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地電流と地表の電位分布---断層帯の場合(4)

前回の記事では、電導度の小さい火成岩からなる山地の近くでは電位変化が大きくなることを説明しました。

今回の記事では、周囲より電導度の大きい断層帯内で起電力が発生すると、地表の電位変化が大きくなることを説明します。


■断層帯の内部で鉛直上向きの双極子的な起電力が生じる場合

水分に富んだ断層帯など周囲より電導度の大きな物質内で、鉛直上向きに双極子的な起電力が生じる場合を調べます。

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図1 (クリックで拡大)

図の矢印のところに何らかの理由で、上向きに電流を流す働き(双極子的な起電力)が生じているとしましょう。 断層帯の電導度は、他の部分の10倍、断層帯の幅は 2・L2 = 10km とします。

起電力のために、周囲の地中に地電流が流れ、地電流に沿った電位降下のために、地中の各点の電位は違ってきます。 もちろん、地表の電位も違ってきます。 その様子を図にしてみましょう。 電位を求める計算の考え方は前回と同様です。

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図2 (クリックで拡大)

図2は、図1と同様な鉛直断面内の電位の様子を、高さ方向に電位をとって描いたものです。 深さ60kmのところ(図の中央)に双極子的な起電力があり、双極子のすぐ上(奥)の電位は+∞、すぐ下(手前)の電位はー∞になっています。 電導度の大きな断層帯を地電流が流れるため、電位は、断層帯がない場合にくらべて大きくなっています。

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図3 (クリックで拡大)

図3は、地表面の電位を、高さ方向に電位をとって描いたものです。 地表面の電位は、断層帯のところで平べったくなっています。 電導度が大きいので、断層帯は周囲より完全導体に近く、内部での電位変化は小さくなります。

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図4 (クリックで拡大)

図4は、図1とは直交する鉛直断面(断層帯に沿った断面で、断層帯の境界面)内の電位の様子を、高さ方向に電位をとって描いたものです。 図2と図3にみられたような電位の折れ曲がりはみられません。

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図5 (クリックで拡大)

図5は、断層帯の幅 L2 によって、地表面の電位がどう変わるかを示したものです。 幅 L2 が狭いほど、地表面の電位は高くなります。 断層帯がない場合にくらべて、電位が3〜8倍にもなることがわかります。 もちろん、ここでは、断層帯内で発生する起電力の大きさは一定であると仮定しています。 実際には、幅の広い断層帯をもつケースでは大きな起電力が生じるかも知れませんが、ここではそうした要因は考慮していません。

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図6 (クリックで拡大)

図6は、双極子的な起電力が発生する点の深さHによって、地表面の電位がどう変わるかを示したものです。

以前の記事で、地下の電導度が一定のケースでは、地表の電位は、深さHの2乗に反比例して減少することを述べました。

上の図6を見ると、断層帯があるケースでは、地表の電位は、それよりも緩やかに減少することがわかります。 実際、30km < H < 50km の範囲のグラフをべき乗関数でフィットしてみると、上から順に、電位は深さHのおよそ1.58乗, 1.40乗, 1.26乗に反比例することがわかります。

つまり、断層帯内で起電力が発生するケースでは、起電力発生場所が深くても(=震源が深くても?)、地表面電位に影響が現れやすい、ということです。

これは、断層帯の電導度が周囲より大きいために、地電流が3次元的(空間的)に広がって流れるのではなく、おもに板状の断層帯の部分に2次元的(平面的)に流れるためです。

     *

以上で、断層帯のケースの考察を終わります。次回は、海底下で起電力が生じる場合の海水の影響を考える予定です。

では。

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