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海陸分布と地震発生時刻に関係あり---太平洋は巨大なシールド -T8

<今回の内容>
・大陸の東岸では真夜中すぎに、西岸では真夜中前に地震が発生しやすい
・地球のどこでも、太平洋が昼間のときに地震が発生しやすい
・グローバルな地表電流は地震発生を抑制するのではないか?
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前回の記事からずいぶんと時間が経ってしまいました。1日のうちで地震の起こりやすい時間帯について新たな事実に気づいたので報告します。

いきなり結論から述べますが、新たな事実というものを図にしますと次のようになります。根拠となったデータについてはあとで詳しく説明します。

Fig1_2
図1 (クリックで拡大)

まず、地球のどこでも昼間より夜間の方が2割ほど地震発生数が多いわけですが、これについてはすでに以前の記事でも指摘していました。

今回新たに気づいた事実は2つあります。

1つは、大きな大陸の東岸と西岸で地震の発生しやすい時刻が違うということです。東岸では真夜中より後に地震発生数のピークがきますが、西岸では真夜中より前にピークがくるのです。

もう1つは、最大の海洋である太平洋が昼間になっている時間帯には、地球のどこでも地震が発生しやすいということです。

   *

地震発生数がこのような日変化を示すのはなぜなのか。

いろいろ考えてWSがたどりついた(作業)仮説はこうです : <グローバルな地表電流は地震発生を抑制する>。

詳しくはあとで述べますが、ここではざっと全体のストーリーをまずお話しします。

地球表面には、大規模なうず電流(「グローバルな地表電流」と呼びます)が流れています。これは、太陽光が原因で上空110km付近の電離層に流れる大規模なうず電流に対応する形で、地表面に流れる電流です。

(昼間の電離層に流れるうず電流についてはこちらのNASAのページでアニメーションをみることができます。ぜひご覧になってイメージをつかんでください。)

このうず電流の位置は太陽に対して固定されているので、日変化を示します。地表電流は、昼間の地域で強く、夜間の地域で弱くなります。

さて <作業仮説:グローバルな地表電流は地震発生を抑制する> を仮定してみます。

するとまず、電流が強い昼間の地域で地震発生が少なく、逆に、電流の弱い夜間の地域で地震発生が多くなるとして、昼夜で地震発生数が異なることが説明できます。

次に、「太平洋が昼間になっている時間帯には、地球のどこでも地震が発生しやすい」のはどうしてでしょうか。実はこれも上の作業仮説で説明がつきます。

海水は、塩分を含むので非常に良い伝導体です。一般に陸地の岩石にくらべて1000倍ほどの電気伝導度を示します。太平洋は非常に大きな海洋なので、太平洋が昼間の時間帯には、太陽光を受けた電離層起源の変動磁場の影響から、地球全体をシールドすることになります。太平洋の海水という良導体の大きなシールドの裏側に、地球全体がすっぽりと入ってしまうわけです。

Fig2_2
図2 (クリックで拡大)

そのため、太平洋が昼間となる時間帯には、この変動磁場が地表面に誘導する電流である「グローバルな地表電流」も弱くなり、地震発生の抑制効果が弱まる(∵上記の作業仮説)ので、地球全体で地震発生が多くなるというわけです。

最後に、「大きな大陸の東岸では地震発生が真夜中より後で多くなり、西岸では真夜中より前に多くなる」のはどうしてでしょうか。これも上の仮説で説明がつきます。太平洋のモデルを少し小さくして局所的に適用すればよいのです。

大きな大陸の東岸ということは、その東側には海洋が広がっています。たとえば、大陸の東岸が真夜中過ぎから明け方を迎える時刻には、東側の海洋(とその上空の電離層)はお昼を迎えています。このとき、東側の海洋は、大陸東岸の岩石にとって、昼間領域にある電離層からの変動磁場の影響を遮断するシールドになっています。地表電流はそのぶん弱くなり、地震発生は増えることでしょう。

同様にして、大きな大陸の西岸では夕方から真夜中にかけての時間帯に、西側に広がる海洋がシールドの役目をし、地震発生が増えることでしょう。

このように、新たに気づいた2つの観測事実も、夜間に地震発生が多いという従来からの観測事実も、いずれも <作業仮説:グローバルな地表電流は地震発生を抑制する> によって説明できます。

では、この<作業仮説>が成り立つ(ように見える)のはどうしてでしょうか。これについてもWSにアイデアがありますが、ちょっと筆が先走りしすぎてしまったようです。まず上で述べた事実をデータでちゃんと裏付けてから、記事をあらためてお話することにします。

(ちょっとだけ書きますと、岩石は地下深くでP型半導体として振る舞っており、アクセプター準位に励起した局在電子と、かなり自由に動いているホールとの再結合の際に放出されるエネルギーが地震発生過程に関係している。ホールはふだん、アクセプター準位に励起した電子の近く(10原子以内)にいるが、グローバルな地表電流が流れるような電場がかかった状況では遠くまで離れてしまい、再結合しにくくなる、というアイデアです。ただし、電流がつねに再結合を抑制するわけではなく、周囲に電子の供給源が接してるばあいには逆に促進することもありえると思います。)

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以上が、今回あらたに気づいた事実と、それに対する説明の概略です。これからデータをみながら詳しく説明します。

まず、「地球のどこでも、太平洋が昼間のときに地震が発生しやすい」からです。次の図を見てください。

Freq_local_utc
図3 (クリックで拡大)

これは過去11年間に世界で発生したM2.0以上の地震(約25万個)の発生時刻の統計です。

以前の記事ですでに一度みたものですが、そのときには地方時(Local Time)での発生時刻にすっかり気をとられておりました。 世界時(UTC)(=東経0度の場所の地方時=日本標準時マイナス9時間)での発生時刻にも明瞭な規則性がみられることを見落としていたのです。

図3から明らかなように、世界時(UTC)で22時〜1時ごろに地球全体で地震発生が多く、12時ごろに少ないことがわかります。地震発生が多いのはちょうど太平洋が昼間の時刻です。

太平洋が昼間の時刻には、太平洋の広大な海水が、昼間の電離層起源の電磁場から地球全体を保護するシールドの役目をするので、グローバルな地表電流が減り、地震発生が少なくなる、というのがWSの仮説です。

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次に、「大陸の東岸では真夜中すぎに、西岸では真夜中前に地震が発生しやすい」という事実をデータで確認します。

以前にお示しした最頻発生時刻の分布図でイメージをつかんだあとで、統計数字でも確かめてみます。

次の図4も、以前の記事ですでに一度みたものですが、過去11年間に深さ30km〜40kmで発生した地震について地域別の地震最頻発生時刻を色分けして示したものです。データのソースは図3と同じです。

Lon_lat_maxhour30_40
図4 (クリックで拡大)

図のたて軸は緯度、よこ軸は経度です(目盛の単位が間違っていました。正しくは[degree]です)。欧州・アフリカあたりを図の中央とする世界地図になっています。

ユーラシア大陸や中南米大陸の、東岸は赤色に、西岸は緑から青色に着色されています。つまり、大陸の東岸では真夜中より後に、西岸では真夜中より前に地震が発生しやすいことが読みとれます。 こうした事実は <作業仮説> で説明がつきます。

では、震源の深さが30km未満の地震についてはどうでしょうか。

Lon_lat_maxhour30
図5 (クリックで拡大)

図5がそれです。

浅いところでは地質構造、したがって電気伝導度の構造が複雑なためでしょうか。いろんな色が入り組んでいます。が、全体としてみれば、大陸の東岸は赤色が多く、西岸は緑〜青色が多いように見えます。(このあと、ちゃんと数字で裏付けます)。

いま仮に、<作業仮説:グローバルな地表電流は地震発生を抑制する> が正しいとしてみましょう。 地殻の電気伝導度の分布と昼間の電離層の電流分布を与えれば、グローバルな地殻電流(や海面電流)の強さを各時刻、各地域で(原理的には)計算できます。したがって、図4や図5の、地震最頻発生時刻の分布図を再現できるはずです。いずれできたらいいなあ、と思っています。

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次に、いま図でみたことを数字で確かめてみます。

図6は過去11年間に世界で発生したM2.0以上の地震について、経度幅10度の経度帯別に地震最頻発生時刻(地方時)を求めたものです。

Maxhour1
図6 (クリックで拡大)

基本的には夜間に地震が発生しやすいこと。ただし、真夜中より前に最頻発生時刻がくる経度帯もあれば、後に最頻発生時刻がくる経度帯もあることがわかります。

これを地表の海陸分布と比較してみましょう。

図7は、地球表面を経度幅10度の経度帯にわけ、各帯ごとの陸地面積の割合を示したものです。たとえば陸が3、海が7の割合ならば陸地面積の割合は30%です。

Ratio1
図7 地球表面の経度帯別の海陸比率(クリックで拡大)

図7と図6を比べてみてください。大陸の西岸(図7で青色の棒が東へいくほど長くなる場所)では最頻発生時刻が真夜中前になり、大陸の東岸(青色の棒が東へいくほど短くなる場所)では真夜中後になることが読みとれます。

これをはっきりとみるため、図7で青色の棒の長さの差分(赤色の棒)をとってみましょう。

差分(赤色の棒)は、隣り合う陸地面積比率の差を表し、東へ行くほど陸地面積比率が増える場合にはプラス、減る場合にはマイナスになります。つまり、差分がプラスの領域は大陸の西岸、マイナスの領域は東岸に対応しています。

図8は、上記の差分をよこ軸に、地震最頻発生時刻をたて軸にとって、経度帯ごとに両者の対応関係を示したものです。

Raito_diff_maxhour1
図8 (クリックで拡大)

差分がプラス(西岸)だと最頻発生時刻が真夜中前になり、差分がマイナス(東岸)だと真夜中後になることがはっきりと読みとれます。

   *

今回は以上です。ではまた。


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