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地震波速度と最頻発生時刻の分布 (1)4つの地域別 -T5

小さな地震は真夜中に発生しやすいのですが、地域や深さによっては最頻発生時刻が真夜中の少し前であったり後であったりする。 真夜中より後になる領域は、どうも震源域の直下にあるようだ、ということを前回の記事で報告しました。

一方、従来より、震源域直下の地殻あるいは上部マントルには、地震波の速度が遅くなる領域(流体を含む?)がしばしば存在することが知られています。

そこで、最頻発生時刻の分布と、地震波速度の分布を直接くらべてみるのは興味深いことです。 今回と次回の記事でその比較を行います。

結論から述べますと、両者にはやはり関係があるようです。

ただし、当初考えていた、地震波速度の遅い領域で最頻発生時刻が真夜中より後になる、というような単純な関係ではありません。 むしろ、地震波速度の遅い領域と速い領域の境界部分で、最頻発生時刻が真夜中から大きくずれる、という関係があることがわかりました。

 

解析の対象地域と期間

今回の記事で解析する地域4つ(北海道、東北、九州、小笠原諸島)と期間(2006年12月〜2011年1月)は前回の記事と同じです。

地震データは気象庁一元化震源、地震波速度のデータは防災科研(2011)による日本列島下の3次元地震波速度構造モデル(海域拡大版)を利用させていただきました。

対象地域を記した地図を再掲します。

Hinet_mod
図1

では、地域別に地震波速度と最頻発生時刻(Local Time)との関係を見ていきます。

まずは北海道地域から。

 

北海道地域の地震波速度と最頻発生時刻

北海道地域の地震波速度分布(南南東-北北西方向の鉛直断面への射影)は図2のようになっています。

Ho_vel
図2

これを、前回の記事で求めた最頻発生時刻分布(図3)と比べます。

Mh_ho
図3

最頻発生時刻が真夜中より後の領域(図3で赤色に着色)が、図2でどこに該当するかを見てみます。

たとえば、図3で北緯45度、深さ50km付近の横長領域が赤色になっていますが、この領域は図2では、S波速度の低下率がプラスの領域(赤)とマイナスの領域(青)の境界付近にあたっています。

他の、最頻発生時刻が真夜中より後の領域(図3で3箇所ほど確認できる赤色の領域)も、S波速度(あるいはP波速度)の低下率がプラスの領域(赤)とマイナスの領域(青)の境界付近にあります。

一般に、P波はたて波(疎密波)ですから、P波の速度が低下するということは、密度のわりには圧縮伸長に対して「やわらかい」物質があるということです。

また、S波は横波ですから、S波の速度が低下するということは、密度のわりには横ずれに対する復元力にとぼしい「やわらかい」物質があるということです。 固体より液体に近いものですね。

図2と図3から、「やわらかい」物質と「かたい」物質の境界付近で、最頻発生時刻が真夜中から大きくずれる(たいてい、真夜中より後にずれる)、ということが読み取れます。

次に東北地域を見ます。

 

東北地域の地震波速度と最頻発生時刻

東北地域の地震波速度分布(西北西-東南東方向の鉛直断面への射影)は図4のようになっています。

To_vel
図4

これを、前回の記事で求めた最頻発生時刻分布(図5)と比べます。

Mh_to
図5

やはり、S波速度(あるいはP波速度)の低下率がプラスの領域(赤)とマイナスの領域(青)の境界付近、つまり、「やわらかい」物質と「かたい」物質の境界付近で、最頻発生時刻が真夜中から大きくずれる傾向が読み取れます。

次に、九州地域を見ます。

 

九州地域の地震波速度と最頻発生時刻

九州地域の地震波速度分布(南東-北西方向の鉛直断面への射影)は図6のようになっています。

Ky_vel
図6

これを、前回の記事で求めた最頻発生時刻分布(図7)と比べます。

Mh_ky_2
図7

やはり、「やわらかい」物質と「かたい」物質の境界付近で、最頻発生時刻が真夜中から大きくずれる傾向が読み取れます。

最後に、小笠原諸島地域を見ます。

 

小笠原諸島地域の地震波速度と最頻発生時刻

小笠原諸島地域の地震波速度分布(東西方向の鉛直断面への射影)は図8のようになっています。

Og_vel
図8

これを、前回の記事で求めた最頻発生時刻分布(図9)と比べます。

Mh_og
図9

深さ100kmより浅い領域では同様な傾向が見られます。 つまり、P波速度低下率の正領域と負領域の境界付近でしばしば、最頻発生時刻が真夜中から大きくずれています。

深さ100kmより深い領域では、S波速度低下率と最頻発生時刻に同様な傾向がある可能性があります。 しかし(おそらく観測点数が少ないために)S波速度の推定精度が粗く、十分な読み取りができません。

   *

今回は以上です。 次回は対象地域を拡大して、日本周辺の広域で、震源の深さ別に、地震波速度と最頻発生時刻の関係を調べる予定です。 では。

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