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地震活動の24時間周期の乱れから大地震を予測する試み(北アメリカ西部)-T11

前回の記事では、M7.5以上(あるいはM7.0以上)の大地震の前には、微小地震発生数にみられる24時間周期の<位相>が乱れる、という「発見」について触れました。

これは、大地震が起こった後で、その周辺地域の微小地震活動を日付をさかのぼって調べてみると、24時間周期の「乱れ」が見いだされる、という話です。

もし、この話を逆にできるならば、つまり、微小地震活動を広域でモニタして、24時間周期の大きな「乱れ」が起きている地域には、将来(たとえば「乱れ」が収束したときに)、大地震が発生する、ということがもし言えるならば、地震予測につながります。

今回はその可能性を探求してみます。

前回の記事で、微小地震発生数にみられる24時間周期の<位相>と<振幅>の推移を、震源の場所別・深さ別に示しました(下に再掲、図A−1とAー2)。

これらをもう少し見やすくデータ処理して、より客観的に「地震予測」に役立つ形にできないだろうか、というのが今回の試みです。

Fig_h_all

Fig_amp_all

2つの方法を試しました。

1つめはフーリエ変換です。長周期成分や短周期成分など、特定の周期をもつ変動成分だけを取り出して、眺めてみる方法です。

2つめは主成分分析です。ある期間内(16か月としました)の典型的な変動のパターン(主成分)をいくつか求めて、どのパターンが現れているときに(あるいはその直後に)大地震が発生したのかを調べてみる方法です。

順に見ていきます。

   *

フーリエ成分に分けて眺めてみる

周期が4〜8か月の成分、8〜16か月の成分、16〜32か月の成分、32か月以上の成分、の4通りに分けて眺めてみます。

まず、周期4〜8か月の成分から、<位相>、<振幅>の順に示します。


周期4〜8か月の成分

Fig_h_4_8

Fig_amp_4_8

もとの図とくらべて、長周期成分の「うねり」がとれて、周期の短い「乱れ」がよく見えるようになりました。

M7.5クラスの大地震だけでなく、たとえば1999年後半に北緯35度付近で発生したM7.0クラスのやや大きな地震の2〜1年前にかけても、中深度(緑色の折れ線)の<位相>と<振幅>に「乱れ」がみられることがわかります。

少なくともM7クラス以上の地震では、地震の前に24時間周期が乱れる、とは言えそうです。

問題は「乱れ」のあとで、つねに大地震が発生しているわけではないこと。「地震性の乱れ」とそうでない「乱れ」を見分ける分析方法を見いだす必要があります。

次に周期8〜16か月の成分を見ます。


周期8〜16か月の成分

Fig_h_8_16

Fig_amp_8_16

さきほどの4〜8か月の成分に比べて、ノイズが減って、地震との対応が良くなりました。大地震の数年前に「乱れ」があらわれて大きくなり、地震発生が近づくにつれて、<振幅>や<位相>の「乱れ」が減少するように見えます。

次に周期16〜32か月の成分を見ます。


周期16〜32か月の成分

Fig_h_16_32

Fig_amp_16_32

一見すると、さきほどの8〜16か月の成分に比べて、地震との対応は悪いようです。しかし、図Aー7で<位相>の推移をよく見ると、各地域で、浅い領域(赤線)より深い領域(青線)で変動が大きい時期と、その逆の時期とが交互に繰り返しており、前者の時期から後者の時期に移る境目のころに、大きな地震が発生しているように見えます。

次に周期32か月以上の成分を見ます。


周期32か月以上の成分

Fig_h_32_max

Fig_amp_32_max

地震との対応ははっきりしません。北緯50度付近の領域と、北緯25度付近の領域では、つねに、<振幅>と<位相>に「乱れ」が見られます。

   *

以上、4つの周波数帯で、微小地震活動の24時間周期の「乱れ」を観察しました。

いちばん「地震予測」に使えそうなのは、「周期8〜16か月の成分」で、加えて補助的に「周期4〜8か月の成分」と「周期16〜32か月の成分」を眺めるのがよいでしょうか。

このようにしてごく最近(2012年以降)の各緯度帯の「乱れ」を観察してみると、北緯20度付近(メキシコ地域)にやや大きな「乱れ」が見られます。拡大図を示します。

Fig_h_8_16_zoom

さらに1年くらい観察してみて、この「乱れ」が減衰してくるようなら要注意かも知れません。

フーリエ変換についてはこのくらいにして、次に主成分分析のお話をします。

   *

主成分分析で典型的な変動パターンを調べてみる

ある期間内(16か月間としました)の典型的な変動のパターン(主成分)を主要なものから10個(第1主成分〜第10主成分)求めてみました。

次の2つの図は、第1主成分から第5主成分の16か月間の変動パターンです。最初の図は<位相>の変動パターン、次の図は<振幅>の変動パターンを示しています。

Fig_h_vec_1_5

Fig_amp_vec_1_5

第1主成分は、16か月間の<位相>や<振幅>の全体が大きくなったり小さくなったりする(レベル自体が全体的に上あるいは下へとシフトするような)変動パターンです。

それに対して、第2成分以降は、特定の緯度帯や深さで<位相>や<振幅>が、16か月間の前半は小さくて後半は大きくなったり、その逆だったり、あるいは、16か月間の途中でピークを持っていたりするなど、時間変化を伴う変動パターンです。

次の2つの図は、第6主成分から第10主成分についての同様な図です。

Fig_h_vec_6_10

Fig_amp_vec_6_10

   *

さて、このような主成分で表される変動パターンが、実際の微小地震活動にいつ発現していたのか、を示すのが次の図です。

Fig_factors

グラフで「各主成分の係数」の絶対値が大きくなっている時期には、実際の微小地震活動が、対応する主成分で示される変動パターンに似ていたことになります。

たとえば、2002年1月には第3主成分の係数(F3、青色の線)が-0.8という(絶対値が)大きな値をとっています。この時期の微小地震活動は、図B−1と図B−2で示した第3主成分の変動パターン(正確には、その符号を逆にしたような変動パターン)に、似ていたわけです。

図B−1と図B−2をみると、第3主成分が示す変動パターンは、高緯度地域で<位相>にピークがあり、かつ、浅い領域の<振幅>が増加しつつあるようなパターンです。

このパターンが現れて約1年後の2002年末に、アラスカ地域でM7.5クラスの大地震が発生しました。

将来、もし同様なパターンが現れたら、アラスカ地域の地震を警戒すべきかも知れません。
(このようなことを語るには、大地震のサンプル数が少なく、データ期間も短かすぎます。本当は100年間くらいのデータがあればよいのですが、微小地震のデータは十数年ぶんがやっとです。)

あと、根拠の弱いことを重ねて書くことをお許し願いたいのですが、直近のF4とF5の値は、2001年初に似ています。2年後の2002年末と2003年初にアラスカとメキシコでM7.5クラスの大地震が連続しました。2年後の2015年ごろにこれらの地域では警戒が必要かも知れません。

   *

最後に、こうした主成分で示される変動パターンが、実際の微小地震活動の24時間周期の「乱れ」に、それぞれどれくらい現れていたのか、を棒グラフで示します。

Fig_power

第1主成分がもっとも強く現れ、第2、第3となるにつれ、弱くなっていきます。

第10主成分では第1主成分のおよそ4分の1くらいの強さになり、第20主成分は同じく10分の1くらいの強さで現れています。

減り方はずいぶん穏やかです。これは、かなりたくさんの主成分を考慮しないと、24時間周期の「乱れ」を正確には表現できないことを示しています。ちょっと残念な事実ですが。

   *

今回は「フーリエ変換」と「主成分分析」の2つの手法を試してみました。大地震のサンプル数が少なすぎることが難点ですが、前者のほうが少し有望でしょうか。

「地震予測」を実現するためには、微小地震活動の24時間周期の「乱れ」から、より客観的に「地震前兆」を取り出す手法を開発する必要があります。他にもいろいろ考えて試してみるつもりです。では、また。

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