カテゴリー「財政赤字」の11件の記事

日本の財政赤字(9)---ガソリン暫定税率廃止が税収に与える影響

ガソリン税の暫定税率を廃止した場合に不足する税収は、国と地方を合わせて2兆7千億円である、と宣伝されています。しかし、実際に不足する税収は約8千億円である、と以前に書きました(記事)。このことについて、もう一度、詳しく見ておきたいと思います。


■考えられる4つのケース

あまり語られませんが、

(A) 2兆7千億円の税収を維持するのか、やめるのか、

ということに加えて、もう一つ大事なのは

(B) 2兆7千億円分の政府支出を行うのか、行わないのか

という選択があり得るということです。

「暫定税率が廃止されれば(道路などへの)政府支出を行わない」ことが当然のように仮定されていますが、理屈の上では「暫定税率を廃止して、かつ、政府支出は続ける」という選択もあり得ます。

「それは、財源なきバラマキだ。財政赤字を考えたらとてもできない」と思われるかも知れませんが、少し待って下さい。減税すれば家計の可処分所得が増えて内需が盛り上がり、他の税収が増える効果も期待できます。それに、政府支出をやめてしまったら、その公共工事で給与を得ていた人の消費が消えるので、モノが売れなくなります。どのような政策をとれば、税収や財政赤字がどういう状態になるのか、その試算を見てから判断しても遅くありません。

そこで次の4つのケースを考えます。

(1) 暫定税率を 維持、2.7兆円の政府支出を 行う
(2) 暫定税率を 維持、2.7兆円の政府支出は 止める
(3) 暫定税率を 廃止、2.7兆円の政府支出を 行う
(4) 暫定税率を 廃止、2.7兆円の政府支出は 止める


■暫定税率廃止の影響の見積もり

それぞれのケースで(年間の)、GDP(国内総生産)、税収、財政赤字は次のように変わります(単位:兆円)(*1)。

ケース GDP 税収 財政赤字
(1) 維持+支出 +0.0 +0.0 +0.0
(2) 維持+やめ -13.5 -2.2 -0.5
(3) 廃止+支出 +13.2 -0.7 +0.7
(4) 廃止+やめ -0.7 -2.8 +0.1

ケース(1)は現状維持で、与党が望んでいたものです。

ケース(2)は税率を維持したまま、政府支出を2.7兆円減らす緊縮財政路線。「輸出が絶好調」といった神風でも吹かない限り、経済規模(GDP)が13兆円も縮小します。さすがに現在、この政策を主張する政党はないようです。

野党の主張はケース(3)か(4)だと思いますが、いずれなのか、今ひとつはっきりしません。

さきにケース(4)から見ます。これは減税分だけ政府支出も減らす路線です。GDPも財政赤字もほとんど変わりませんが、大きな痛みを伴います。まず、2兆7千億円分の政府支出で食べていた人が職を失います。次に、その人々の消費に依存していた小売店や企業の売り上げが減少します。もちろん、良いこともあります。ガソリン代が減る分、他の商品の消費が増えます。だから全体としてGDPはほとんど変わらないのですが、格差拡大が生じます。おそらく、景気の悪い地方には厳しく、景気の良い地方には優しい政策になるでしょう。

ケース(3)は暫定税率は廃止しつつ、政府支出は維持するという政策。バラマキ批判をおそれてか、あまり話題になりませんが、ごらんのように財政赤字は7千億円しか増えません(*2)。減税で消費が盛り上がって民間投資も増え、ガソリン以外の税収が増えるからです。WSはこの政策がもっとも望ましいと考えます。

もちろんケース(3)では、財政赤字7千億円分の国債発行が必要になり、累積債務にも7千億円がプラスされます。しかし、内需が盛り上がって経済規模(GDP)が13兆円増えるので、累積債務のGDPに対する比率はむしろ低下するのです。

現在の政治状況をみると、ケース(3)か(4)かの選択になりそうです。米国経済の大失速、国内景況感の悪化、中小企業の倒産が増え始めていること、経済的困窮が原因と思われる若者の事件の多発といった痛ましい状況を考えれば、弱者に負担をしいるケース(4)はあり得ない選択です。無思慮な人々によるバラマキ批判をものともせず、勇気を持って、誰も損をしないケース(3)---暫定税率を廃止して、政府支出は維持する---をぜひ選択していただきたいと願います。

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注 *1) 試算の方法については冒頭に紹介した過去記事をごらんください。
*2) 前回の記事では8千億円としましたが、違いの原因は、投資性向や消費性向などのパラメータの桁落ち(四捨五入)です。

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日本の財政赤字(8)名目成長率が4%超なら累積債務は持続可能になる

ついに米国では実質金利がマイナスの時代に突入したようです。こんなときに「経済成長」について語るのはちょっと気が引けます。しかし、逆にこんなときだからこそ、20年先、30年先を見た長期的な視点で日本の累積債務の問題を考えたいと思います。あの1929年から始まった世界大恐慌でさえ、10年後には各国は克服していたのですから(*1)。

前回みたように、日本の長期金利は、名目成長率が高まってもほとんど上がりません。名目成長率が1%高まると長期金利が最大で0.5%上がるくらいです。

今回はまず、この事実をさらに他の国のデータで裏づけます。そのあと、名目成長率が4%超なら、経済規模が債務残高より速く大きくなるので、累積債務が持続可能になることを説明します。


■各国の名目成長率と長期金利の関係
Gdp_interest
図1 (クリックで拡大)

上の図は、2001年から2005年までの各国の名目GDP(国内総生産)の平均成長率と平均長期金利の関係を示しています(*2)。

名目成長率が大きいほど長期金利が高い傾向があります。高くなる割合は、成長率の1%の増加につき、金利が0.5%上がるくらいです。

成長率が4%以下の4カ国(日本、ドイツ、イタリア、フランス)は、成長率より長期金利が高くなっています。これらの国は、もしこの傾向がずっと続くならば、累積債務が発散してしまい、持続可能ではありません(ドーマーの定理)。

一方、成長率が4%以上の国(英国、米国、カナダ、韓国、オーストラリア)では、成長率が長期金利を上回っています。この傾向がずっと続くならば、これらの国の累積債務は持続可能です。


■モデル国の長期金利についての仮定

以上の分析と前回の分析をもとに、成長率と長期金利の間に次の表に示した関係が成り立つと仮定して、今後のモデル国(日本を念頭に…)の債務残高の推移が、経済の成長率によってどのように変わってくるのかを調べてみます。

名目GDP成長率 長期金利
1%    →  2%
3%    →  3%
5%    →  4%
7%    →  5%

ドーマーの定理によると、表の場合、成長率が3%を超えると債務は持続可能、3%以下なら持続不可能となるわけですが、それを以下で具体例で見てみます。


■この先30年間の債務残高の推移のシミュレーション

次のようなモデル国で成長率が一定の場合に、今後30年間の累積債務がどうなるか。4つの成長率(1%、3%、5%、7%)の場合を考えます。

<2007年のモデル国の経済状態>
・名目GDP        500兆円
・累積債務残高       500兆円 (*3)
・財政赤字         10兆円 + 純利払い
    内訳 基礎的財政赤字  10兆円
       純利払い     債務残高 × 長期金利

<今後のモデル国の財政についての仮定>
・毎年の基礎的財政赤字 = GDPの2% (*4)
・毎年の純利払い = 債務残高 × 長期金利 (*5)
・長期金利は成長率で決まると仮定(上の表)

     【注:つまり、基礎的財政収支の黒字化は前提としません】

■名目GDPのこの先30年間の推移

まず、名目GDPの推移から見てみます。当然、成長率が高いほどGDPの伸びも大きくなります。
Gdp
図2 (クリックで拡大)

成長率が5%なら15年後の2022年にはGDPが1000兆円を超えます。つまり、GDPが2倍になる。国民の年収の平均も2倍になる。どこの国でも当たり前のことですが、この15年、日本だけが例外でした。昔も今も、「GDPを約500兆円として…」で通用するんですから、泣けてきます。


■債務残高のこの先30年間の推移

次に債務残高の推移です。毎年の財政赤字と債務にかかる利息のために、債務残高はごらんのように増加します。
B
図3 (クリックで拡大)

ワー、大変だ。借金を返さなきゃ破産しちゃう!と思いますか?

いいえ、心配は無用です。あなたに借金があるとして、それが仮に2倍に増えても、もしその間にあなたの給料が5倍になっていれば、むしろ負担感は軽くなります。

つまり、大事なのは債務残高そのものではなく、債務残高のGDP(経済規模)に対する比率です。その比率の推移は次のようになります。


■債務残高のGDPに対する比率のこの先30年間の推移
B_gdp
図4 (クリックで拡大)

債務残高は成長率が高いほど大きくなっていました(さきほどの図3)。債務残高のGDP比率は逆に、成長率が高いほど小さくなっています(図4)。たとえば成長率が7%の場合だと、経済規模の拡大スピードが速いので、債務残高の増加をほとんど打ち消してしまい、債務残高のGDP比率はほとんど増えません。

成長率が低いと債務残高のGDP比率は発散しますが、成長率が高いと発散せず、一定の値に限りなく近づいていきます。その分かれ目の成長率は3%です。債務が持続可能となるためは、成長率を3%より高くする必要があるのです。もちろん、4%よりは5%、5%よりは6%がベターです。


■成長率を高めることが累積債務を持続可能にする

緊縮財政や増税といった政策では成長率が低迷してしまい、累積債務は持続可能になりません。日本には「シゴキ構造改革」と「緊縮財政と増税」が必要であるという「コウゾウ_カイカク_真理教」のマインドコントロールから心を解き放たなければなりません。

成長率を高め、経済規模を大きくすることが、累積債務問題の唯一の解決策です。そしてそれは明るい未来を描き出します。

上の試算では、政府支出が毎年GDPと同じ割合で増える、と仮定したことを思い出して下さい(*4)。成長率5%で政府支出(地方財政や年金の純支払いを含む)が100兆円ならば、これは毎年5兆円ずつ(15年後には10兆円ずつ)使える予算が増えるということです。この5兆円は、毎年1兆円ずつ増える社会保障費の他に、教育や医療、住宅、環境分野に振り向けることができます。5年後には大学院までの高等教育の無料化(年4兆円で可能)、15年後には医療や介護の無料化(年50兆円で可能)が視野に入ってきます。

経済成長は科学や技術の発展の必然的な結果です。少しの知恵と想像力、他者の困難への共感さえあれば、その恩恵を社会全体が享受することが可能なはずです。

明治以来100年間の日本経済の成長率の観察、そして、失業率の観察(オーカン(オークン)の法則)のいずれからも、日本の潜在成長率が実質で最低でも3〜4%であることが推定されます。インフレ率を1%とすれば、名目で4〜5%の成長率です。政府は、経済の円滑な運行を助けるインフラであり、経済が5%成長するとき、政府支出も5%大きくなるのが自然です。もしそれにあわせて政府支出を大きくしなかったら、さまざまな機能不全が起き、経済は潜在的には可能な成長を実現できません。現在、日本経済が成長しないのは構造改革が足りないからではなく、=政府支出が不足=しているからです。意外に思われるかも知れませんが、これが事実です。

いまこの瞬間にもこの国で、がんの治療法を発見すべく生まれてきた未来の北里柴三郎や、未来のアインシュタインが、経済的理由で大学進学をあきらめているかも知れません。なんという大きな損失でしょうか。

そして、それをなくすことは、完全には無理でもほとんどなくすことは、適切な経済政策の選択によって可能です。政府の仕事は、民間企業のイス取りゲームにプレーヤーとして参加することではなく、世の中のイスの数を増やすことです。政府支出を潜在成長率と同じスピードで増やせば、内需が盛り上がって消費が増え、民間投資が拡大し、給料が増え、好循環が始まります。それをすることこそ、国民から選ばれた政治家の仕事ではないでしょうか。ぜひ大胆な政策転換を行っていただきたい、とWSは願います。

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注 *1) 戦争という「公共投資」を行ったからだ、と言われれば、そうかも知れません。ただ、公共投資の対象は軍備でなくてもよかったはず。

*2) 長期金利は外務省HP(および、検索エンジンのキャッシュ)。名目成長率は総務省HPの「3−2 国内総生産(名目GDP,各国通貨表示)」。韓国とオーストラリアのみ、2003〜2005年の平均を使用(データが一部入手できなかったため)。

*3) 現在の日本の場合、粗債務が約800兆円あるのに対し、政府の金融資産(年金基金の積立金など)が約500兆円あり、差引の純債務は約300兆円です。しかし、年金基金はやがて取り崩されて減るから、粗債務から引いてはいけない、という意見もあります。ここでは文句が出ないようにざっくりと、純債務を多めに500兆円と仮定しました。

*4) 基礎的財政赤字、つまり、利払いを除いた財政赤字( = (利払いを除いた)政府支出 − 税収)は、GDPが500兆円なら、その2%で10兆円。GDPが1000兆円なら、その2%で20兆円と仮定しています。
 基礎的財政赤字をつねにGDPの2%である、と仮定するわけはこういうことです。GDPが増えたとき、税収は長期的にはGDPと同じ割合だけ増えます。そこで政府支出もGDPと同じ割合だけ増やす、のが自然です。すると、基礎的財政赤字はGDP比2%に保たれます。
 税収が増えたときに、同じだけ政府支出を増やさなかったら、民間部門の所得を政府が奪うことになります。民間の可処分所得が減って消費が減り、国の経済が縮小してしまいます。不況突入です。このあたりが、家計(や企業)と国の財政の違いです。財政の場合、歳出削減のマイナスの影響を忘れることはできません。
 悪影響(失業の増加とか、医療や社会保障の劣化など)が深刻なら、基礎的財政収支の黒字化という目標を追うべきではありません。それに、上の例からもわかるように、成長率が長期金利より高ければ、黒字化しなくても債務は持続可能です。

*5) たとえば、純債務が500兆円で長期金利が2%ならば、純利払いは10兆円になります。

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日本の財政赤字(7)景気が良くなると長期金利が上がるってホントなの?

生活が楽ではないという多くの国民の声にもかかわらず、なぜ、減税や財政出動などの景気対策をできない(しない)のでしょうか。

その理由として、対策で景気が良くなると長期金利が上がり、国や地方の借金の利払いが増えて困る、という「説明」があります。この「説明」が=あやまり=であることを、これから2回にわたって説明します。

今回は、景気がよくなる(=GDPが増える)とどのくらい長期金利が上がるのかを、過去のデータにもとづいて調べます(先に結果を述べますと、ほとんど上がりません。名目成長率が1%上がると金利が0.2%上がる程度)。

次回は、景気が良くなると累積債務よりGDPの方が速く増えるので、債務のGDP比率はむしろ小さくなるのだ、ということを、今回の結果をもとに説明する予定です。

   ***

ではまず、景気と長期金利の関係を四半期データで調べましょう。図1は1995年第i期(1-3月期)以降の、日本の名目GDP成長率(前年同期比、横軸)と長期金利(10年国債利回り、縦軸)の関係を示しています(*1)。
Quarterly0
図1 (クリックで拡大)

最初にパッと見の印象を述べますと、全体としてみれば、成長率が大きいほど長期金利が高いように見えます。しかし、1998年以降は成長率と長期金利にあまり関係がない、また、1995年から1997年にかけてはむしろ、成長率の上昇とともに長期金利は低下していることがわかります。

より客観的な分析をするために、直線y=ax+bを当てはめます(回帰分析)。ここで成長率をx、長期金利をyとしています。

傾きaは、成長率が1%増えたときに長期金利がいくら上がるか、を示し、切片bは、成長率とは無関係な長期金利の水準(成長率がゼロのときの値)を表します。

ただし、固定した直線で全期間のデータを表すことには、かなり無理があります。そこで、時間経過とともに、直線を連続的に動かして当てはめます。つまり、傾きaや切片bは定数ではなくて、時間とともに少しずつ変わると考えます。その変わり方が一番なめらかになるように、各時点での直線を決めるわけです(*2)。

次の図は、切片にくらべて傾きはあまり動かないという条件(ゆらぎの比=0.01)をつけて、傾きと切片が変わるようすを求めたものです。傾きはほとんどゼロのまま動きません。つまり、この場合には長期金利は成長率とほとんど無関係です。
Quarterly1
図2 (クリックで拡大)

次の図は、切片にくらべて傾きがかなり動くという条件(ゆらぎの比=1.0)をつけて、同様に求めたものです。こんどは傾きもいくらか動きますが、やはりゼロの近辺をウロウロしています。傾きはいくら大きくても0.3を超えないとみなせます。
Quarterly2
図3 (クリックで拡大)

図2と図3のいずれが実際の長期金利のデータをよく説明できるのか。それは対数ゆう度という量を比較するとわかります。対数ゆう度が大きいほど当てはまりが良好です。良いのは図2のほうです(見た目でも図3の誤差は大きく、当てはまりが悪いことがわかります)。少なくとも1995年以降は、長期金利は成長率にほとんど無関係です(*3)。仮に成長率が大きいほど長期金利が上がるという関係があるとしても、その傾きはわずかで、0.3を超えません。

   ***

これまでの考察からわかるのは、1995年以降のある時期に長期金利の目立った上昇があったとしても、その原因は景気拡大ではない、ということです。それを具体例で確かめてみましょう。

図1を見ると、1998年10-12月期から1999年1-3月期にかけて長期金利が1%ほど上がっています。また、2003年の1-3月期から同年4-6月期にかけても1%弱上がっています。

前者は、長銀の破綻処理に伴う安心感から、国債に逃避していたマネーが株式などに流れ、金利が上昇しました。また、後者は、ITバブル崩壊後の米国経済の底打ち感とイラク戦争の早期終結観測(当時)から先行きの見通しが好転し、同様なマネーの流れが起きたためです。いずれも、特殊要因による金利上昇でした。実体経済の景気拡大が原因ではありません。

  ***

このように1995年以降のデータで見る限り、景気がよくなっても長期金利はほとんど上がらないようです。これは、バブル崩壊後の特殊な関係なのでしょうか、それとも、バブル以前にもそうであったのでしょうか。

それを調べるために、1980年以降の年次データで同様な考察を行ってみます(*4)。

図4は傾きがあまり変わらないと仮定した場合、図5は傾きがかなり変わると仮定した場合です。対数ゆう度の大きい図4の方がより良い推定となっています(*3)。
Yearly1
図4 (クリックで拡大)

Yearly2
図5 (クリックで拡大)

図4から、傾きは0.2程度であることがわかります。成長率が1%増えても、長期金利の上昇は0.2%にすぎません。

図5の推定はあまり良くありません。それは、図の左側で切片の推定誤差がとても大きいことからもわかります。図の右側は多少は信用できるかも知れませんが、傾きは最大でも0.5程度です。

   ***

以上の分析からWSは、「現在、名目成長率が高くなっても長期金利はそれほど上がらない。成長率の1%の増加につき金利は平均で0.2%、最大でも0.5%上がるにすぎない」と結論します。

理屈を述べると、たぶん、次のようなことが起きています。
景気がよくなれば、マネーは国債よりも、より収益性のある株式や社債に流れる、つまり、国債の価格は相対的には低下(金利は上昇)します。しかし、株式などの価格は絶対的には上がります。価格の絶対的な上昇が、国債価格の相対的な低下を打ち消すので、実際の国債価格はそれほど落ちない(金利が上昇しない)のです。ひとことで言えば「日本買い」が起きるのです(買い手は日本人でもかまわない)。

   ***

では今回はこれで。
次回は、景気がよくなると債務のGDP比率が低下することを説明する予定です。
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注 *1) 名目GDP成長率は国民経済計算平成18年度確報のデータ、長期金利はEurostatの月次データを平均。なお、グラフで1997年始めの右側への異常な突起は、消費税率引き上げ(3%→5%)時のかけこみ需要とその反動の影響。

*2) a、bについてそれぞれ1次のトレンドモデルを仮定し、2次元の状態空間モデルで誤差の分散(観測誤差を含めて3つ)を最ゆう法で推定。

*3) ゆらぎの比が0.001、0.0001と小さくなるほど、当てはまりが良くなりますが、対数ゆう度の改善はわずかです。傾きと切片の推定結果も、ゆらぎの比が0.01の場合とほとんど同じです。

*4) 図1と同様な、1950年代からの年次データのグラフは、小生のHPの第3節と第4節にあります。

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日本の財政赤字(6)財政赤字は消費性向で決まる---増税や歳出削減で財政再建はできない

税率を上げても(=増税しても)財政赤字は解消できません。家計の可処分所得が減るため、消費が落ち込んで国全体の経済規模が縮小し、税収がほとんど増えないからです。

税率を下げても(=減税しても)財政赤字は解消できません。経済規模は拡大して課税ベースは増えますが、税率の低下の効果が上まわって、税収が減ってしまうからです(*1)。

歳出削減を行っても財政赤字は解消できません。政府にモノやサービスを提供していた企業の売り上げが減るため、経済規模が縮小し、税収が減ってしまうからです。

政府支出を増やしても財政赤字は解消できません。経済規模が拡大して税収は増えますが、政府支出の増加を上まわるほどは増えないからです(*1)。

つまり、増減税や歳出の増減そのものは、有効な財政再建策ではありません。では、財政再建のためにはどうすればよいのか。

答は簡単です。景気を良くすればよい。そうすれば自動的に税収が増えて財政が黒字になります。財政出動をする必要もなければ、税率を上げる必要もありません。
Beta_gamma
図(クリックで拡大)

景気を良くするには2つの方法があります。1つは、もっと家計にお金をまわし、家計が安心してお金を使えるようにすること。もう1つは、企業が安心して設備投資できる環境を作ることです。

上に示した図は、このブログで紹介してきたモデルによる計算結果で(*2)、財政赤字額が消費性向と投資性向で決まることを示しています。消費性向とは、可処分所得のうち消費にまわる割合のこと。投資性向とは、個人消費と民間投資の比率のことです。

消費性向を0.70、投資性向を0.34とすると、財政赤字は25兆円くらい(黄色の棒グラフ,
左から3つめ)。だいたいこれが現在の日本経済の状態です(好調すぎる経常収支の黒字を控えめに見積もったとして)。

消費性向がこのままなら、投資性向が0.40くらいまで上がっても、財政赤字はなくならないことがわかります。

しかし、消費性向が4ポイント上がって0.74になるなら、投資性向が少し増えて0.36になるだけで財政は黒字化します。

もし、消費性向が6ポイント上がって0.76になるなら、投資性向が0.34のままでも、財政収支は約10兆円の黒字に転じます。

   ***

まずは再分配政策で、消費性向を上げることです。そうすれば投資性向も上がる。内需が盛り上がって日本経済が力強い成長軌道に乗り、財政赤字は自動的に解消します。

長期金利が上がることは気にしなくて大丈夫。利払いの増加より、税収増が上まわります。
完全雇用が達成されるまでは、インフレも気にしなくて大丈夫。もし、金利上昇やインフレを気にする必要があるくらい、景気が過熱するならば、それはうれしい悲鳴というべきでしょう。
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(*1) いまの日本経済(国内)は圧倒的に需要が不足した状態にあるので、一定期間(数年間、完全雇用が達成されるまで)の財政出動や減税は財政再建にかなり有効であると思います。上で、財政赤字が解消できない、と述べたのは、もっと長期的な視点での話です。

(*2) 詳しくは小生のホームページの拙論をご覧ください(第2部、とくに第9節)。

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日本の財政赤字(5)「消費税率を10%に上げて、サラリーマンが基礎年金保険料を払わなくて済むようになれば、消費が大きく落ち込むことはない」ってホントだろうか?

次期首相候補のひとりであるA氏が、基礎年金を全額税方式にすること、および、そのための財源として消費税率を10%に上げる、という提案をされました。

国民年金の現状からみて全額税方式にはとくに異論はありませんが、「消費が大きく落ち込むことがない」という主張と「財源は消費税の増税」という2点には強い疑問を感じます。

   ***

まず、消費の落ち込みについてですが、もしかりに、税収の増加分がすべて年金給付、あるいは、借金返済以外の政府支出に使われるならば、たしかに消費が大きく落ち込むことはないでしょう。

しかし、日本の財政や社会保障費の現状をみると、税収の増えた分がすべて給付にまわるとは考えにくいのです。かりに給付せずに借金返済にまわす分が1兆円あるなら、個人消費は約3兆円落ち込みます。2兆円ならその倍の約6兆円の落ち込みになります。

ここで日本の現状を確認しておきましょう。

まず、財政については、ご承知のように政府支出が税収を上まわっており、景気変動因子を除いたベースで毎年、約20〜25兆円の赤字になっています。

次に、社会保障(年金や健康保険など)については平成18年度でみると、社会保障給付の総額が80.1兆円であるのに対し(*1)、社会保障負担(保険料収入など)の総額は52.3兆円にとどまっており(*2)、負担と給付の差額は27.8兆円に達しています。

税収の増加分で、この差額を埋めあわせたり(つまり純給付(=給付と負担の差)を減らしたり)、あるいは財政赤字を埋めあわせたりすれば、即座に消費は落ち込むことでしょう。しかし、増えた税収を手にした政府が、差額や赤字を埋め合わせたいという誘惑に、はたして打ち勝つことができるでしょうか。

おそらく無理でしょう。そして誘惑に打ち勝つことができないゆえに、消費は大きく落ち込むことでしょう。マイナスから出発しなければならない日本は、長年、消費税の税収を再分配して消費を維持している欧州とは、出発点がちがいます。

   ***

次に財源について。なぜ財源を消費税に求めるのでしょうか。

現在の日本経済の問題は内需の不振にあります。その原因は、過去最高の利益を上げている企業部門の所得が家計に分配されないことです。増税は年金や累積債務の問題の解決策ではないとWSは考えていますが、かりに増税したいのならば、財源は法人税の増税(というより減税の廃止、つまり法人税率40%への復帰)や所得税の累進制の回復に求めるのが自然です。消費税を廃止して消費の拡大をうながすのが望ましく、消費税率アップで消費を減退させる状況ではありません。

また、所得税や法人税には景気変動をゆるやかにして経済を安定させる効果がありますが、消費税にはそれがありません。消費税に頼りすぎると、金利で経済をコントロールする必要がうまれ、累積債務をかかえる日本の財政の持続可能性にとってマイナスです。消費税税収の、みかけの安定性にだまされてはいけません。

   ***

このブログで何度も言ってきたことのくり返しになりますが、税率の変更や政府支出の増減といったつじつま合わせをいくらやっても、財政赤字は消えないし、年金問題の将来もみえてきません。必要なのは、消費性向や投資性向などの日本経済のパラメータを変える政策です。

税制を80年代以前の状態に戻し、消費性向を5ポイント上げれば、内需がもり上がって税収がふえ、財政収支が25兆円改善して黒字化を達成、家計もハッピー、企業もハッピー。年金の問題も少子化の問題も魔法のように(ホントは理の当然として)解決するのに…。 どうしてそういう政策をおやりにならないんでしょう?

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注 *1) 給付の主な内訳は、厚生年金22.2兆円、 国民年金15.3兆円、国民健康保険8.3兆円、共済組合7.4兆円、社会扶助給付7.4兆円、介護保険5.9兆円など。(国民経済計算平成18年度確報による)

*2) 負担の主な内訳は、厚生年金21.0兆円、 共済組合6.3兆円、厚生健康保険6.1兆円、組合管掌健康保険6.0兆円、国民健康保険3.9兆円、雇用保険3.0兆円など。(同上)

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日本の財政赤字(4)ガソリン暫定税率廃止でほかの税収は1.9兆円<増える>のですが...誰も言わないね

次の主張は本当でしょうか?

「ガソリン税(揮発油税など)に上乗せされている暫定税率をやめれば、国と地方をあわせ、約2兆7千億円の財源が不足する」

確かに単純計算ではそうなるのですが、この主張には大きな見落としがあります。暫定税率がなくなればガソリンが安くなるので、その分のお金で他の買い物をすることができる。その需要喚起により景気が良くなり、ほかの税収が増える効果を見落としています。


■暫定税率を廃止すれば、以下のような好循環がおきます。

減税により、可処分所得が増える
→ その分、所得に余裕ができるので、個人消費が増える
→ モノが売れるので、民間投資が増える
→ 利益や給与が増える
→ 可処分所得が増える
→ (2行目以下の繰り返し)

ひとことで言えば景気がよくなる。その結果、ほかの税収が増えます。どれくらい増えるのかは前回紹介したモデルで簡単に試算できます。

消費性向を0.70、投資性向(=個人消費に対する民間投資の割合)を0.33、平均税率(=GDP約500兆円に対する税収の割合)が暫定税率廃止により0.15から0.1446に減るとして計算すると結果は次の通りです(*1)。ただし、道路は計画どおり作り続ける(あるいは、道路の代わりに別のことに支出する)として、政府支出の総額は減らさないと仮定しています。

<ガソリン税暫定税率廃止の効果>
   GDPの増加:13.1兆円
      (内訳:個人消費 +9.8兆円
          民間投資 +3.3兆円
          政府支出 変化なし)
   税収の変化 :8100億円の減少

単純計算では不足する財源は2兆7千億円ですが、上でのべた需要喚起の効果により他の税収が1兆9千億円増えるので、正味の税収の減少は約8千億円ですみます(*2)。不足する財源は2兆7千億円ではなくて、8千億円なのです。このあたりは経済学(マクロ)のごく初歩の議論なんですが、誰もちゃんと言わないですね。

8千億円は日本のGDPの0.2%にも満たない金額です。ひと月3万円の小遣いのお父さんにたとえれば、わずか68円です。子供に68円のおやつを買ってやらない親がいるでしょうか。

このくらいなら、米国の信用バブル崩壊に伴う景気対策もかねて、国債発行してまかなっても良いんじゃないの? と思うんですけど...。国民にとって干天の慈雨となるこの程度の少額の財政出動を、なぜバラマキと批判する人がいるのか、全く理解できません。


■大阪府知事選の結果をどう見るか

先日の大阪府知事選では与党候補が勝ちました。その大きな理由は、与党がマスメディアを動員して「野党は財源のあてもなく暫定税率廃止と言っている。頼りない」という印象を国民に与えることに成功したからではないか、とWSは思っています。

A. 「暫定税率を廃止すると税収が2.7兆円も減って地方が大変」というはわかりやすいけどウソの話。

B.「暫定税率を廃止すると税収は約8千億円減るが、景気が良くなって所得が増える」というのはわかりにくいけどホントの話。

与党も野党も、A.とか埋蔵金の話のような感情を煽りたてる路線じゃなくて、B.のようなまじめな話をていねいに語ってほしいと思います。

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注 *1) 今回は簡単のため、消費税のように税収が個人消費に比例する税を分けて扱わないで、税収総額がGDPに比例するという単純なモデルで計算しました。
なお、税収が8100億円減る、とか、GDPが13.1兆円増える、というのは、すぐに翌年の税収やGDPがそうなる、という意味ではありません。税率変更に伴い、数年間は税収やGDPはバタバタと振動しますが、やがて落ち着く。その水準のことを言っています。

*2) 輸入によって、購買力が海外へと流出する漏れの効果はここでは考えていません。それを考えると、GDPの増加は1割くらい少なくなります。しかし、税収を増やす効果で今回無視したもの(*3)もあります。それらを合わせると、8100億円の税収減という試算はほぼ正しい、とWSは考えています。

*3) GDPの増加に伴って税収が増えますが、今回はGDPと税収の比率が一定値(=平均税率)に保たれる、と仮定しました。実際には経済成長に伴って、GDPが増えるより速い割合で税収は伸びます。両者の比は「税収の弾力性」と呼ばれます。

今回の試算は、税収の弾力性を1.0と仮定したことに相当しています。政府の想定はもう少し高くて1.1ですが、これでもかなり過小な見積もりになっている可能性が大です。実際、安倍内閣のときには、見込みより税収が大幅に増えて(約4兆円の増)うれしい誤算となりました。
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(2008.1.30付記)「誰も言わない」と冒頭に書きましたが、経済アナリストの森永卓郎さんがすでに、景気対策としての上乗せ税率の廃止という観点から「絶好の景気対策、暫定税率の廃止」と題する記事を書いておられました。

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日本の財政赤字(3)消費税率アップという「苦い薬」はホントに良薬ですか、Yさん?

社会保障費が毎年約1兆円ずつふえていて、この傾向は今後15年くらい続きそうなので、その分の税収の増加が必要なことは事実です。しかし、それを消費税の増税でやろうとしたら、景気を冷まし、悲惨な未来が待っています。その様子を調べるために、一国の経済についてのサミュエルソンの簡易モデル(*1)を使って、この先の10年間のシミュレーションを行いました。

政府支出は毎年1兆円ずつ増加すると仮定して、3つのケースを調べました。仮定の詳細は、あとで説明します。

調べた3つのケースは次の通りです。
(a) 消費税率を毎年1.0%ずつ引き上げるケース
(b) 消費税率を毎年0.5%ずつ引き上げるケース
(c) 消費税を10年かけて段階的に廃止して所得税・法人税などで置き換え、消費性向を毎年0.5%ずつ向上させるケース


■ケース(a)

まず、(a)の消費税率を毎年1.0%ずつ引き上げるケースから。
Case_a
グラフ(a)

ごらんのように、毎年の財政赤字のGDPに対する比率(右目盛)は10年間で5%から4.7%に減りますが、減少はごくわずかです。10年たっても財政再建にはほど遠い状況です。

それ以上に深刻なのは、GDP(左目盛)が500兆円から440兆円まで、割合にして12%も減少してしまうことです。これは、消費税の増税が個人消費を冷まし、それが民間投資の減少を招き、企業の利益や給与の減少につながるという負の循環の結果です。

財政収支が改善しないのは、国民所得が減少するため、法人税や所得税の税収が減って、消費税の税収増を打ち消してしまうからです。このケース(a)は「恐慌」と呼ぶのがふさわしい状態です。悲惨な未来像と言えるでしょう。


■ケース(b)

では、消費税率を毎年0.5%ずつ上げていく、もう少しマイルドなケース(b)ではどうでしょうか。
Case_b
グラフ(b)

GDPの減少は、ケース(a)ほどではありませんが、所得は増えるどころか減るのですから、やはり悲惨な未来像です。財政収支の改善もわずかで、10年たっても財政再建はできません。


■ケース(c)

実は、消費税率をどういじるか、といったつじつま合わせをいくらやっても、財政赤字のGDP比率は変わりません。財政再建に必要なのは、日本経済のパラメータを変える政策です。それがわかるのがケース(c)のシミュレーションです。
Case_c
グラフ(c)

ケース(c)では、消費税率を現在の5%から毎年0.5%ずつ下げて10年後にゼロにします。その分の税収減を補うため、消費税以外の税(所得税や法人税など)の税率を少しずつ上げます。現在、消費税以外の税の税率(GDPに対する比率)は12%ですが、これを毎年0.25%ずつ上げて10年後に14.5%にします。

この税率変更のおかげで、日本経済の ある重要なパラメータが変化します。消費性向です。逆進的な消費税を廃止し、累進的な所得税や法人税などに置き換えることで、消費性向が上がります。ケース(c)では、現在0.70である消費性向が毎年0.5%ずつ上がり、10年後に0.75になる、と仮定しました。

結果は明らかです。消費性向が上がることでお金が国内を巡るようになるため、内需が盛り上がり、10年でGDPは800兆円に達します。財政収支も大幅に改善します。景気拡大により、税収が増加するからです。10年で財政収支は黒字に転じるのです。

10年でGDPが500兆円から800兆円に増えるというと、そんな高成長はあり得ない、と思うかも知れませんが、これは名目で年4.8%の成長率にすぎません。前回の記事でも見たように、これはOECD諸国の最近20年の平均的な成長率と同じくらいです。最近15年の日本がむしろ異常です。政策の選択さえ正しければ、ケース(c)の描く未来像は十分に達成が可能である、とWSは考えます。

さて、この変化が、低所得層に恩恵をもたらすことは明らかです。では、富裕層はどうでしょうか。


■ケース(c)は富裕層にとっても得である

消費税を廃止し、減収分を累進性の強い所得税・法人税でまかなうと聞けば、富裕層に不利である、と思われるかも知れません。しかし、事実は異なります。富裕層の所得は景気変動に敏感であり、経済が10%拡大すれば、2倍3倍になることもごく普通です。もちろん、不況時には半分あるいはゼロ以下に減ることもありえますが…。

10年でGDPが800兆円に増えて1.6倍に達するとき、富裕層の所得増が1.6倍にとどまる、というのはきわめて考えにくいことです。おそらく、所得税率・法人税率の2.5%の増加など全く気にならないくらい増えるに違いありません。このあたりの詳しい見積もりは、いずれちゃんとやるつもりです。

まとめますと、消費税の廃止と所得税・法人税への置き換えは、誰も損をしないWinWinの政策です。逆に、消費税率のアップは皆が損をする愚策です。


■本気なの? ちゃんと考えたの?

総選挙後の消費税率の引き上げが「不可避」という雰囲気がマスコミ等により醸し出されつつありますが、WSにはその根拠が納得できないのです。特に、消費税率の引き上げによる景気冷え込みの効果をちゃんと考察した引き上げ肯定論には、まだお目にかかっていません。

ひとつ参考になるデータは、1997年の消費税率引き上げ(3%→5%)の結果です。引き上げ前、国と地方および社会保障基金を合わせた財政収支は約20兆円の赤字でした。引き上げ後、(国鉄民営化に伴う特殊要因を除いて)赤字は30〜35兆円に増えました。GDP約500兆円に対する財政赤字の割合は、4%から6〜7%に増えたのです(*2)。

上のケース(a)や(b)で見たように、消費税率を上げるとGDPが落ち込みます。所得税や法人税の税収が減少します。景気悪化を避けるため、緊急の経済対策(財政出動)が必要になります。税収減と追加の政府支出のため、財政収支が改善するどころか、1997年の消費税率アップでは逆に、財政赤字が10〜15兆円も拡大してしまったのです。

以上のシミュレーションの結果と、1997年の経験をふまえて、WSは、消費税率のアップよりも消費税の廃止が望ましい、と強く主張したいと思います。


■付記:シミュレーションで用いた仮定

シミュレーションで用いた仮定は以下の通りです。国と地方と年金基金などを合わせて「政府」と呼んでいます。SNAにおける「一般政府」のことです。

・国内総生産GDP(2007年 500)は、個人消費(同 300)と民間投資(同 100、純輸出を繰り込む)と政府支出(同 100)の和である
・政府支出は毎年 1 ずつ増える
・個人消費は可処分所得に比例する。比例係数を消費性向と呼ぶ
・民間投資は個人消費に比例する
・税収は、消費税の税収と消費税以外の税収の和である
・社会保障負担は税収に含めない。社会保障純支出を政府支出に含める
・消費税の税収は個人消費に比例する。比例係数を消費税率と呼ぶ
・消費税以外の税収はGDPに比例する
・可処分所得は、GDPから税収を引いたものに等しい、と定義する

なお、シミュレーションでは、消費税率やケース(c)での消費性向は年度によって変えていますが、他の比例係数は、すべて定数としています。
_______
注 *1) このモデルについての論文(エッセイ)の翻訳が「所得決定の簡単な数学」として、サミュエルソン経済学体系第1巻 (勁草書房) p104に収録されています。
*2) ESRI Discussion Paper Series No.167 国民経済計算から見た日本経済の新動向 p42のグラフを参照 (Web上で入手可)

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日本の財政赤字(2)涙の一人あたり名目GDP成長率---OECD諸国で最低

次に示す図は、OECD諸国(25か国)(*1)の過去10年間の一人あたり名目GDP成長率(ドル表示で計算)を比較したものです(*2)。
Image001
図1 (クリックで拡大)

日本はビリ(涙)。他国の成長率との差は歴然です。一体どうしてなんでしょうか。過去10年あまり、経済政策が根本的に間違っていたとしか思えません。

前回の記事でとりあげた図を見ていただくと、「経済政策のミス」がいつ起きたのかがわかります。

大きな「ミス」は2回ありました。1回目は1997年の消費税率のアップ(3%→5%)であり、2回目は2000年の緊縮財政(構造改革)です。

いずれも財政出動による景気回復にともなって、累積債務が持続可能となる状態、すなわち、名目成長率が長期金利を上まわる状態に日本経済が移行しかけたそのときに、「誤った政策」で景気の腰を折ってしまったのです。

いま再び、消費税率アップを求める声が大きくなっています。しかし、消費税を社会保障費の赤字の穴埋めのためだけに使い、政府支出の総額を変えないならば、国民所得は間違いなく減少します。

たとえば、消費税率を2%上げたとしましょう(5%→7%)。すると個人消費が16兆円、国内民間投資が6兆円減るため、国民所得は計22兆円も減ります。その結果、税収の増加はトータルで1兆円しかありません。景気の悪化のために、所得税や法人税が減少して、消費税収の増加を打ち消してしまうためです(試算の詳細)。

日本のGDPは約500兆円なので、年収500万円の人にたとえるなら、所得が22万円も減る。年収250万円なら11万円の減少にあたる政策です。日本経済に対する相当の劇薬といえるでしょう。それなのに、税収は増加はたった1兆円しかない。消費税率アップなどという話はとても正気とは思えません。これほど国民に厳しく、暗い未来しか見えてこない政策に、いったい、どんな魅力があるというのでしょうか。

むしろ、崩壊しかかった中間所得層を立て直し、消費性向を上げ、内需をもりあげ、個人消費の力で景気回復を図り、名目経済成長と財政再建を実現するほうが百倍も千倍も望ましいと思えます。単に国民にとって望ましいだけでなく、そうすることで日本が世界経済のエンジンとなり、サブプライムバブルの崩壊で痛手を負った各国からも感謝されるのではないでしょうか。

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注:
上では、1996年から2006年までの一人当たり名目成長率の計算は、ドル表示でなされていまが、この10年で為替レートはあまり変化していないため(ドル/円レートは1996年 116.1、2006年 118.9)、円表示で計算した日本の名目成長率もほとんど同じになります。

参考までに、1985年から2006年までの21年間の一人当たり名目成長率をドル表示で比較したグラフを下に示します(ドル/円レートは1985年 200.6)(*2)。これは1980年代後半の日本における不動産バブルの時期を含んでおり、また円高が進行した時期なので、日本の名目成長率が見かけ上、高く出るはずです。にもかかわらず、最下位に近い低い成長率となっています。
Image002
図2(クリックで拡大)

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*1) 1985年時点
*2) 国民経済計算(平成18年度確報)の参考表を元に作成
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付記:2つの成長率のグラフですが、縦軸の目盛が間違っていたので直しました。正しいグラフでは、以前にアップしたものより成長率が高くなっています。エクセルのlogが常用対数であることを知らず、自然対数だと思いこんでいたためです。お詫びして訂正します。(2008.1.23)

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日本の財政赤字(1)景気拡大に伴う長期金利の上昇は心配しなくてよい

あけましておめでとうございます。
今年のブログは、日本の累積債務と長期金利の話から始めます(*1)。

■ある「俗説」

皆さんは次のような主張をどこかで見かけたことはありませんか。

「景気が良くなれば国内の金利が上がるから、数百兆円にのぼる政府や都道府県の借金(累積債務)の利払いが増える。仮に債務残高を500兆円とすると、1%金利が上昇すれば利払いが5兆円も増える。だから(たとえば財政出動や減税などの手段で)景気をよくするなんて論外だ。」

こうした主張を本気で行う経済の専門家がいるとは思えませんが、一見もっともらしい「俗説」であることは事実です。そこで今回はこの「俗説」が誤りであることを、近年の日本経済のデータに基づいて論じたいと思います。

まず最初に要点を述べます。この「俗説」の誤りは、景気拡大に伴って金利が上がるときには、税収も増えることを見落としている点にあります。税収が増えるのは、景気がよくなると国全体の経済規模(GDP)が拡大するからです。

GDPが1%増えると長期的には税収は1%増えます。短期的には1%どころか、もっと増えます(税率には累進性があるため。ただし、景気が悪くなるときには逆に、GDPより大きな割合で税収は減ります)。

というわけで、景気拡大期には、金利負担の増加より税収の伸びの方が大きいので、利払いの負担感は年々軽くなります。景気拡大に伴う金利上昇を心配する必要は全くありません。そうした心配は杞憂です。


■ドーマーの定理

さて、このあたりの事情は、財政学における「ドーマーの定理」というものが語ってくれます。この定理は
「GDPの名目成長率が長期金利を上回っていれば、累積債務は持続可能である」
というものですが、近年の日本では、名目成長率が長期金利を上回っている、というこの定理の仮定が満たされているのかどうか、を検証してみましょう。
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図(クリックで拡大)

図は、1981年から2005年までの25年間の、毎年の日本経済の名目成長率(横軸)(*2)と長期金利(縦軸)(*3)の推移を示したものです。たとえば赤字で「93」と添えた点は、1993年の値を示しています。

2つの大きな景気後退期(=左下がりの時期)が見て取れます。バブル崩壊後の景気後退(1990年〜1993年)と消費税率引き上げ後の景気後退(1996年〜1998年)です。このいずれにおいても、景気後退期には、

名目成長率が2%下がると長期金利が1%下がる

という、明瞭な関係が見られます。

景気拡大期(=右上がりの時期)には、そのような明瞭な関係は読みとれませんが、それでも、景気拡大の始点と終点を比べれば

名目成長率が2%上がると長期金利が1%上がる

という関係がみられます。とくに、長期金利の上昇幅が名目成長率の上昇幅を超えることはありません。

このデータが示しているのは、累積債務が持続可能であるためには、経済が成長するほうが有利だ、ということです。いいかえると、「長期金利を名目成長率が上回る」というドーマーの定理の仮定が満たされるようにするためには、経済規模を拡大するべきなのです。

期限までのプライマリーバランスの回復という目標を立てたところで、累積債務が持続可能になるわけではありません。消費税増税などの個人消費を減退させる財政政策は、経済規模を縮小してしまうので、かえって財政赤字と累積債務問題を深刻にするだけです。


■本当に必要なのは消費性向を上げること

おまえは、(財政出動による)景気拡大によって名目成長率が長期金利を上回るようにできる、と主張しているけど、上の図をみたら、景気拡大期の終点である1996年とか2005年とかでも、名目成長率が長期金利を0.5%ほど上回っているだけだ。しかも、すぐに名目成長率が長期金利より低い領域に戻ってしまっているではないか。結局、財政出動は無駄なんじゃないの?

こんな声が聞こえてきそうです。この声はある意味では正しい。日本経済のパラメータが現状のままなら、おそらくその通りでしょう。

実は、財政出動で累積債務を持続可能にできるかどうか、には、消費性向と投資性向が深く関係しています。日本経済のパラメータが現状のままなら、財政出動や減税はおそらく無駄になるでしょう。

しかし、現在、約65%である消費性向が3〜4%上がれば、財政収支は均衡します。もし、消費性向が5%上がって70%となり、1970年代の水準に戻れば、財政収支は確実に大黒字になります。

増税とか減税とかの目先の帳尻合わせをいくら行っても、財政赤字や累積債務の問題は解決できません。本当に必要なのは、消費性向などの日本経済のパラメータを変える政策(再分配政策)なのです。このあたりの詳しいことは、1年ほど前に拙ホームページにて考察しました。よろしければご覧下さい。

--- 注 ---
*1) 少し前に、次回は話を自然科学に戻して大気電場と雷の話をする予定と書いておきながら、遅れています。WSの仮説を検証する数値計算を試みたのですが、その結果が直観に合わない部分を含んでいるためです。もうしばらくお待ち下さい。

*2) こうした議論では従来、GDP(国内総生産)の成長率を考えるのが一般的です。しかし、ここでは、GDPに海外からの所得の受取を加えたGNI(国民総所得)の成長率を用いています。それは、近年の日本経済では、海外からの所得の受取が貿易収支の黒字(約8兆円)に匹敵するほど多くなっているため、GNIの方が国の経済規模を適切に表すと考えたためです。

*3) 長期金利=10年物国債の利回り


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言葉の力---亀井久興議員の演説

---ですから、私は、やはり需要をふやしていく、そしてGDPを大きくして、国民所得をふやして、一人当たり国民所得をふやし、可処分所得をふやして、その個人消費の旺盛な力によって景気回復をさせるというのが本筋だというように思うんです---

亀井久興議員(国民新党) 平成19年10月10日衆議院予算委員会での質疑より


この方の演説を衆議院TVのビデオライブラリで聞いて驚きました。これほど力のある言葉を発することのできる国会議員さんが、いまの日本におられるとは。

決して声を荒げたりされることなく、淡々とお話になるのですが、その言葉には力があります。問題の本質を実に平易な言葉で話されます。お時間のあるときにぜひ一度聞いてみて下さい。

福田総理をして「亀井先生のお話を伺って、ついつい引き込まれるような、そういう思いをいたしております」と言わしめた、その質疑(後半部はほとんど演説でした)から、最後の数分間を以下に紹介したいと思います(衆議院TVをもとに、国会会議録にWSが少しだけ手を加えました)。

   ***ここから引用***

その点もまたいずれ追及をしたいと思いますけれども、それはともかくとして、今何か着実に景気が回復してきているかのようなことをしきりに政府は言いますけれども、私は決して景気が本格的に回復しているとは思わない。一九九八年以降始まったデフレがいまだに解消していない。

私は竹中大臣にあのとき随分、その、いろんなことを申し上げたけれども、需給ギャップが解消されない限り景気はよくなりませんよ、とにかく需要が決定的に不足しているわけですから需要をふやす政策をとらなくちゃいけない、特に内需拡大を図る政策をとらなければ絶対に景気は回復しませんということを言った。ところが、緊縮財政、緊縮財政ということで、それでしかも国債発行は三十兆円に抑えると言われたけれども、そんなものできるわけないですよ、必ず国債増発になりますよと申し上げた。

確かにあのときは補正を組んで、五兆円も増発をしたわけで、小泉内閣を通じて二百兆の国債増発をやってしまったわけですから、これは、財政再建をやろうとした結果として、かえって財政の負担がふえてしまったという結果だと思います。ですから、私は、やはり需要をふやしていく、そしてGDPを大きくして、国民所得をふやして、一人当たり国民所得をふやし、可処分所得をふやして、その個人消費の旺盛な力によって景気回復をさせるというのが本筋だというように思うんですね。

ですから今、可処分所得がね、この六年間で十八兆円、毎年三兆ずつ減ってるんです。その分みんなは、皆さんは貯金を取り崩すしかしようがないから、個人貯蓄が十八兆、それとちょうど見合いの数字だけ減っているんですよね。それでかつては、日本というのは貯蓄大国と言われた。その日本が、今や貯蓄率は一・八%まで落ちてしまった。貯蓄が全くゼロという、そういう世帯が全世帯のもう四分の一、ということですね。

こういう中でね、やはり私は、自民党政治がなぜ続いていったかといえば、一億総中流社会をつくったからだと思うんですよ。ね、私は、よく円盤形社会と言っておりますけれども、やはり、あなたはお金持ち、あなたは貧乏ですかということを聞くと、そんな金持ちじゃないよ、だけれども、そんなひどい貧乏じゃないな、まあ、中の下ぐらいですかな、まあ、ほどほどのところですかな、多くの人がそういう返答をされる。そういう社会というのをね、自由主義、市場経済を通じてつくったということが、日本の保守政治の私は誇るべきことだったと思いますね。その中間所得層が今どんどんどんどん下に落ちていくという危機感を持っているわけですね。

それで、とにかく一年間額に汗して働いても、二百万、年収が二百万にいかないという、そういう人が、もう一九・何%、二〇%近くある。これは私はね、日本の保守政治がせっかくつくり上げていったものを、この六年間で完全にそれを崩し始めている、ま、そういうことだと思います。

私はやはり、一億総中流社会というのはその中間層が大宗でございますから、その人たちが可処分所得をふやして思い切ってお金を使えるという、そういう状況をつくり出さない限り、今の経済の立て直しというのは不可能だというように思います。

それから、財政のことについていいましても、財政再建、財政再建と言われるけれども、今、国が抱えております借金、これは八百三十六兆と言われておりますけれども、しかし、国が持っている金融資産というのは五百八十兆あるわけですから、その金融資産というものを引いてみれば二百五十六兆ですよ、純債務というものは。これは、OECDの国と比べてみてもね、GDPの五〇%ぐらいですから、そんなにびっくりするようなことではない。しかも、外国から金、借りているんじゃなくて、国内でそれをきちっと消化しているわけで、個人金融資産はまだ千六百兆あるわけですからね。

だから、外国の私の友人等に言わせますと、日本ってどうなっているの、自分でお金を持っているのに、そのお金を自国の経済のために使わないでね、アメリカの国債を買ってみたり外貨準備でドルを支えてみたり、ちょっとおかしいんじゃない、もうちょっと国内でね、その個人金融資産がうまく回るような、そういう政策をとるべきじゃないのということを言われるわけですね(拍手)。私は、まさにそのとおりだと思うんです。

ですから、経済財政運営の基本が間違ってきたのではないか。イザナギ景気を超える景気拡大が続いているといっても、あれは計算上のトリックみたいなものでね、デフレのときに実質経済でもって表示をしたらば、プラスになるのは当たり前なんですよ。それは、名目成長率からGDPデフレーターを引くわけですから、マイナスからマイナスでプラスになっちゃう。プラス八・五%の実質成長だなんて、そんなばかなことないですよね。

ですから、もしそうだったら、何で消費税の、あの、増税だとか、増税の議論が出てくるのか。あのイザナギ景気のときには、二・五倍日本の経済規模が大きくなり、毎年減税をやったのに二・四倍税収がふえているんです。そういう流れをつくり出すということを真剣になってお考えをいただいて、思い切った政策転換をやっていただきたい、そのことを私の意見として申し上げまして、私の時間が参りましたので、終わります。

   ***引用おわり***

WSは1年ほど前、日本の財政赤字と累積債務を解消するにはどうすればよいのか、について考察したことがあります。それで得た結論は、消費性向を上げることがもっとも効果がある、というものでした。

消費性向とは、可処分所得(税金などを差し引いた手取りの金額)のうち、消費に振り向けられる割合のことです。現在65%程度の消費性向が4%上がるだけで、増税や財政出動をしなくても、財政収支が約20兆円も改善します。つまり、中間層の所得を回復し、消費を後押しする政策をとることが大事なのです。

それに対して、最近話題になっている消費税の増税はどうでしょうか。
消費税率を上げても、税収増は一時的です。数年で全体の経済規模(GDP)が劇的に縮小してしまい、財政赤字は全く解消できません。たとえば、消費税率が現在の2倍の10%になったとしましょう。この場合、GDPが60兆円(割合にして12%)も減少し、国民は塗炭の苦しみを味わいます。しかも、消費税の税収は増えても所得税などの税収が減る結果、総税収は3兆円しか増えないのです根拠)。消費税増税路線の先には、総所得が減少するのに税負担が増えるという、暗い未来しか見えません。

では、公共投資(中身は従来型とは限りません)による内需拡大路線はどうでしょうか。
こちらの方がはるかに有望です。それは今の日本経済は実にまれで特殊な状態にあるからです。民間投資が個人消費の増減におそろしく過敏になっているのです。

一国の民間投資の規模はGDPの1割から2割程度と小さいけれども、実は、その小さな尻尾(投資)が巨体(一国の経済)を振り回していることはよく知られています。その重要な民間投資が、現在の日本では、個人消費の増減にかつてないほど強く反応する状態にあります。

個人消費が前年より1兆円増えれば、民間投資がいくら増えるか、ご存じですか。答は2.5兆円です。1980年代以前、この数字は1兆円に満たないものでしたから、現在、2倍以上になっているのです。昨今の国内需要の低迷の結果、なにかが売れるとなったら、あらゆる企業が殺到してその商品の生産に邁進する、という状況が、この過敏性をもたらしているのでしょう。

公共投資が無駄になるのは、「個人消費の増大→民間投資の拡大→給与の上昇→個人消費の増大」という良い循環の回路に点火できない場合ですが、現在、そのような心配は杞憂に過ぎません。個人消費を萎えさせる政策ではなく、力強く後押しする政策が求められているのです。

海外に投資されている金融資産のごく一部、おそらく10兆円もあれば十分でしょう。それが国内に振り向けられるだけで、国内需要の爆発的な拡大が生み出され、好循環が始まります。

「何で消費税の、あの、増税だとか、増税の議論が出てくるのか。あのイザナギ景気のときには、二・五倍日本の経済規模が大きくなり、毎年減税をやったのに二・四倍税収がふえているんです。そういう流れをつくり出すということを真剣になってお考えをいただいて、思い切った政策転換をやっていただきたい」という亀井議員の願いは、WSの願いでもあります。

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