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13.地表大気電場に生じるスパイクと地震活動の関係(続き)

前回の記事の記事では、2010年1年間の地表大気電場データ(柿岡)と日本付近の地震活動に関係があるかどうかを調べました。 そして、柿岡に影響がある地震の前後に、大気電場の急激な変動(スパイク)の頻度が以下のグラフで示されるような変化を示すのではないか、という仮説を提示しました。

Beq_aeq_image
図0(前回の記事の図5、再掲)

ある程度の規模以上の地震の場合には、地震発生の10日前ごろに、大気電場に上方スパイクが増えるとともに、下方スパイクが減少する。それが通常の頻度に戻るころに地震が発生する、というわけです。また、地震発生後には上方スパイクと下方スパイクの両方が通常の頻度よりやや増える、という仮説も述べました。

ただし、明確な結論として述べるにはデータ数が足りませんでした。 今回はデータ期間を4年間(2007年〜2010年)に拡大して、この仮説が成り立っているかどうかを調べます。(結論をいうとほとんど成り立っていませんでした。もともと危険率が高かった主張もあり、また、余震活動のような地震活動の時間相関のために危険率を過小評価していたことも原因だと思います。)今回、新たに得られた関係は、ちょっと興味深くてF T Freund博士の説と整合的であるように思えます。

なお、ここで使用しているいくつかの用語
・発生した地震の柿岡へのインパクト
・地表大気電場の規格化電場
・地表大気電場の上方スパイクとその強度
・地表大気電場の下方スパイクとその強度
の定義については、前回の記事をごらんください。

 

4年間(2007年〜2010年)のデータの概観

次の図は、4年間に発生した地震と大気電場のスパイクを概観したものです。

Na_spikes_impacts
図1

たて軸には発生の年月日を、横軸には1日における発生の時刻(日本時間)をとってあります。

赤色の雪印(*)は発生した地震を示します。地震のインパクトの大きさを、印の大きさで区別しています。

青色の印は大気電場に生じた上方スパイクを、緑色の印は下方スパイクを示します。スパイク強度を印の大きさで区別しています。

茶色の点々は大気電場の欠測値を示します。4年間を通じて午前10時ごろに欠測値が多いのは、日常的に装置の点検やリセットが行われているからではないか、と想像します。

ぱっと見た印象では、欠測値の連続を示す横線のあとで、地震が発生することが多いように見えます。これは興味深いことですが、欠測の原因がWSにはわからないので今回は解析の対象外です。

大気電場の上方スパイクも下方スパイクも、一日の特定の時間に多く発生するとか、逆に少ないといった明確な特徴はみられないようです。あえて述べるなら、未明(午前3時〜6時)には下方スパイクの発生がやや少ないように見えます。


次の図は、横軸に発生日時を、たて軸にスパイク強度または地震のインパクトをとって、4年間に発生したスパイクや地震を示したものです。

Spikes_and_impacts_0
図2

これだけでは地震とスパイクの関係が見にくいので30日間の和をとってみます。
次の図は、過去30日間のスパイク強度の和または地震インパクトの和の推移を示したものです。

Spikes_and_impacts_30
図3

前回の記事で仮説として提示したように、地震前に上方スパイクが増えている、あるいは、下方スパイクが減っている、といった読み取りが可能でしょうか。

ちゃんと統計をとって調べてみます。

 

地震発生の前に大気電場に生じるスパイクの頻度に変化はあるか

次の図は、地震発生の前後の一定期間内に大気電場に生じたスパイクの強度和平均値を、発生した地震のインパクトとスパイクの種類別に示したものです。

Ba_impacts_spikes
図4

たて軸にとってあるのは、スパイク強度和平均値の通常時の平均値からのずれです。誤差棒は、それぞれのスパイク強度和平均値に偶然に生じ得るゆらぎの大きさ(±1σ)を示します。

図4で見てもよいのですが、スパイク強度和平均値の通常時からのずれが、ゆらぎと比較してどの程度意味があるずれなのか、がわかりやすいように、ずれをゆらぎ(σ)で割って規格化して示したのが次の図です。

Ba_impacts_spikes_nsig
図5

図4と図5から以下のような特徴が読み取れます。(●は危険率5%以内、・は同5〜10%の主張です。)
地震のインパクトの大きさで分類して示します。

<影響が大きい地震(インパクト1.0以上)の発生前後>
[上方スパイクについて]
●地震発生の10日後〜30日後の期間に、上方スパイク強度和が0.8増加(*)
[下方スパイクについて]
・地震発生の90日前〜30日前の期間に、下方スパイク強度和が0.3増加
・地震発生の10日後〜30日後の期間に、下方スパイク強度和が0.6増加

<影響がやや大きい地震(インパクト0.4〜1.0)の発生前後>
[上方スパイクについて]
・地震発生の10日後〜30日後の期間に、上方スパイク強度和が0.4減少
[下方スパイクについて]
 明確な特徴なし

<影響が中程度の地震(インパクト0.25〜0.4)の発生前後>
[上方スパイクについて]
 明確な特徴なし
[下方スパイクについて]
 明確な特徴なし

<影響が小さい地震(インパクト0.1〜0.25)の発生前後>
[上方スパイクについて]
・地震発生の30日前〜10日前の期間に、上方スパイク強度和が0.2減少
●地震発生の3日後〜10日後の期間に、上方スパイク強度和が0.3減少
・地震発生の10日後〜30日後の期間に、上方スパイク強度和が0.1減少
[下方スパイクについて]
●地震発生の3日前〜0日前の期間に、下方スパイク強度和が0.5増加
●地震発生の10日後〜30日後の期間に、下方スパイク強度和が0.2増加
●地震発生の30日後〜90日後の期間に、下方スパイク強度和が0.2増加

注*) 本来は「上方スパイク強度和期待値(30日間換算)が平常時より0.8以上増加」と書くべきですが、わずらわしいので省略した表現にしています。

こうした特徴のうち、地震発生の短期予測に使えるのは地震発生前のスパイクの状況です。

インパクトが0.25〜1.0の、影響が中程度の地震については残念ながら、大気電場のスパイクに地震前に明確な特徴は見てとれません。

インパクトが1.0以上の影響が大きい地震と、インパクトが0.1〜0.25の影響が小さい地震については、若干の特徴が見てとれます。すなわち、

影響が大きい地震の発生90〜30日前の期間に下方スパイクの強度和が増加します。また、
影響が小さい地震の発生30日前〜10日前の期間に上方スパイクの強度和が減少し、かつ、同3日前〜0日前の期間に下方スパイクの強度和が増加します。

これらの特徴は、前回の記事で示した「地震前後のスパイク強度和の推移(イメージ)」を、地震のインパクトと期間について精密化したものになっています。(データ数が4倍に増えて、地震前の下方スパイクの推移についてはかなり異なった結論となりました。)

また、地震発生の短期予測には使えませんが、地震発生後のスパイク強度に統計的に有意な変化がみられます。すなわち、

影響が大きい地震の発生後には上方スパイクの強度和と下方スパイクの強度和がともに増加します。それとは対照的に
影響が小さい地震の発生後には上方スパイク強度和は減少しますが下方スパイク強度和は増加します(*)。

注*) 大気電場の上方スパイクとは、(ふだんは鉛直下向きの大気電場が)急に強まることです。また、下方スパイクとは、鉛直下向きの大気電場が急に弱まること、あるいは、急に逆転して鉛直上向きになったり、上向きに強まることです。

以上をまとめて、地震発生前後の大気電場スパイクの推移のイメージを図にすると次のようになります。

Beq_aeq_image_new
図6

これらの特徴が何を意味しているのかは、(可能ならば)今後の記事で考察してみたいと思います。現地点で考えていることをちょっと書きます。

下方スパイクは、地表大気電場が急に小さくなる(あるいは鉛直上向きになる)現象です。そのような現象は、(i)地表に正電荷が現れるか、または、(ii)地表付近の空気(接地気層)の電気伝導度が急に大きくなるときに生じると考えられます。

現地点でのWSの想像では、(i)は、地下の(未来の)震源領域で生じた正に帯電したホール(=電子がない状態)が移動して地表に現れるために、(ii)は、そうしたホールが地表付近の空気中の中性酸素分子から電子をはぎとり、正の酸素分子イオン(O2+)が地表付近で豊富になるために、起きる現象なのかも知れません。

強い地震の前に下方スパイクが増加し、地震後に上方スパイクが増加する、という今回の結果は、先日の記事で紹介したF T Freund博士の室内岩石圧縮実験の結果(圧縮時に岩石表面付近の空気が正に帯電し、加重を取り去ると負に帯電する)とも整合的だと思います。

さて、上では地震発生前後の大気電場スパイクの状況を調べたのですが、次に、大気電場スパイク発生前後の地震活動の状況を検討します。

 

大気電場にスパイクが生じた後で地震活動に変化はあるか

次の図は、大気電場にスパイクが生じたあとの地震活動の活発さ(期間内のインパクトの総和の通常時からのずれ)の推移を、スパイクの種類別に示したものです。

Ba_spikes_impacts
図7

図7において、地震活動の活発さを、偶然に生じ得るゆらぎの大きさ(1σ)で割って、規格化して示したのが次の図8です。

Ba_spikes_impacts_nsig
図8

図7と図8から次のことが読み取れます。(●は危険率5%以内、・は同5〜10%の主張です。)
スパイクの種類と強度で分類して示します。

[強い上方スパイク(規格化電場3.3以上)について]
 明確な特徴なし
[やや強い上方スパイク(規格化電場3.0〜3.3)について]
 明確な特徴なし
[中程度の上方スパイク(規格化電場2.7〜3.0)について]
 明確な特徴なし

[弱い上方スパイク(規格化電場2.4〜2.7)について]
●上方スパイク発生の10日前〜3日前の期間に、地震インパクト和が10%減少
●上方スパイク発生の0日後〜3日後の期間に、地震インパクト和が20%減少

[強い下方スパイク(規格化電場-3.3以下)について]
 明確な特徴なし

[やや強い下方スパイク(規格化電場-3.3〜-3.0)について]
●下方スパイク発生の90日前〜30日前の期間に、地震インパクト和が10%増加
●下方スパイク発生の30日前〜10日前の期間に、地震インパクト和が20%増加
・下方スパイク発生の10日前〜3日前の期間に、地震インパクト和が30%増加

[中程度の下方スパイク(規格化電場-3.0〜-2.7)について]
・下方スパイク発生の30日前〜10日前の期間に、地震インパクト和が10%増加
・下方スパイク発生の10日後〜30日後の期間に、地震インパクト和が5%減少

[弱い下方スパイク(規格化電場-2.7〜-2.4)について]
●下方スパイク発生の10日前〜3日前の期間に、地震インパクト和が15%増加


おおむね、下方スパイクの前には地震活動が活発であること。また、下方スパイクの10日後〜30日後は地震活動が低調であることがわかります。 また、弱い上方スパイクの前後には地震活動が低調であることもわかります。

これらの結果は、図6のイメージと矛盾はしませんが、現地点ではすっきりと整理された形でWSの頭の中に収まりません。きれいな相関関係を得るには、余震活動の影響を取り除くことが必要なのかも知れません。今後の検討課題です。では。

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コメント

拝啓WS様
気柱共鳴について学習をしていた中で拝読の機会に恵まれまして「地震予測」に関する記述をお見かけしたので私の活動を少しご報告させていただきます。
2011/3/11の東日本大震災の前日の経験を元に興味をもって低周波音を頼りに地震の直前予兆をとらえる活動をしています。
http://www.ingenious-farm.jp/quake/
ここに私が自作したヘルムホルツ共鳴応用機器の記述をしています。
私はこれにソフトウェアオシロスコープを接続して予兆低周波音が共鳴した唸りの波形観察を行っています。観察地点は神奈川県茅ヶ崎市ですが、現在東北で頻発している余震活動が手に取るようにわかります。もちろん科学的予測という範疇にはいりM4クラスなら10分前には発震予測ができます。工業的所有権未出願のオープンライセンスですのでご興味のある方は是非ご自作なさってみてください。

投稿: いわさか かずひろ | 2011.10.01 00:27

いわさかかずひろ様 「M4クラスなら10分前には発震予測ができる」のであれば、すごいことです。次に予兆低周波音を検出されたら、ぜひ事前に、当ブログのコメント欄に書き込んで知らせてください。

投稿: Wave of sound | 2011.10.04 14:21

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