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大地震の前には地震活動の24時間周期の位相がずれる(北アメリカ西部) -T10

明けましておめでとうございます。

今年のブログは、「大地震の震源の周辺では、地震の数年前から、微小地震発生数にみられる24時間周期が乱れる」という発見(?)の話で始めたいと思います。

昨年末の記事で、M7.5以上の大地震の震源の周辺では、地震の数年前から、どうも微小地震発生数にみられる24時間周期の振幅が大きくなるようだ、と述べました。

この年末年始に、もう少し規模の小さい地震(M7.0〜7.5)についても調べてみました。すると、24時間周期の<振幅>については変化をみにくいのですが(*1)、<位相>(=1日24時間のうちで微小地震発生数が最多になる時刻や最少となる時刻)は明瞭な変化を示すことがわかりました。

今回の記事では、この、<位相>にみられる変化、についてお話しします。

(なお、この記事での「微小地震」とはM0.0以上の地震のことです。大きな地震も含んでいますが、小さな地震のほうが数が圧倒的に多いので、発生数のほとんどをごく小さな地震が占めることになります。)

   *

次の図1は、2005年6月にサンフランシスコ北西沖の深さ16kmで発生したM7.2という、やや大きな地震の前後で、周辺(=震源を中心とする半径1200kmの円の内側)の微小地震発生数にみられた24時間周期の位相の推移を示しています。

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図1(クリックで拡大)

よこ軸にはM7.2地震発生からの日数をとってあります。中央の赤線がM7.2地震発生日で、それより左側が地震前、右側が地震後です。グラフの左端はM7.2地震のちょうど5年前、右端は5年後にあたります。

たて軸には、微小地震が1日のうちでもっとも多く発生した時刻(最頻発生時刻)をとってあります。いずれの点もそれまでの1年間の地震データから計算しています。

ふつうは0時前後、つまり真夜中に微小地震の発生が多いのです。しかし図1からわかるように、M7.2地震の前には、その時刻が乱れています。

M7.2地震の2年半ほど前には、最頻発生時刻は真夜中の0時前後でした。それがM7.2地震の2年前から1年前にかけては-6時、つまり夕方18時ごろにずれこみました。その後、最頻発生時刻が徐々に真夜中に向かって戻っていきます。そして完全に真夜中に戻ったあたりで、M7.2地震が発生しました(*2)。

点を色分けしたのは、微小地震たちの震源の深さによる違いを見るためです。たとえば緑色の点は、上記の円内で、震源の深さが0km以上10km未満の微小地震について求めた最頻発生時刻を示し、紫色の点は、同じく、4km以上14km未満の微小地震について求めた最頻発生時刻を示します。

M7.2地震前の約2年半にわたる最頻発生時刻のシフトは、震源の浅い微小地震ほど大きいこと、また、深さによって違っていたシフト量が収束したときにM7.2地震が発生したことが読み取れます。

   *

いま見たのはM7.2というやや大きな地震のケースでした。

では、もっと大きな地震ではどうでしょうか。 それを2002年11月にアラスカ地域の深さ4kmで発生したM7.9という大地震のケースでみてみます。

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図2(クリックで拡大)

ごらんのように、M7.9大地震の5年以上前から、震源周辺(半径1200kmの円内)での微小地震の最頻発生時刻は、大きく乱れています。

先ほどのM7.2地震の場合には、最頻発生時刻が真夜中から数時間シフトする程度でした。しかし、このM7.9大地震の場合には、シフトが12時間以上、つまり正午を越えてぐるぐる回るくらい乱れています。

浅い領域は乱れが大きすぎるので、多少はましな深い領域を少し詳しく見てみましょう。うす茶色の点(深さ10〜20km)に注目します。

この深さの最頻発生時刻は、M7.9大地震の約5年前に、真夜中0時ごろから8時(朝)にシフトしました。その後の推移を示すと

5.0年前 0時ごろ
4.8年前 8時ごろ(ジャンプ)
4.5年前 2時ごろ ↓
4.0年前 -3時ごろ ↓
3.5年前 -8時ごろ ↓
3.0年前 7時ごろ ↓ (反転)
2.5年前 9時ごろ ↑
2.0年前 10時ごろ ↑ (反転)
1.5年前 6時ごろ ↓
1.0年前 4時ごろ ↓
0.5年前 0時ごろ ↓

のようになります。最頻発生時刻は大地震3年前までどんどん早まりましたが、そこで反転して1年ほどの間ゆっくり遅くなり、3時間ほど戻しました。大地震2年前にまた反転して、その後は地震発生まで早まり続けました。そして真夜中0時に戻ったころにM7.9大地震が発生しました。

深さ別にみると、浅い領域の最頻発生時刻の変化がもっとも大きいことや、深さ別の最頻発生時刻が真夜中に収束していくタイミングで大地震が発生したことは先ほどのM7.2地震のケースと同じです。 完全に収束する少し前に大地震が発生したように見えるのは、3か月後の2003年1月に約6000km離れたメキシコでM7.6大地震が発生したことに関係があるかも知れません。

   *

上でみた2つのケース(No.4とNo.2)では、大地震前の最頻発生時刻の変化が比較的クリアに見えています。

他のケースでは、おそらく複数の地震の影響が重ね合わされているため、ここまでクリアなグラフとはなりません。次にそれらを示します。

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図3(クリックで拡大)

まず、対象期間(1997年〜2012年の約16年間)に対象地域(北アメリカ西部)ではM7.0以上のやや大きな地震が9個発生しました。順にNo.0〜No.8とします。

このうちNo.2, No.3, No.7, No.8の4つの地震はM7.5以上の大地震でした。

残りの5つの地震(No.0, No.1, No.4, No.5, No.6)はM7.0以上M7.5未満のやや大きな地震です。これらについて地震発生前後の最頻発生時刻の推移を示したのが次の図4です。

H_3dep_70
図4(クリックで拡大)

さきほどとほぼ同様なグラフですが、2つほど違うところがあります。

まず、さきほどは1か月おきの値をプロットしていましたが図4では2か月おきの値をプロットしています。

また、さきほどは微小地震の深さとして6つの深さ領域を色別にプロットしましたが、図4では3つの深さ領域としています。緑色は0km〜10km、青色は5〜15km、紫色は10〜20kmです。誤差棒は±2σです。

順に見て行きます。

No.0の地震は対象期間の開始時点に近すぎるので地震前のデータがありません。
(地震後の最頻発生時刻が多いに乱れているのは、おそらく直近で6年後に発生したM7.6大地震(No.3)の前兆を捉えているのだと思います。)

No.1の地震は地震前2年弱と地震後のデータを検討可能です。
地震の2年足らず前にはすでに最頻発生時刻の乱れ(真夜中より4時間ほど遅れる)は始まっていました。
パターン通り、最頻発生時刻が0時ごろ(真夜中)に収束して地震が発生しています。
浅い領域(緑)より深い領域(紫)の乱れのほうが大きいのがやや例外的です。

No.4の地震は地震前5年間と地震後5年間の計10年間を解析できるM7.0以上で唯一の地震です。これについてはすでに上で詳しく調べました。

No.5の地震は地震前は5年間、地震後は2年半まで調べることができます。
地震の2年ほど前には、最頻発生時刻はいずれの深さでも真夜中0時付近でした。その後、深さによって最頻発生時刻がまちまちになり、2〜3時間ほどの広がりが生じました。地震発生の1年ほど前からそれらが収束傾向となり、完全に収束した頃に地震が発生しています。
地震後に再び、最頻発生時刻が大きく乱れていますが、これは2年後の2012年4月に南東に300kmほど離れた地点で発生したM7.0地震(No.6)の前兆であろうと思われます。(No.6の地震のケースははすぐ下のグラフで示されていますが、No.5のグラフを左に2年分ずらすと、No.6のグラフにほぼ重なります。深さ別の最頻発生時刻の推移には、個々の大地震によって違う顔(個性)があるようです。)

No.6の地震は地震前は5年間、地震後は半年ほど調べることができます。
地震の約2年前から乱れ始めた最頻発生時刻がほぼ収束したころに地震が発生しています。
地震後の半年間にも、最頻発生時刻が乱れていますが、これは半年後の2012年10月に北西に4000kmほど離れた地点で発生したM7.8地震(No.7)やM7.7地震(No.8)の前兆を拾っている可能性があります。

次に、M7.5以上の大地震4つについても見てみます。

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図5(クリックで拡大)

No.2のM7.9大地震についてはすでに、上で詳しく調べました。

No.3のM7.6大地震はメキシコで2003年1月に発生しました。 No.2のケースと同様に、地震前の5年間以上に渡って最頻発生時刻が大きく乱れています。
たとえば深い領域(紫色)を見ますと、大地震の約5年前には最頻発生時刻は-3時(午後9時)ごろでした。それが徐々に早まって3年半前には正午ごろとなり、さらに2年前ごろには+5時(午前5時)となります。ここで反転して、最頻発生時刻は徐々に遅くなり、正午をこえて、地震発生の2か月前には-6時(午後6時)ごろに戻っています。発生直前には広がっていた他の深さの最頻発生時刻も収束傾向にあります。

No.2とNo.3のケースには、大地震前の最頻発生時刻の大きな乱れ、約2年前の反転、深さによる違いが直前に収束に向かうこと、といった共通点があります。

No.7とNo.8の2つの大地震はほぼ同じ地点で同じ日に発生した双子の大地震(M7.8とM7.7)です。そのため最頻発生時刻のグラフはほぼ同一になっています。
つい先日に発生した大地震なので、分析できるのはほぼ地震前のデータだけです。
やはり、5年以上の期間にわたる最頻発生時刻の大きな乱れ、地震の約2年前(深さによっては3年前あるいは1年前)の反転といった特徴がみられます。
しかし、深さによる違いの大地震直前の収束ははっきりとは見えません。これは、ほぼ同じ地点でわずか2か月後(2013年1月)に発生したM7.5の大地震の前兆のためかも知れません。

   *

大きな地震の前には数年間にわたって最頻発生時刻が乱れること。また、乱れの大きさや期間と、発生する地震の規模とが対応している可能性が浮かび上がってきました。

これを地震の予測(規模、場所、時期)に使うことができるでは?

というわけで、次の図6のようなグラフを作ってみました。

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図6(クリックで拡大)

これは場所別(緯度別)に最頻発生時刻の乱れ具合の推移を示したグラフです。

よこ軸には日時(年/月)をとってあります。

たて軸には緯度(北緯[度])をとってあります。この「緯度」の意味ですが、上に示した図3(北アメリカの地図)を見てください。

西海岸に沿って緑色の折れ線が描いてあります。この折れ線(「震央ライン」と呼びます)は過去の大地震の震央をつないだものです。

たとえば「北緯60度」であれば、この震央ライン上で北緯60度の点を考えます(緑の白丸)。この点を中心として地表に半径1200kmの円を考えます。ある時点までの1年間にこの円内で発生した微小地震たち(=M0.0以上)について最頻発生時刻が計算できます。図6に描いたのはその最頻発生時刻の乱れ(=真夜中からのずれ)です。

図6の折れ線グラフの色には、赤、緑、青の3種類がありますが、これは深さによる違いを色分けして示したものです。赤色は深さ0〜10km、緑色は深さ5〜15km、青色は深さ10〜20kmでそれぞれ発生した微小地震たちの最頻発生時刻の乱れを示します。

なお、図中の紫色の丸印は発生した大地震の日時と震央の場所を示します。 大きな丸印はM7.5以上の地震、やや大きな丸印はM7.0以上7.5未満の地震、小さな丸印はM6.5以上7.0未満の地震です。

では、図を左(つまり昔)のほうから見ていきます。

最初に目につくのは、1998年から2002年にかけて、北緯57度あたりから70度まで、大きな乱れが見られ、それが収まった頃(2002年11月)にM7.5以上の大地震(No.2)が発生したことです。(アラスカ)

また、下のほうでは、同じく1998年から2002年にかけて、北緯10度から23度あたりまで、大きな乱れが見られ、それが収まる少し前(2003年1月)に大地震(No.3)が発生しています。(メキシコ)

この2つのケースのような大きな乱れが再び観察されれば、M7.5クラスの地震がどの緯度帯で起きそうか、直前に予測できるかも知れません。

図の真ん中より少し上の右端を見ますと、2011年から2012年末にかけて、北緯42度から55度あたりまで、やや大きな乱れが見られたあとで、2012年10月から3連発の大地震(No.7, No.8, および2013年1月の地震)が発生しています。(カナダ西方沖)

ただし、アラスカやメキシコのケースとは異なって、このカナダ西方沖の緯度帯(北緯45度〜55度あたり)の最頻発生時刻は大地震の前に乱れるというよりむしろ、常に乱れているように見えます。なんらかの理由で遠方、他の緯度帯の地震の影響を受けやすいのでしょうか。

より小さな地震(M7.5未満)については、残念ながら「そう思って見れば地震前の乱れが感知できる」というレベルです。図6を見るだけでは、どのあたりでいつ、やや大きな地震(M7.5未満)が発生するかを予測するのは困難に思えます。

ただし、上で詳しく見たように、このクラス(M7.0〜7.5)のやや大きな地震であっても、震央を中心とする円内の微小地震たちの深さ別の最頻発生時刻が、地震の2、3年前から特徴的な推移を示すことは事実です。これを「予知」に活かさない手はないでしょう。
他の緯度帯で発生する大きな地震の前兆の影響を除去して、その地域だけの地震前兆を取り出す手法が必要です。近日中に主成分分析の手法を試してみようと思います。

最後に、図6の右下のほうを見ます。

北緯10度から25度あたりで、2005年半ばから2008年初めにかけてと、2009年半ばから2010年初めにかけて、ともにやや大きな乱れが見られます。 にも関わらず、対応する大地震がそのあとで発生していないように見えます。

この疑問は、対象地域を少し拡大して地震活動を調べたら解消しました。

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図7(クリックで拡大)

図7は、中米地域で2004年以降に発生したやや大きな地震を示します。

今回の対象地域は、図の左上の青枠で区切られた左上の領域ですが、そのすぐ外側で2009年5月(M7.3)、2010年1月(M7.0)、2012年3月(M7.4)にそれぞれ、やや大きな地震が発生しています。これらの地震の前兆が、図6の低緯度地域の乱れとして現れたものと考えます。

   *

最後に、「微小地震発生数にみられる24時間周期の振幅」についても、図6と同様な緯度別のグラフを作ってみました。図8です。

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図8(クリックで拡大)

2012年秋のカナダ西方沖の大地震(No.7, No.8)のように、地震の1年ほど前から明瞭に「24時間周期の振幅」が増加している大地震もありますが、他の大地震については、地震前の振幅の変化がそれほどクリアには見えません。

今回は以上です。

今後の課題は、

・「24時間周期の位相」の乱れに、いくつかの大地震の前兆が重なって現れているとき、それらを互いに分離する手法を見いだす

・日本付近の地震データを同様に調べてみる

・「24時間周期の位相」に地震前兆があらわれる物理的メカニズムを推定する

などです。では。

------

*1) 本文では「24時間周期の位相」の推移を図4に示しました。この注1では、「24時間周期の振幅」について同様なグラフを示します。図9です。M7.0以上7.5未満のやや大きな地震5つのケースです。(M7.5以上の大地震については前回のブログ記事で調べました。)

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図9(クリックで拡大)

「位相」の場合とは異なって、大きな地震の前にクリアな変化は見られません。(No.1の地震だけは明瞭に、1年半ほど前から浅い領域(緑、青)で「振幅」が増加していますが。)

「24時間周期の振幅」については、どのケースでも、深い領域ほど(つまり、緑、青、紫の順に)「振幅」が大きくなっていることがわかります。地殻内では深いところほど24時間周期が明瞭になるようです。

これは、本文で調べた「24時間周期の位相の乱れ」とは逆の結果です。「位相の乱れ」は浅いところほど大きくなっていました。

おそらく、「微小地震発生数にみられる24時間周期」をもたらしている物理現象は、地殻深く、あるいは、地球内部に関係があります。また、「24時間周期の位相の乱れ」をもたらしている現象は、ごく浅い地表付近に関係があるのでしょう。


*2) なお、図1では、M7.2地震の5年前から3年前にかけても最頻発生時刻の乱れ(地表付近では明け方方向へのシフトとシフトバック)がみられます。

これはおそらく、M7.2地震(No.4)の約2年半前に連続して発生した2つの大地震、すなわち、アラスカで発生したM7.9地震(No.2)およびメキシコで発生したM7.6地震(No.3)の前兆であると思われます。

M7.5クラスの大地震は、その発生の数年前から、約3000km離れた地域の微小地震活動の日変化の位相にも影響を及ぼしていると考えます。

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