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5.点電荷や電気双極子の周囲の大気電場

これまでの考察では簡単のため、大気の電気伝導度σが上空へ行くほど増す事実を無視し、σを一定であると仮定してきました。

5回目の今日は、より現実的に、大気の電気伝導度σが地表からの高度zに対して指数関数的に増大する状況を考えます。具体的には

σ = σ0 exp(αz) ただし α-1 = 4km

となる状況で、地表からある高さ(主に2km)におかれた点電荷や電気双極子の周囲の電場がどうなるかについて考えます。

点電荷や電気双極子をここで考える理由は2つあります。

1つには、現実の大気中の電荷密度分布(正や負の大気イオンや帯電エアロゾル)も含めて、任意の電荷分布が作る電場は、正や負の点電荷が作る電場の重ね合わせで表すことができるから。

もう1つには、大気電場と空地電流の中に漂う「雲」(=大気中の、周囲より電気伝導度の小さな空気塊)が作り出す電場は、遠方では電気双極子が作る電場で近似できるからです。

   *

点電荷(高度2km)の周囲の電場

次の図は、正に帯電した点電荷が高度2kmにある場合の電場の様子を、点電荷を含む鉛直面内の等電位線で示したものです(*1)。

Pt_phi_p
図1

同じ場所に負に帯電した点電荷がある場合には次のようになります。

Pt_phi_n
図2

(点電荷の電気量の大きさは、いずれの場合も、点電荷がもし真空中にあったならば距離2kmの場所に大きさ25V/mの電場を作り出す値としています。)

点電荷がない場合には、地面の電位をゼロとして上空へ行くほど(=電離層に近づくほど)電位が高くなりますが、等電位線の間隔は上空へいくほど広がっています。つまり電場は上空へいくほど小さくなります。

点電荷がある場合には、点電荷の影響を受けて等電位線が曲がります。正の点電荷の場合には、点電荷の下側で電場が強まり、上側では電場は弱まります。負の点電荷の場合には強弱が逆になります。

また、高度5kmより上では等電位線があまり曲がっていないことが読みとれます。つまり、点電荷の影響は、上方向へはあまり伝わりません。これは上空へいくほど電気伝導度が大きいので大気イオンの移動がおきて点電荷が作る電場が打ち消されやすいからです。

こういった電場の特徴は、負の点電荷をおいた場合の電場の鉛直下向きの成分を濃淡図で示した次の図からも読みとれます。

Pt_ez
図3


電気双極子(高度2km)の周囲の電場

次の図は、上向き電気双極子が高度2kmにある場合の電場の様子を、双極子を含む鉛直面内の等電位線で示したものです(*1)。

Di_phi
図4

同じ状況で、電場の鉛直下向きの成分を濃淡図で示したのが次の図です。

Di_ez
図5

(双極子の電気双極モーメントの大きさは、双極子がもし真空中にあったならば、軸上で距離2kmの場所に大きさ25V/mの電場を作り出す値としています。)

双極子の上下で大気電場が弱められ、左右で強められることがわかります。

こうした特徴は、前回までの記事で見た、球形雲や回転だ円体雲の周囲の電場の特徴と同じです。

さきほどの点電荷の場合と比べると、双極子が大気電場に影響を与える範囲は、点電荷の場合よりやや狭いように見えます。

もしそうならば、地表の観測者にとって大気電場は、双極子が上空を通過するときにはするどく変動するが、点電荷が上空を通過するときにはゆったりと変動する、といった違いが見られるはずです。

この点をもう少し詳しく調べてみましょう。


地表での電場

次の図は、負に帯電した点電荷がある場合と、上向き電気双極子がある場合の、地表での大気電場の鉛直成分がそれぞれ、地表の場所(水平座標)によってどう変わるかを描いたものです。

Ground
図6

いずれの場合の電場も、遠方での値(100V/m)より小さくなっていますが、電気双極子の場合には点電荷の場合に比べて、電場が小さくなる領域が狭い範囲に集中していることがわかります。

これは、点電荷の電場は距離の2乗にほぼ反比例するのに対し、双極子の電場は距離の3乗にほぼ反比例するからです。


点電荷や電気双極子の高度と地表での電場

次の図は、点電荷の高度によって地表での電場の鉛直成分がどう変わるかを描いたものです。(4つのケースで、点電荷の電気量は同じ。)

Pt_ground
図7

点電荷の高度が低いほど、電場の変動が大きくなります。

次の図は、電気双極子の高度によって地表での電場の鉛直成分がどう変わるかを描いたものです。(4つのケースで、双極子の電気双極モーメントは同じ。)

Di_ground
図8

双極子の高度が低いほど、電場の変動が大きくなります。点電荷の場合にくらべて狭い範囲に電場変動が集中しています。


次回の予定

次回は、複数の点電荷や電気双極子が風に流されてゆらゆらと地表観測地点の上空を通過するときに、観測点での大気電場がどのような変動を示すのかを考えたいと思っています。

3回目の記事の冒頭で示した柿岡のグラフのような、大気電場変動が再現できるとよいのですが。 では。

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*1) 電気伝導度σが高度座標zの指数関数σ=σ0 eαzで与えられる場合には、連続の方程式(電荷保存則)を電位φについて厳密に解くことができます。以下のように簡単な変換で解ける方程式に帰着できます。

電流密度j=-σ∇φの発散をゼロとおくと、

2φ + α ∂zφ = 0

となりますが、ここで φ = e-αz/2ψ とおいてやると、場ψは

2ψ - α2/4 ψ = 0

を満たします。これは解ける方程式です。 たとえば極座標で変数分離すると、球対称解はA, Bを定数として

ψ = A/r e-αr/2 + B/r e+αr/2

とわかります。

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