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8.天気と地表大気電場変動

地表大気電場の時系列のグラフがギザギザであるのはなぜなのか。2つの仮説を立てました。

<電荷分布説>と<電導度分布説>です。

前回の記事では、2つの仮説のいずれが正しいのかをパワースペクトルで判定できるかもしれない、というアイデアについて理論的に調べました。次にやりたいのは実際の観測データの解析です。

茨城県柿岡にある地磁気観測所のページで公開されている地表大気電場(空中電気)のグラフ(分足データ)を分析する予定です。

よく知られていることですが、地表大気電場は局所的な気象の影響を大きく受けます。そこで今回の記事では予備的調査として、2010年の毎日の大気電場変動(1日の電場最大値と最小値)と、その日の茨城県の天気との関係を調べます。

結論からいうと、おおむね、穏やかな晴れた日の大気電場変動は小さく、雨の日の大気電場変動は大きくなります。でも、例外的な日もあります。

晴れているのに大気電場変動が大きい、そんな例外的な日をピックアップして短時間の雷雨の有無などをざっと検討してみました。たいていは何らかの説明がつくのですが、どう考えても異常データだ、という日がやはり出てきます。記事の最後に触れますが、晴れているのに、正午から午後3時にかけて3回にわたって、一瞬だけスパイク状の大きな負の大気電場変動がみられた日(2010年2月6日)には、最初のスパイクの約2時間後に千島列島でM6.1の地震があった、という興味深い事象(偶然?)も見つかりました。

パワースペクトルの話からずいぶん脱線してしまいましたが、予備的調査で見つかったこの興味深い事象は、パワースペクトルの話に切りがついたら、ちゃんと統計的に調べてご報告します。

   *

降水の有無と地表大気電場変動

次に示す図は、降水の有無で区別して、茨城県柿岡における2010年(1/1〜12/31)の毎日の地表大気電場変動の様子をプロットしたものです。

Fig_rain_2
図1

横軸には1日の地表大気電場(下向きを正)の最大値 Emax をとっています。たて軸には変動比 ΔE/Emax をとっています。ここで、ΔE ≡ Emax - Emin は、一日の地表大気電場の変動幅です。

たとえば1日の地表大気電場の最大値が 100V/m、最小値が 50V/m ならば、ΔE=50V/m なので変動比 ΔE/Emax は0.50となります。 また、最大値が 100V/m、最小値が -100V/m ならば、ΔE=200V/m なので変動比は2.0となります。

おおむね変動比が1未満であれば、大気電場変動は小さい。変動比が1を超えるならば、電場最小値 Emin はマイナスである。さらに変動比が2を超えるならば、マイナスであるEminの絶対値のほうがEmaxより大きい、ということになります。

降水については、茨城県土浦(アメダス観測点)における日降水量が0.1mm以上の場合を降水あり、そうでない場合を降水なし、としています。

(今回の分析では簡単のため、大気電場変動はUTCの1日でみており、降水の有無は日本時間でみています。両者には9時間のずれがあります。)

図1をみると、雨の日には、地表大気電場の最大値も日変動比も大きくなりやすいことがわかります。その様子を度数分布で示したのが次の図2です。

Fig_rain_analysis_2
図2

一番右の「無条件」と書かれた棒をみると、1年365日(欠測日をのぞいて361日)のうち降水のある日は113日、つまり、約3分の1弱であることがわかります。

一方、地表電場の日変動比 ΔE/Emax が2以上である日に限定すると、降水のある日の割合は約3分の2となっています。(Emaxが300V/mより大きい場合でも小さい場合でも。)


日照時間と地表大気電場変動

次に示す図は、日照時間比率で区別して、2010年の毎日の地表大気電場変動の様子をプロットしたものです。

Fig_sun_2
図3

横軸とたて軸は図1と同じです。

日照時間比率とは、その季節に期待できる最大の日照時間に対する、その日の実際の日照時間の比率です。期待できる最大の日照時間は、冬には短く夏には長くなります。たとえば日照時間比率が100%であれば、日の出から日の入りまでフルに日照があったということですし、日照時間比率が0%ならば、ずっと雲に覆われていて全く日が差さなかったということです。

日照時間比率が100%に近ければ、その日の日中はほぼ快晴であったと考えてよいでしょう。ただし、夜間に空が雲で覆われたり雨が降っていたりしても、この日照時間比率には影響しないことに注意する必要があります。

図3をみると、日照時間比率が90%超の日(=日中よく晴れた日)はおおむね、地表大気電場の最大値 Emax は300V/m以下と小さく、変動比 ΔE/Emax も2未満で小さいことがわかります。

また、変動比 ΔE/Emax が大きい日はたいてい、日照時間比率が小さい(=曇っていたり雨である)ことがわかります。


平均風速と地表大気電場変動

次に示す図は、平均風速(北向き成分)で区別して、2010年の毎日の地表大気電場変動の様子をプロットしたものです。

Fig_v_north_3
図4

平均風速の北向き成分は簡便に、アメダス土浦観測点の日平均風速とその日の最頻風向(16方位)から計算しました。

図4をみると、北風(=南向きの風)が強いときには日変動比 ΔE/Emax が大きくなりやすいことがわかります。これは北風のときには天気が悪い場合が多いからかも知れません。

次に示す図5は、同様なプロットを平均風速の東向き成分について行ったものです。

Fig_v_east_2
図5

東風か西風かということは、地表大気電場の最大値や日変動比にそれほど影響しないように見えます。


大気電場が静穏でよく晴れた日の特徴

大気電場が静穏で、かつ、よく晴れた日を選び出して、その日の天候(気圧配置など)を調べてみましょう。

2010年のデータから次の3つの条件をともに満たす日を選び出します。
・大気電場の日変動比 ΔE/Emax が0.75未満
・降水がない
・日照時間比率が90%を超える

すると次の6日が取り出されました。
2010/1/1
2010/1/19
2010/6/1
2010/10/11
2010/12/4
2010/12/26

リンク先の気象庁のページで天気図や風速を確認すると、いずれも冬型が少しゆるんだ穏やかな晴天日や、移動性高気圧が日本海に進んできた穏やかな晴天日であることがわかります。


よく晴れていても、大気電場が大きく変動する日はあるだろうか

では、よく晴れているにも関わらず、地表大気電場が大きく変動する日はあるのでしょうか。

それを調べるため、2010年のデータから次の3つの条件をともに満たす日を選び出します。
・大気電場の日変動比 ΔE/Emax が2.0を超える
・降水がない
・日照時間比率が90%を超える

すると次の3日が取り出されました。
2010/2/6
2010/3/20
2010/5/21

このうち、あとの2つは、日中ではなく夜間に空が雲に覆われています。3/20のケースでは西から低気圧が接近しており、夜半から雲がかかっています。また、5/21のケースでは夜明け前に低気圧が通過して雲がかかっています。いずれのケースでも、これらは日没後あるいは日の出前のことで日照時間比率には現れていません。「よく晴れている」という条件を実は満たしていなかったわけです。

しかし、最初の2/6のケースは、どうにも説明がつきません。冬型の気圧配置のなか、三陸沖を小さな低気圧が南進するという奇妙な天気の日ですが、茨城県を背の高い雲が覆った気配はありません。

ところが、この日の大気電場には、次のようにUTC3:00から6:00まで(日本時間の正午から午後3時まで)3回にわたって特異なスパイク状の負変動がみられます。

Kakioka20100206_2
図6

そして興味深いことに、この日(2010年2月6日)の午後1時44分には千島列島でM6.1の地震が発生しています。1回目のスパイクの約2時間後です。さらに、地震発生時刻は、大気電場変動の2回目のスパイクと一致しているように見えます。

このあたりの興味深い偶然?についてはいずれ統計的にちゃんと調べるつもりです。次回はまず、静穏日のパワースペクトルの課題を片付けます。では。

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