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閉軌道 1 はじめに

ケプラー問題と閉軌道 1 はじめに 気柱共鳴での開口端補正と並行して、いま考えている問題があります。それは、ニュートン力学でのおなじみの3次元のケプラー問題で、中心力ポテンシャル V(r) がどのようであれば、すべての軌道が閉じるのか、という問題をちょっと一般化した問題です。

最初にニュートン力学での状況を振り返っておきます。
V(r) = -k r-1 の場合が通常の万有引力でのケプラー問題で、この場合には楕円軌道になることが知られていますから、小さいエネルギーに対して、すべての軌道が閉じます。

また、 V(r) = k r2 の場合が等方調和振動子で、この場合には
V(r) = k (x2+y2+z2) と3方向に分解し、各方向の運動とも同じ周期の単振動となるので、やはり軌道は閉じます。

実は、ポテンシャルが球対称ならば、すべての(低エネルギーの)軌道が閉じるのは、上の2つの場合だけです。

そこで、この問題を3つの方向に一般化した、次のような問題を考えてみることにします。

A) 球対称でないポテンシャルではどうか?
B) 3次元空間を、一般の3次元多様体にして考えるとどうなるか?
C) 相対論的にはどうなっているか?


表に整理して説明しますと、次のような問題を考えてみようというわけです(命名は、私の独断で決めました)。

  R×R3 R×M3 4
球対称 a) ケプラー問題 c) 多様体上のケプラー問題 e) 時空でのケプラー問題
球対称とは限らない b) 一般ケプラー問題 d) 多様体上の一般ケプラー問題 f) 時空での一般ケプラー問題


a) は普通の中心力場の中のケプラー問題で、空間は3次元ユークリッド空間 R3 です。x=(x(t),y(t),z(t))として、ラグランジアン
   L = 1/2 (dx/dt)2 − V(r)

で決まる質点(質量は1としています)の(低エネルギーの)運動は、どのようなポテンシャル V(r) に対して常に閉じるか、という問題です。これは上で述べたように、すでに答がわかっています。

b) は、a) と同様な問題ですが、ポテンシャルを球対称と仮定しない点が違います。つまり、V(x,y,z) で考えるわけです。変分法の利用とかいろいろ考えていますが、これについては今のところ(2次元に落とした問題ですら)、私には全く暗中模索の状態です。3次元調和振動子で、3方向の角振動数が有理数の比をなす場合には軌道が閉じますが、その他に条件を満たす、球対称でないポテンシャルがあるのかどうか、全くわかりません。

c) は、球対称性をもつ3次元リーマン多様体上で、a)と同様な問題を考えてみよう、ということです。これについてはいくつか部分的な結果を得ています。定曲率空間(S3や双曲空間)で、ラプラス方程式の解になるポテンシャル V(r) に対して、すべての(低エネルギーの)軌道が閉じます。

ふつうのケプラー問題での近日点方向のベクトル(ルンゲ・ラプラス・レンツベクトル)に当たる保存量も存在します。

また、どの程度、物理的意味があるかわかりませんが、上の場合に、適当に定義した量子論(第一量子化)で水素原子のエネルギー準位を計算すると、それが空間の曲率によって変わることがわかります。(結構面白い結果ではないか、といってくれた人もいますが、どうなんでしょう?)

d) は今のところ、手をつけていません。

e) は、球対称な(かつ静的な)時空で、すべての低エネルギーの測地線が閉じるような、時空のメトリックを決定する、という問題です。a) やc) では、ポテンシャルは外から与えました(だから、別に重力ポテンシャルでなく、クーロンポテンシャルでも構わなかったのです)が、ここでは重力だけを想定しています。これについては現在、調べている途中です。なにか結果が出たら報告できるかも知れません。シュワルツシルト計量は、近日点移動とかがあるので、たぶん、ダメでしょう。アインシュタイン方程式の真空解にはこだわらずに、一般のメトリックで考えています。

f) は全く手を付けていません。

というわけで、気柱共鳴の話の合間に、a), c) あたりからお話ししていこうと思っています。これらの問題について、過去にどんな研究がなされてきたか、ほとんど知らないので、ご存じの方がいらしたら、教えていただけるとうれしいです。

では。




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