが、これは、与えられたデータを表現する最適なモデルを探す、という話だと思います。 パラメータをいっぱい含んだモデルは過去のデータを再現することには優秀ですが、未来の予測には失敗します。より少ないパラメータで、よりよく過去のデータを再現する、というバランスが必要とされます。 こうした問題はAIC(赤池情報量基準、1974年)など、標準的な取扱法が知られているので、モデルを作る際にそれに従うならば、ほどよいバランスが保たれるはずです。 計算機性能が上がってこうした手法が手軽に利用できる現在と、当時とは状況が少し違っている気がします。

大規模経済モデルが当たらなくなったのは、構造変化があったため。具体的には、資本の国境を越えた移動が容易になって、ケインズ政策の効果が海外に拡散するようになったからだろう、とWSは想像しています。

     *

「適正なインフレ率」とはどれくらいか、ということの論拠についてのご解説、とても勉強になりました。それにしても「HMさんの巣」にはすごく博識の方がおられる!

政府と日銀の協定により
・日銀はコアコアCPI上昇率1%までは通貨発行益を行使し、1〜3%のレンジで金融調節
・政府は日銀の金融緩和の範囲内で財政出動を行う。

たしか、第二次大戦(朝鮮戦争だったかな)の後で米国がこれに似たことをやったはずです。サミュエルソン(当時、政府の仕事をしていた)の著作集で読みました。拡張しきった軍事産業、帰国してくる兵士の雇用、心配だらけだったそうですが、結局、その心配は杞憂で、黄金の60年代へ向かっていった、と。

この協定が実現すれば夢のような日本が実現しそうです。やってほしいですね。

     *

> これは均衡点を上に見出せれば拡大均衡、
> 下にしか見出せなければ縮小均衡という形で説明できないでしょうか

なるほど。現在の状態がどこにあるか、という話もしないといけないのですね。

WSが勉強した範囲では、なんらかの方法で長期トレンドを除去したあとのデータをDSGEモデルで解析する話が多かったので気付きませんでした。 WEB上をみていると、長期トレンドとそこからのずれとをDSGEモデルで同時に推定することも可能なようです。もう少し勉強してみます。

投稿: Wave of sound | 2009.03.29 01:11

WSさん、HMです。

モデル構築について巣で質問を振ったら、こんな答えが返ってきました。
http://www.ichigobbs.net/cgi/15bbs/economy/1430/43-

     *

考えてみると、第二次大戦(朝鮮戦争だったかな)の後の国際経済が何故動いていたか不思議です。米国は膨大な軍需が要らなくなり、復員兵の雇用を吸収しなくてはならなくなり、公的債務の対名目GDP比は二百数十%に達していました。米国の国内においては生産設備が過剰であり、これを西欧等の生産不足の国々への民需埋め合わせに振り向けても、それでも生産設備をフル稼働しきれたのだろうか?と。戦時中の婦人労働力などで膨大な軍需に応えられたのですから、復員兵の潜在雇用をどうやって吸収したのだろうか?と。

日本においても、レーガン減税に始まるグローバル・インバランスに伴なう慢性的な経常黒字と円高・ドル買い介入の構造がようやく止み、国内需要量<国内供給量という構造をどう均衡させてゆくか、ということが議論されています。

要するに、
①現行の国内供給量まで国内需要量を引き上げることはできる
という立場と、
②現行の国内需要量は節度あるレベルであり、国内供給量のうち余った分は米国の浪費に対応したものだ。現行の国内供給量まで国内需要量を引き上げようとする試みは不健全であり、豪華・奢侈の薦めであり、かの前川レポートの発想そのものだ。またバブルを引き起こしたいのか。米国の浪費に対応した、国内需要量を上回る生産設備は廃棄して、「縮小均衡」により国際収支を均衡させるべきだ
という意見の対立があるのです。

②は高度経済成長の提唱者でオイルショック後にゼロ成長・縮小均衡論に転じた下村治氏の意見で、影響力が政治党派の左右に及んでいるため、深刻です。ずっとデフレ続きで萎縮している国内需要が刺激され、アジア市場の需要が大きくなっても、それでも遊んでしまう(とある種の人々には見なされる)生産設備は廃棄しないといけないのか?私にはわかりません。

下村の著書2冊と評伝1冊
『日本経済成長論』(1962年初版、2009年再版 中公クラシックス)
『日本は悪くない―悪いのはアメリカだ―』(1987年初版、2009年再版 文春文庫)
『下村治―「日本経済学」の実践者(評伝・日本の経済思想)』(2008年初版 日本経済評論社)
に目を通す限り、下村は財政と産業連関分析は恐ろしいほど精緻な論証を行っているにもかかわらず、金融政策は二の次だったのではないか?という疑問があります。

ハロッド・ドーマーモデルを用いて高度経済成長の実現可能性を論証したのに、ドーマーの定理を知らない筈がないにも関わらず、増税による財政再建と縮小均衡を彼が訴えたのはなぜなのか?「円には資源の裏付けがない」云々という考えはケインズの金本位制離脱&管理通貨制度導入の訴えを真っ向から否定するものではないか?ケインジアンなのに、論敵だった都留重人や笠信太郎(花見酒の経済やらくたばれGNPやらの人です)の反ケインズ的思想へ退化してないか?と思う訳です。

25年前にレーガン減税とグローバル・インバランスこそが問題の根源である見抜いた洞察には拍手を送りたいですが、その解決策は増税・財政再建、縮小均衡だから国民は苦しみに耐えろ。というのは、余りにも反ケインズ主義的な暴論のような気がします。

もっとも、この辺は同じく前川レポートや日米構造協議に批判的だった小宮隆太郎氏が下村を批判していたと記憶しています。

     *

以上、私が終戦直後の経済復興に関するサミュエルソンの感想について興味があるのは、グローバル・インバランス解消後の日本経済をどう軟着陸させるかのヒントになりそうだからです。少子化や消費の限界なんていう話は1930年代に既に出ていた事で、今言われている日本経済衰退論はその繰り返しのような気がしてなりません。

投稿: HM | 2009.04.13 00:37

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